人手不足と戦い、QC-Techで食品業界をスマート化する「スマートQC」

QC-Tech(品質管理×テクノロジー)という分野の起業家、ユリシーズの諸岡さんにインタビューしてきました。

諸岡 裕人

慶応大学経済学部を卒業後、リクルートスタッフィングにて営業職、その後家業であるワールドエンタプライズ株式会社に入社し現在に至る。

LCCのエアアジアジャパンやバニラエアの予約センターの立ち上げ、JALの羽田機内食工場の立ち上げなどに携わってきました。

その中で感じた食品業界の現場のペインを解決するために2016年12月にユリシーズを創業。80兆円の食品業界をスマート化するためのプロダクトを開発してます。

当然ながら初めてのスタートアップ経営、マニアックな業界なのでベンチマーク企業も存在しない。本当の0→1をやってます。日々学びながら、出来ることも、出来ない事も楽しみにながらサービス開発しています。

食品業界をスマート化する

帝国データバンクが7月10日に公表した調査によると「人手不足が原因の倒産件数」は4年前の2.9倍に増加。これまで経験したことのない人手不足時代が訪れている。その中でも食品業界はかつてから深刻な人手不足や労働環境の悪化などが取りざたされる一方で、消費者の要求水準が高まる業界のひとつだ。

その食品業界にオペレーションを電子化、IT化、AI化することで、全く新しい工場管理サービスを提供するスタートアップ「ユリシーズ」を経営するのが諸岡さんだ。


食品業界に特化した品質管理SaaSの「スマートQC」というサービスをやっています。食品業界はIT化が進んでいません。それが労働環境の悪さや人手不足の原因のひとつにもなっている。だからITを用いて食品製造の品質管理をカンタンにしたいと思いました。

スマートQCは2つのサービスからなる。ひとつは食品工場の衛生を中心とした品質管理に特化したクラウドサービス。もうひとつはスマートフォンやIoT機器を利用した、より正確でカンタンなモニタリングサービスだ。

品質管理プラットフォーム スマートQC

なぜこのサービスに取り組んだのか。

食品業界では業務上、大量の帳票が発生します。これは安全なオペレーションを行っていたというエビデンスを残すためです。もしこれを怠り、大規模な食中毒を引き起こしたら会社はすぐに潰れます。品質管理=記録といっても過言ではありません。

今は、書くのもチェックするのも全て人力で行っています。そこに大きな労力が掛かっています。更に、人が紙とペンで書いた記録は簡単に改ざんが可能です。つまり、非効率な上に、不正確なんです。

21世紀にこんなことやってられるか!と考え、品質管理のクラウドサービスを創ることを決めました。

諸岡さんによると、食品業界では1日に100万枚以上の紙による作業帳票が出ているとのことで、紙のドキュメントを使った管理に変わるクラウドサービスで管理工数を減らしていく計画。

食品工場の作業帳票 ※ユリシーズ社提供

諸岡さんはもうひとつの課題を指摘する。

何から始めようか考えた時に、最もクリティカルな管理ポイントである温度管理に狙いを定めました。僕自身が関わっていた機内食業界でも、1日に150枚から200枚の温度記録帳票が出ていました。

そこで具体的なアイデアとして、スマートフォンとIoTハードウェアを利用したプロダクト開発を始めました。

検温して入力する工程で記入ミスが多発したりするのを、クラウドと連携したデバイスで防ぐ狙いだ。

ユリシーズが提供する検温デバイスのプロトタイプ ※ユリシーズ社提供

労働環境の悪さや人手不足の原因のひとつ、QC業務の非効率さを解決するサービスとして「スマートQC」は設計されている。

80兆円のレガシー産業、65万事業所は工程標準化対応されていない

巨大なマーケットであることは直観的に理解しやすいが、習慣を変えることはできるのか。


食品業界は約80兆円の大きな産業ですが、IT化が一向に進みません。それは「統一されたルール」が存在しないからでした。

ルールが異なればアウトプットである帳票もバラバラ。100社あれば100通りのシステムが必要になる。まさにITベンダーが2,3億掛けて個社ごとにカスタマイズするビジネスモデルです。普通の会社はそんな金払えないです。
こんな環境でSaaSなんて無理だと(笑)。

しかし、やるなら今しかないと思いました。HACCPの義務化を目前に控えていたからです。

Wikipediaによると、

HACCP(ハサップ)とは食品製造工程上のリスク要因(ハザード)を分析して最も効率よく管理できる部分(CCP=必須管理点)を管理して安全を確保する管理手法

とされており、情報システムにおけるISMSやPMSの考え方に似ている。

HACCP(ハサップ)※厚生労働省HP

制度の導入義務化に伴う需要をつかみたい考えだ。

法律で規定された「統一ルール」がフォーマット化される、この機会にIT化を進めないともうチャンスはありません。しかも、1次生産者を除く全ての食品事業者が対象になります。

余りにマニアックになるので、詳細は省きますが、私達のクラウド上でルールを作り(HACCPプラン)、帳票が自動で作成され、スマートなモニタリングが実施できる・・・そんなサービスを創っています。

ISMSバブルでIT業界がてんやわんやになったことを覚えておいでの方も多いだろう。

データ化ソリューションから認証へ

最後に将来像を語ってもらった。

現在はSaaS開発と並行して、業界団体や行政など、「ルールを創る側」に働きかけて、一緒に業界のIT化を進める土台作りをしています。
業界のデファクトを創るのは自分たちだと思い込んでます(笑)。

工場でのテストの模様 ※ユリシーズ社提供

こういった大きなマーケットに競合プレイヤーはいないものなのか。

品質管理SaaSと言う考え方では、今のところは競合事業者はいないですね。

やはりIT事業者は、品質管理の専門家でもないし工場内部にいたこともないし、なかなか難しいですよね。後は、ものすごーく時間が掛かるし、トレンドが既にあるわけでもない。自分で火を起こしにいくタイミングです。ちょっとした狂気がないと耐えられずに諦めちゃうんじゃないかなと思います。

一緒に、この壮大な企みに乗ってくれる仲間を募集しています。よろしくお願いします!

なぜか東京駅で作業着着て撮った写真をみせてくれながら「ちょっとした狂気」と諸岡さんは表現するが、スタートアップらしいアプローチではないだろうか。

イギリスなどではHACCP導入義務化時、スマートQCのようなクラウドサービスが成長したそうで、その再現を狙う計画だ。

なぜか東京駅で作業着着て撮った写真 ※ユリシーズ社提供

編集後記

おしん記者
TechLabPaakにAINOW亀田がお邪魔してからのご縁で取材につながりました。

LogiTechやFinTechにReTechなど、古い業界とITの組み合わせが成長する中、また楽しみな業界に楽しみなスタートアップが出現した感があります。

スタートアップタイムズでも起業家のPR支援として取材を行っていますのでお気軽にお問い合わせください。

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