「半世紀視点で仕事する」スタートアップ、アペルザは製造業×インターネットで世界一を狙う

石原誠

新卒で株式会社キーエンスに入社。東京営業所にてコンサルティングセールスに従事。
2001年より社内ベンチャープロジェクトとしてキーエンス初のインターネット事業「iPROS(イプロス)」の立ち上げに参画。執行役員として「サービス開発」「メディア運営」「経営企画」を担当。
2014年3月にイプロスを退職し、教育系(EduTech)スタートアップである株式会社ポリグロッツを創業。英語学習者向けiPhoneアプリをリリースし、2014年のAppleベストアプリに選出される。2014年9月に創業した株式会社エデュート(Edut)では、教育向けアプリ構築プラットフォームサービスをリリース。数々のビジネスコンテストで受賞を経験。
その後、株式会社クルーズを創業。2016年7月の株式会社FAナビ及びオートメ新聞株式会社との経営統合を期に株式会社アペルザの代表取締役社長に就任する。

製造業向けのインターネットコングロマリット

製造業は日本の基幹産業で世界でも最も大きな産業の一つ。そんな製造業を支える設備産業は国内でも22.6兆円と非常に巨大な規模だ。

それをチャンスと捉えITを業界に持ち込み改革を進めるスタートアップがある。それが「アペルザ」だ。

一言でいうと「製造業向けのインターネットコングロマリット」です。創業して1年半の会社ですが、既にいくつかのサービスを提供しています。
製造業向けと一口に言っても広いですが、我々がフォーカスしているのは、設備産業と言われる市場です。
国内には約40万事業所もの工場があるのですが、工場というものは設備産業です。では、その設備や工場は誰が作っているのかというと、基本的には設備はアウトソースしているんです。ですから、工場で使われる設備を作るという産業(=設備産業)が存在するのです。我々はそこにフォーカスしています。乱暴に言うと、設備の売り手であるメーカーや商社と買い手である工場を結ぶビジネスをやっているんです。

アペルザのサービスは情報収集・比較検討・調達購買という購買の各プロセスに最適に対応している。情報収集の段階に対応しているのがメディア事業である。業界新聞の「オートメーション新聞」や現場で働く人向けのWebメディア「ものづくりニュース」など、専門性の高いメディアを複数運営している。

オートメーション新聞

ものづくりニュース

Industry 4.0 Central

購買プロセスの第2ステップとなるのが比較検討段階。あらゆるメーカーの製品カタログを収集してデータベース化している「Aperza Catalog(アペルザカタログ)」は、選定業務の工数削減に圧倒的に貢献しているらしい。
さらには購買プロセスの最終段階である調達購買においても、業界初のサービスを提供している。工業用資材の価格比較サイトは、さながら製造業版の価格.comのようなサービスで、相見積りを取るのが当たり前という商習慣を逆手にとるものとなっている。

製造業向けカタログポータル Aperza Catalog(アペルザカタログ)

工業用資材の価格検索サイトAperza(アペルザ)

なぜこんなサービス展開を行っているのだろう。

製造業の設備業界というのは、未だにアナログ営業マンが全国の工場を歩き回るというスタイルが現役です。商流もメーカーから2次3次商流へと長いバリューチェーンを経て製品が流通しています。例えるならば、商店街にある町の電気屋さんがテレビを売っていた頃のような、昔の家電業界のような状態が今もなお残っているのです。

ただ、スマホのように製品のライフサイクルが短くなってきて、長い販売バリューチェーンが機能しなくなってきているのも事実です。特に設備投資は時間がかかる投資なので。

ならば売り方を変えれば?と考えますが、情報の非対称性のため未だに売り手が強く、それに立ち向かうようなサービスも生まれてきませんでした。長い時間をかけて構築された市場構造を変えることは困難を極めますが、この市場課題を解決するため、我々は立ち上がったのです。

石原さんによるとこの業界には面白い特徴があるそうだ。

製造業は景気が良い時に、Eコマースを伸ばしています。不景気の時に伸びている消費財のECとは逆なのが興味深いですね。

設備投資は小さい金額ではありませんから「多少高くてもいいものを買いたい」ということになります。特に製造ラインの要を担う部品となると、ラインを止める損失と比較して製品を選定します。

当然単価が高い商品は対面営業が残ります。しかしながら、慢性的に人手不足の業界ですから、低単価はECでやりたいとなるのは自然な流れです。こうして、景気が良いほどECが伸びるという特性を持っています。

時代に対応するのに時間がかかる業界の「もっと製品を売りたい」「もっと知っていただきたい」に応える事業展開と言うことだろう。

業界の産業構造をシンプルに、ヘルシーな産業構造を創りたい

ではどのようにしてアペルザは生まれたのだろう。

製造業のど真ん中、愛知出身で、身内の大半もメーカーで働いているような家庭環境でした。そんなこともあって、自然と製造業に興味を持ったという流れですね。もうひとつは、日本の産業を支えていると言っても過言ではない基幹産業をエンパワーメントすることで、社会に大きく貢献したいという想いですね。

そんな思いを持って新卒ではキーエンスに入社しました。営業として、たくさんの工場を見た経験は今でも生きています。転機となったのは、社内ベンチャープロジェクトに関わったことです。キーエンスにとって初となるインターネット事業の立ち上げに携わり、多くのことを学びました。その辺りから、経営というものに強く興味を持ち始めました。

2014年3月に退職した時には、それまでに学んだことを生かし腕試しをしたかったので、全く地の利のない教育市場(EduTech)で起業しました。iPhoneアプリを作ってリリースしたところ、その年のAppleベストアプリに選出され、少しだけ自信にも繋がりました。
こうした起業経験の中でも、製造業に関する想いは変わりませんでした。なので、今のアペルザという会社を創り、新たな気持ちで挑戦を続けています。

一度はシリアルアントレプレナーとして離れた製造業への思いが詰まったのがアペルザというわけだ。

アペルザのビジョン

石原さんにはもうひとつ、創業にあたっての想いがあった。

トヨタなど多くのメーカーは世界で戦っているし、それに伴って設備産業も世界中に出ています。つまり日本のモノづくり産業、設備産業は世界標準なのです。

日本が本来強い製造業だからこそ、世界で通用するインターネットサービスを作りたい。海外でも勝ち抜ける領域だと信じ、最初からグローバルにやっていこうと決めています。

開国の地である横浜にオフィスを構えたというのも、そんな理由があるんですよ。

アペルザのオフィスは横浜港が一望できる(アペルザHPより)

日本が世界で勝てる領域はモノづくりで、石原さんが取り組むIT領域は勝ち筋に思える。

半世紀視点をもって仕事をしよう

将来を聞いた。

「半世紀視点をもって仕事をしよう」と言っていますので、結構遠い未来まで妄想していますよ(笑)

この業界には「情報流通」「取引のあり方」「コミュニケーション」という3つのバリアがあると考えています。そのバリアを打ち壊すために、これまでサービスを立ち上げてきました。そして、この3月にマーケットプレイスをリリースし、ようやく3つの壁を壊す領域を網羅できたのです。

とは言え、まだサービスの提供を開始したものばかりですので、ひとつひとつのサービスをキチンと成長させていく必要があります。そして、それぞれのサービスの間を有機的に繋いでいくことを考えています。

次のステップは海外展開ですね。日本の製造業は、海外でとてもプレゼンスが高いので、日本ブランドをテコにしてグローバル展開に挑戦して行きたいところです。

もちろん、それ以外にも新たなサービスを立ち上げていくことも考えています。例えば、製造業の中小企業の悩みのひとつに、資金繰りがあります。こうした課題を解決できる金融サービスなども挑戦したいです。製造業でも他の業界同様「ヒト・モノ・カネ」の悩みは尽きませんから、どんどん解決していきたいと思っています。

半世紀視点とは、スタートアップでも珍しい視点に思える。

キーエンスを退職した後、教育系スタートアップを創業しましたが、教育は人が育つまで時間がかかります。製造業も同じだと考えています。今、流通しているテクノロジーを見ると、数十年以上前に発明されたものがほとんどで、実用化され市場に浸透するまで長い期間を要しています。

ですから、私達も長い目線で考えてビジネスをやりたいと思ってるんです。自分たちの代の先を見据え、世代を超える事業を営んでいきたい。さらにはチームで取り組むというということにもこだわっていきたいですね。

一過性のビジネスが自分には合わないということもありますが、製造業に適したエコシステムを作るには「半世紀先」くらいを見ていくのがちょうどいいと思うんですよね。

製造業にこだわり、世界一になれるかもしれないスタートアップの半世紀後が楽しみだ。

編集後記

取材担当進藤
プロトスター栗島さんにご紹介いただいたところ、なんだか昔飲んだことがあるなと思い出しつつ取材に。懐かしい話から世界の話につながるとってもいい横浜小旅行でした。栗島さんの紹介は外れないですねー。

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