最近、起業家の中で目立ってきているTECH LAB PAAK出身起業家のひとり、GitLocalizeを運営するLocki, Inc.の近澤さんにインタビューしてきました。
近澤良
DeNAに勤務後シンガポールのスタートアップVikiにエンジニア入社。Viki創業者がシリコンバレーで創業したスタートアップPixel Labsに初期メンバー参加。2016年に退社しLocki Incを創業しGitLocalizeをスタート。2017/06 TECH LAB PAAK 第8期 Microsoft賞。
米Common Sense Advisoryによると世界の翻訳市場は2016年の時点でおよそ4兆円。その一部であるITプロダクトのローカライゼーションはまだまだ労働集約的で多くの苦しみを伴う。その環境を変える挑戦をしているのが「GitLocalize」(ギットローカライズ)を運営するLocki, Inc.の近澤さんだ。
GitHubリポジトリと同期し、ストレスなくコンテンツを継続的に翻訳する「GitLocalize」をやっています。ソースコードのすべてのアップデートで製品を自動ローカライズするサービスです。GitLocalizeを利用すると、チームはプロジェクトをローカライズするために余分な作業を行う必要がなくなり、開発者はプルリクエストを見るだけで済みます。
GitHubアカウントを使ってすぐに始めることができ。リポジトリを選択してGitLocalizeと統合し、ファイルをローカライズできる。
GitLocalizeの利用フローを見ていこう。
まず、リポジトリをGitLocalizeと統合すると、ローカライゼーション関連のすべてのファイルがプラットフォームにpullされ、変更が監視され始める。そして、ファイルの翻訳が完了したら、レビューリクエストを作り、変更をレビューするようチームに依頼。レビューが完了したら、プルリクエストをリポジトリに送り返す。
GitHubで行なっている、プルリクエストと同じような慣れたフローでローカライズができるのがポイントです。その後は自動的に元の文と翻訳をリンクし、元の文が更新されたときに、どこを翻訳すれば良いのかすぐにわかるようになっています。オリジナルの更新によって影響を受ける部分を目視で確認する必要はありません。GitLocalizeのエディタを見て足りない翻訳を行うだけです。
現在は差分の認識をGitLocalizeが行い、翻訳をチームやユーザーコミュニティーが行う構造になっている。
すでに各所で翻訳コミュニュティが立ち上がっている技術ドキュメント、ゲームのローカライズでとても機能しそうな印象だ。
近澤さんはなぜこのサービスを作るのか。
グローバルなコンテンツや、ローカライズの仕事に関わっていたのが大きいですね。もともとはWeb制作会社のフラッシュデベロッパーでした。フラッシュ全盛期でしたね。その後自社サービスがやりたいと思い、DeNAに転職しました。DeNAでは、スマートフォン向けのゲームフレームワークの開発を行ったり、海外ゲームの部署に異動して、海外で大ヒットとなった”Blood Brothers”というゲームの開発を行いました。
海外出たいなと思って、シリコンバレーで就活してVikiに入ってシンガポールのオフィスで働くことになりました。その後VikiのCo-founderの新しいスタートアップに誘われ、サンフランシスコへ移りました。そのままサンフランシスコで起業、日本に帰ってきました。
Viki(ヴィキ)はクラウドソーシングで字幕作成するビデオ・音楽ストリーミング「Viki」の運営会社。2013年9月2日、楽天に買収された。
近澤さんによると、Vikiで韓国ドラマなどをファンコミュニティがローカライズをしていく様子を見て創業のアイデアを考えたそう。
Vikiでは自分自身がプロダクトマネージャーとして機能追加する際、文言をまずは英語で作って、それを4ヶ国語に翻訳していたのですが、この作業がとても手間のかかるものでした。一方Viki自体は動画の配信サービスなのですが、字幕の翻訳はユーザーコミュニュティがやっているんです。
この仕組みはどこか他にも応用できるのではと思い、他の事例も見てみると、FacebookやTwitterなどはユーザーコミュニティーがプロダクトの翻訳を行っているんですよね。
そこで、コミュニティや言語サービスを活用して、ローカライズ業務が自動化できないかと考え、実際にツールを使うエンジニアに数多くのインタビューを行ったところ、GitHub上でのワークフローを崩さずにローカライズを行うところにニーズが見え、GitLocalizeのアイディアが生まれました。
まさに、自分が欲しいものを自分で作るスタンスだ。
今後の展開について聞いた。
3月終わりにβローンチしたばかりですが、外資系IT大手企業のウェブサイトなど更新頻度と物量の多い会社さんにβユーザーとして利用してもらっています。
つい先日GitHub Marketplaceにローンチされ、徐々に利用を増やしています。現在はドキュメントの翻訳が多く、意外なことに中国からの利用が増えています。
GitHub MarketplaceはGitHubの開発ワークフローを自動化したり改善するツールをプロジェクトに簡単に導入できるプラットフォームだ。
現在は技術ドキュメントなどの翻訳が多いようだがGitHub Marketplace展開以降の戦略はあるのか。
現在は開発ドキュメント翻訳が多いですが、今後はアプリ等のローカライズも狙っていきたいと考えています。プロダクトの展開プラットフォームにかかわらずリポジトリの差分を翻訳する多国語展開の自動化サービスになっていきます。
今開発現場では、エンジニアがプログラム更新差分を必死で追って、それをクラウドソーシングに投げるようなことをやっていたりします。多言語展開において大切な作業ですが、開発の本質ではないですよね。
開発チームがローカライズを気にしなくて済み、ワークフロー含めてすべて自動化するサービスになりたいです。
「ローカライズの先は?」と意地悪な質問をしてみた。
インターネット上の言語間における情報格差を埋めたいです。インターネットのほとんどは英語なんですよね。個人的に苦労してたこともあり、日本で働いて海外に行って苦労してきた経験が生きると思っています。
今後は、ローカライズワークフローの自動化と翻訳のコミュニティ連携を強め、サービスを成長させる考えだ。
おしん記者
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