大企業とベンチャー、どっちがいいのとか、どっちはどうあるべきとか。議論は尽きません。
今日は、2200億円もの年商を誇る一部上場企業で社内起業家として働く起業家のインタビューです。月額定額制で車乗り換え放題のサービス「NOREL」運営する株式会社 IDOMの直人さんに話を聞いてきました。
<直人さんの略歴>株式会社IDOM (旧社名:ガリバーインターナショナル) で事業開発、戦略、IR、広報、人事等に従事。株式会社GREE、株式会社ループスコミュニケーション等でのBizDev、メディアマネタイズ、コンサルティングなどを経て現職ではクルマのサブスクリプションであるNOREL事業を担当。20代で培ったプログラミングの経験と、30代で養われたマネジメントやコンサルティングの経験を活かし、コードの読める事業責任者としてビジネスサイド、開発サイドの両面から事業を推進している。
おしん記者
直人さん
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直人さん
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直人さんが運営しているNORELは月額定額制で車乗り換え放題のサービス。
おしん記者
直人さん
その後はSIerとかで、いわゆるPMBOK的なプロマネとかSEとかやってました。
おしん記者
直人さん
ちょうどそのころ、Martin Fowler というJava界隈でえらいおっさんがアジャイルとか言い出した時期でして、まんまと感化されたんです。
当時は、アジャイルといえば Ruby on Rails だったので、Ruby で有名な looopsに入ったんです。XPという選択肢もあったんですが、当時はPivotalみたいな実践的な会社がなかったし、豆蔵もおカタい感じで「そういうのはもう疲れた」と(笑)
おしん記者
直人さん
PM仕事でいうと、1億円超える案件を一人で担当したのはLooopsが初めてだったので本当にいい経験ができました。なんというか、重いんですよね。金額大きいと。開発中は不安とスリルの毎日なんですけど、無事納品して、大金が入金された報告を受けた時は言えない充実感があります。あれは中毒性ありますね。
とにかく任せてもらえてありがたかったです。
おしん記者
直人さん
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直人さん
これからどうやって立て直そう、社員としても不安の真っ只中だった時に、Looopsの社長、斉藤さんが「ソリューションはなくなったけど、それらを国内70社に導入した実績とノウハウがあるから、それを活かしてコンサルをやろう」と言ったんですよね。自分はエンジニア出身なのでコンサルというキャリアは全く考えていなかったんですが、斉藤社長はIBM出身だし、周りの人脈にはコンサル屋さんがごろごろしていたので、実践で仕込んでもらいました。
おしん記者
直人さん
IT Media Blog で連載を開始し、最初の半年はなかなか成果がみえなかったのですが、TiwtterやFacebookといったソーシャルメディアでじわじわとファンを獲得し、開始1年後には月間40万PVくらいまでになりました。Twitter、Facebook の浸透に、Open Social をベースとしたソーシャルゲームブームといった追い風にいち早く乗れたことが大きかったです。最長社長も午前3時に起きてシリコンバレーの最新情報をチェックし、朝一番で日本語で解説を投稿するという超人的な働きぶりでした。「どこよりも早く、圧倒的なクオリティで」というところに徹底的にこだわっていましたね。
その後、斉藤社長個人のノウハウを横展開する形で社員や社外ブロガーも巻き込んだ「In the looop」というブログメディアに発展し、斉藤についで2番めにPVを稼いでいた私が運営を取り仕切ることになったというのが編集長という肩書を名乗るにいたった経緯です。
本業はもっぱら企業の新規事業やマーケティングのアドバイザーや、システム開発のPMだったんですけどね (笑)
おしん記者
直人さんがlooops時代に編集長を務めたin the looopはソーシャルメディアによる人々のつながりを前提としたビジネスの「今」をお届けするメディア。
直人さん
おしん記者
直人さん
その頃、企業向けSNSやソーシャルメディアマーケティングがちょっとしたブームになって、関連するソリューションの入札単価も高止まり、リスティングからだとリード獲得のCPAでも数千円〜数万円。問い合わせから成約までのリードタイムも長く、成約率もせいぜい一桁%というのがペイドメディアからの平均だったのでないでしょうか。Looopsの場合、メディア経由でのインバウンドな問い合わせからだと成約CVRがいいときで50%近かった。これは革命だと思いましたね。
広告だと、例えば「CTR4%でこれはいい!」と思っても、裏を返せば96%の人には不要な情報を流しているわけです。コンテンツマーケティングやインバウンドマーケティングは「検索」や「問い合わせ」といった能動的活動を経ることで情報伝達の純度は高くなることを身をもって体験しました。リーチが狭くても転換率が高くファネルが太いので結果的にROIは高かったと思います。
また、メディアで高フリークエンシーなインバウンドのお客様はこちらの力量をわかってくださっているので「説得」が必要ないですし、事前知識や予備知識もブログでしっかり把握していただいていたので、問い合わせから成約までのリードタイムが短く済むのも、少人数体制を維持するのに地味に効きました。
おしん記者
直人さん
印象に残っている会話を一つ挙げると、ループスのピボットに際して「コンサルやれ」と言われた時、プログラマやプロマネの仕事で食っていた私は全然ピンときていませんでした。モチベーションの上がらない私に、斉藤社長は「君は優秀なエンジニアだったかもしれないけど、エンジニアリングの領域では君より優れた人材はゴマンといる。でも、エンジニアリングとマーケティング両方わかる、となればそもそも絶対数自体が少ない。軸を複数持って、その面積で勝負しするといい。」と言われたんです。
斉藤社長の言葉ではっと気づいて、そこからは本当になんでも勉強しましたね。今でも専門性という意味では突出したところがなく器用貧乏な私ですが、経験領域の広さと視点の多様さはちょっと他には負けないと思いますね。
斉藤さんとは「ソーシャルシフト―これからの企業にとって一番大切なこと」などでも著名な斉藤徹(さいとう とおる)株式会社ループス・コミュニケーションズ代表取締役社長。
おしん記者
直人さん
ゲーミフィケーションを活用した教育事業をテーマにベネッセさんと共同研究してみたり、ネィティブゲームの投資営業でゲーム会社を100社以上回ったり。
あとはメディア事業の立て直し。着任後3ヶ月で黒字化して、売上は確か着任前の4倍くらいまで成長させたと思います。その後、親切会社分割して切り出すということでその辺までは触ってました。
おしん記者
直人さん
あと、社員のレベルがすごく高かった。本当にみんな尖ってて優秀だったので、GREE時代一番よかったのはよい人とのつながりを、たくさんいただけたことかもしれないです。
おしん記者
直人さん
おしん記者
直人さん
程度の差はあれそういう傾向ありますよね。
大企業目線で見ると、小回りの効くベンチャーは特にデジタル領域では怖かった。例えばバーティカルメディア事業立ち上げとか、WEB時代のソーシャルゲーム事業とか、市場の黎明期は特に規模とかブランドとかほとんど競争力として意味をなさないじゃないですか。そういう領域で、学生ベンチャーみたいなランニングコストの超絶低いチームが、PDCAというかトライアンドエラーを回しまくる。モデルはある程度見えていて、プロブレム・ソリューション・フィットとかプロダクト・マーケット・フィットがKSFなセグメントでのデジタル横展開、とかならどう考えてもベンチャー強いですよね。大企業でそんなことしたらPMFを見つけるまでに数千万円はかかりかねない(笑)
一方で、大企業に比べると資本や認知の面では当然弱い。
おしん記者
直人さん
大企業とベンチャー、傾向の違いはあれど、どちらにとっても最高なのは「スピードがあってインパクトも出せる」状態のはず。ベンチャーならスピード、大企業ならインパクト。強みを損なわずに不足している部分をいかに補うのか。それぞれ戦略のアプローチは全く違ったものになりますよね。
それでまあ、コラボしたり、オープン・イノベーションしてみたり、買収したりされたりすると思うんですが、弱みを克服したら強みが死んでいた、って本末転倒な話はよく聞きます。大企業が新規事業スピンオフしたら本体手伝ってくれない、とか。ベンチャーが資本入れたら意思決定が死んだ、みたいな。
強みを殺さないでスピードとインパクトの両立を目指す。舵取りの難しいところですよね。
おしん記者
直人さん
深層学習や強化学習、IoT、ビッグデータ、次世代通信、OS、セキュリティなどなど、ITのトレンドが全て自動車に向かっている。ガラケービジネスやっている時から感じていますけど、成長産業には優秀な人が自然と集まってくるし、夢もあるから楽しいんですよ。
もうひとつは、紹介された執行役員、今は上司の北島がおもしろかったから。
転職考えている時「自分、大企業無理なんでベンチャーで考えてるんですわー」って言ったら、北島が「うちは大企業だけど、君が入るのは動物園 (新規事業開発室はこう呼ばれていた) だから大丈夫」と言われて。大企業苦手だけど動物園ならまあいいか、と (笑)
あとは私が好きだった楠木建先生の書籍でガリバーの戦略が紹介されていて、戦略に長けた企業というイメージがあったからですかね。ポーター賞取ったり実績もあるしきっとすごいんだろう、と。
おしん記者
直人さん
営業系の会社なので、みんなビシっとスーツ着てネクタイ締めてる丸の内リーマンなんですが、私をはじめIT系企業から来た人たちが、私服でうろうろしてる。檻がないぞ、と (笑)
IT屋とIDOM、やっぱりバックグラウンドや毛色は違いますけど、シビれる商売が好き、山っ気があるといった共通項で繋がってる感じですね。アカデミックなエンジニアとかは合わないかもしれないですが、私はわりと水が合いました(笑)
おしん記者
直人さん
性格は天衣無縫というか、まあ型破りな人ですよ。とはいえ役員なので、ベースとなるサラリーマン力はきっちりばっちりあるのですが (笑)
前例にとらわれない、型にとらわれない、ルールを疑い、意義を見つめて聖域を破る。そういう感じ。私達みたいな外部からの流れ者にとっては、プロパーの役員にこういう人がいると非常に頼もしいですね。
裏返すとつまり、彼が更迭される時は私ら動物が死ぬ時なんでしょうけど (笑)
おしん記者
直人さん
冗談はともかく、私みたいな変わり者が丸の内のキラキラオフィスでモチベーション高く働けてるのは彼と、彼の掲げるビジョンのおかげですね。「社員のギフトを最大限活かす」って言ってるんですが、これだけだと意味不明だと思うので今度本人紹介します、聞いてみてください (笑)
おしん記者
直人さん
おかげさまで、大企業でも面白い仕事させていただいとります。今回もちゃんと結果出さなきゃですね。
月末とあって、社内は「オー」と歓声があがるなど活気に包まれていました。IDOMさんが始めた自動車流通業界の常識を覆す「買取専門」という戦略は、2006年にポーター賞を受賞。もはや大企業です。その中にあっても自社の事業スタイルを「イノベーションが基本」と定義して新規事業に取り組み続ける姿勢に刺激を受けました。
スタートアップタイムズでもスタートアップの支援として取材を行っていますのでお気軽にお問い合わせください。
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