アクアビットスパイラルズの萩原さんにインタビューしました。
萩原 智啓
1969 年茨城県かすみがうら市生まれ。早稲田大学在学中よりマーケティング会社に在籍し、卒業後リクルートに入社。1994 年起業。Web 開発やデジタル化支援に関わり大手各社の Web コンテンツを数多く手掛けた。2009 年 3 月、スマートフォンのアプリ・サービス開発を主な事業領域としてアクアビットスパイラルズを設立、代表取締役 CEO に就任。2015年2月に「モノとネットがつながるリアルブックマーク・スマートプレート」をリリースした。「Global First」を信条に、国内のみならずアジア・ヨーロッパ各国のグローバル市場へも精力的なアプローチを続けている。自称「ググらせないエバンジェリスト」。
スマートプレートは、アプリやクラウドからコントロールできるICチップを内蔵した「モノのブックマーク」。スマートフォンをかざすだけで、WebサイトやFacebookページ、Twitterタイムライン、LINEアカウント、動画、地図、連絡先、電話番号といった様々な情報を、バッテリー不要のデバイスから自在に開くことができる。
このようなNFCを内蔵したマグネットなどの形で、モノとWebサイトをリンクさせる構想だ。サービスサイトによると「Hyperlink of Things®」とコンセプトが表現されている。萩原氏はコンセプトについて語る。
「ハイパーリンクオブシングズ」はモノのハイパーリンクと言う意味です。この先の10年はwwwの先にリアルが広がっていく世界になると思っています。技術的に何を採用するかは別としても、モノのハイパーリンクを作ろうとしているのが私達です。よく看板にある検索ワード。あんまり使っている人を見たことがありませんよね。あれはPC時代の発想なんです。スマホが普及したからといって街中でも検索するかというとそうでもない。最近は「Hey Siri」や「OK Google」など各社音声を使えとPRしていますが、これも街中で使っている人をほとんど見ない。
いずれにしろ、キーワードから情報を探すのは「めんどくさい」ってことなんですよ。文字入力にしろ音声入力にしろ結局検索スキルを要求している、それは検索エンジンを中心にしたエコシステムの都合じゃないかと。
ノースキルですぐ使える。タッチするだけ。どこでも設置できる。アプリもいらない。バッテリーもいらない。このデバイスでリアルな世界からコンバージョンを生むラスト1インチを作りたいと思っています。検索に頼らない情報配信を世界に広めたい。そんな思いから「ググらせない」を商標登録しました。
“インターネットどこでもドア”として例えば冷蔵庫の扉からピザを注文したり、スーパーの食材からレシピを開いたり、車のダッシュボードから地図アプリを起動したり、と応用範囲は幅広い。パートナー企業との取り組みも徐々に広がっている。
萩原氏はパートナー企業との実証実験でのいくつかのユースケースを説明してくれた。
冷蔵庫にデリバリーピザや好きなビールのマグネットが並ぶわけです。そこから単に注文機能だけを提供するのではなく、スマホのUIを活かしてゲーム性のあるクーポンチャレンジのような仕掛けを開くことで、お客様との接触頻度を上げて顧客時間を獲得するといったマーケティング施策が可能になります。さらに、ホテルや民泊の部屋からタクシーを呼んだり近くのローカルサービスに送客するなどして、リアル世界のアフィリエイトバナーのように使うこともできます。ショールームに設置して自社ECサイトの商品ページに誘引すれば、レジや在庫を持たずにショールーミング「させる」店を作ることもできるわけです。
イベント会場とは相性がよく、昨年はG7サミット会場の国際メディアセンターにも導入していただきましたが、単に展示物の情報を開くだけではなく端末の言語設定を参照して言語振り分けをするなど、インバウンド施策としても広がりを見せています。また訪問履歴を参照できるようにすることで、イベントや展示ブースへの参加記録を後から振り返れるといった施策も人気です。
他にも、鉄道路線と連動したスタンプラリーや新鮮な野菜からのトレーサビリティ情報配信、表示コンテンツを持ち帰れるデジタルサイネージなど…たくさんのユースケースが出てきています。
実際の取り組みでも、街中のポスターから家ナカのマグネットまで、スマートプレートがリアルな世界のカスタマージャーニーを幅広くカバーし始めている。
類似の使い方ではAmazonDashボタンが想起される。
アマゾンのダッシュボタンは誰が押すかと言うと、アマゾンのロイヤルカスタマーですよね。もう一つはダッシュの対象になっているブランドのロイヤルカスタマーでもある。つまりファン×ファンであって買う予定の人だということ。これは普通真似しようとしてもできないですよ。アマゾンがとてつもないコストをかけて、ブランドが同じようにやって、その上に成り立っています。
あれは寡占していくモデル。私たちは街のあらゆるサービス事業者に武器を与えたいと思っているので、プラットフォームには依存しません。
その可能性に多くのイベント等でも話題になっている。
ユーザ行動の可視化も可能だという。
法人向けにはダッシュボードを用意しています。スマホで閲覧できUU、PVといった概念でアナリティクスのように分析できるのが特徴です。NFCタッチやQR読み込みといったリアルのアクションに加えて、表示・選択されたコンテンツを学習し、リアルな行動とWebサービスをユーザーの端末と紐づけることができます。また設置場所に行かなくてもクラウドやアプリからいつでもデバイスの機能を個別に停止したり、配信コンテンツを編集することもできます。
Webからリアル広告のトラッキングもできるので、リアル広告の効果UP施策もできます。Webの動線解析と同じことができます。
たとえば不動産の内見DMとしてスマートプレートを内蔵したブランドカードを送ることで、捨てられにくくて手軽に持ち運べ、いつでも気が向いたときに情報を取り出せてオンラインから来場予約もできる、まったく新しい物件カタログのような働きをさせます。同様に街中のポスターにも物件情報を読み出すスマートプレートを設置し、新聞の折り込みチラシにはスマートプレートQRを印刷しておく。こうした仕掛けを同時に展開することで、各メディアとの接触状況をユーザー端末ごとに可視化することができるようになります。
あるいは、飲食店などの客席テーブルに設置して占いや抽選といった人気コンテンツをスマホで手軽に楽しんでもらうようにする。こうして接点を増やしていくことで、様々なコンテンツやサービスへの興味の度合いとか来店頻度といった情報を蓄積し分析することができるわけです。
NFCというと、iOSが未対応だったが、昨今対応が発表された。
毎年この時期はiPhoneのNFC対応発表を期待しては裏切られを繰り返してきました。でもその一方で自社の準備がまだ万全では無いという思いから発表されなくて少しホッとする、そんな複雑な心境だったのが正直な気持ちです。そして迎えた先日のWWDCニュース。ぶっちゃけ今年はまったくノーマークだったのですが、もっとも注目すべき点は一番使われるiPhoneのカメラにQRコードリーダーが内臓されることですね。ユーザーにQRコードを意識させることなくリアル世界からコンテンツを配信できるようになる。広告に「カメラをこちらに向けてください」みたいな流れが増えてくるのではないかと思っています。
iPhoneのNFC対応とQRコード対応で潮目が変わりそうなので楽しみです。
iPhoneのNFC対応とQRコード標準対応を追い風に、HoTを拡大していきたい考えだ。
進藤
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