ジャパンベンチャーリサーチ(JVR)によると日本の未上場ベンチャーの2016年資金調達額が2000億円を超え、2006年度以後で最高額となったそうだ。そんな中でB dash campなどのイベントに参加するベンチャー企業の多くを卒業生に抱えるプログラムがある。
新産業創出を目指すスタートアップのための起業家コミュニティ「StarBurst」を運営する、プロトスターの栗島さんに話を聞いた。
栗島 祐介
早稲田大学商学部卒業後、三菱UFJ投信に入社しトレーダー・ファンドマネジャーを経験。その後、アジア・ヨーロッパにおいて教育領域特化型のシード投資を行う株式会社VilingベンチャーパートーナーズCEOを経て、起業家支援インフラを創るプロトスター株式会社(旧スパノバ株式会社)を設立。数多の起業家やクリエイターコミュニティに強い関心を持ち、起業家輩出及び起業家育成エコシステム作りに邁進。産業構造・技術構造的にHardな領域を主軸に新産業創出を目指す起業家支援コミュニティ「StarBurst(旧Supernova)」の企画・運営総括を行う。その他複数社に社外取締役・アドバイザーとして関与。東京ファッションテクノロジーラボ理事やTMCNエヴェンジェリストも務める。
栗島さんが提供するのは、ハードテック(HardTech)領域のスタートアップを支援するStarBurst。
HardTech領域はデジタル・リアルを含む産業構造・技術構造・社会構造的にブレイクスルーを必要とする困難な(Hardな)領域と定義しています。そこに挑戦する起業家の中でももっとも支援を必要とする最初期の起業家を支援します。そのコミュニュティがStarBurstです。(栗島さん)
StarBurstのWebサイトではコミュニュティのミッションが記されている。
VCや大企業によるCVC、アクセラレーターなど多くのプログラムがあるなか、どこが違うのかが気になるところだ。
3つあります。ひとつは古くて大きく、イノベーションが進んでいない「ハードテック」領域に特化しているということ。もうひとつは「既存技術の応用」にテクノロジーを絞っていること。最後に「最初期の起業家」だけを支援すること。大きくはこの3つが上げられます。
短い期間で結果を出そうとするプログラムが多い中、違いとなると思います。(栗島さん)
他にも下の図に示されるようにアプローチの違いがいくつかある。
短期で結果を求めないことは美しく聞こえるが、どうして可能なのか。
投資をしないスタンスが大きいです。投資となると償還期限があるのでどうしても短期で結果を求めざるを得なくなります。そうなると、私達が目指すムーンショット企業を生み出すことは難しくなります。ですから投資をしない代わりに起業家と支援家や投資家を徹底的に結び付けることで起業家を支援しています。(栗島さん)
ムーンショットとは時価総額1000億円を超える企業をユニコーンを超える、アポロ計画の月面着陸(「ムーンショット」)のような偉業のことを言う。難易度が高い領域の最初期の起業家と投資抜きで長い付き合いをしてムーンショットを目指していくのは差別化が効いたプログラムだと感じる。
なぜこんな変わった取り組みをしているのか。
元々、三菱UFJ投信に入社してトレーダー・ファンドマネジャーなどを経験してきました。そのころにクリエイターと一緒に住むシェアハウスみたいなことをやっていました。モノを作ったり起業することはとにかく先が長いことを知りました。
もう一つは、教育領域特化型のシード投資を行う株式会社Vilingベンチャーパートーナーズで働きながら、ハードな領域こそブルーオーシャンがあるのではと思っていました。しかしファンドが償還期限をもって支援するには難しく適切な投資家を見つけるのが難しいこともわかります。
そこで、中立的なポジションでひたすらマッチングするだけに徹し、経過観測的に観察しながら支援側の投資意欲を醸成するやり方に取り組んでみようと、起業家支援インフラを創るプロトスター株式会社(旧スパノバ株式会社)を設立しました。
ある種、今でいう逆説のスタートアップ思考だと言えると思います。(栗島さん)
栗島さんたちチームは4名の経営専門家で構成されている。
場を提供するだけなら4名もいらなくないかな…と思っていたところ、役割を教えてくれた。
場を提供するだけでなく、4名の専門家で本気でムーンショットを目指す企業の伴走をしています。例えばガリバーの草創期から上場までを支えた吉田は、創業4年でガリバーを全国展開させ同社を株式公開に導いた経営ノウハウがあります。また、クックパッドやランサーズの早期から拡大を体験した山口は、大手企業との事業提携・協業、広告企画の販売開始などビジネス開発のプロです。彼らの知見を伴走しながら提供しています。(栗島さん)
したがってプロトスターの構造は以下のような図解となる。
コミュニュティと経営のプロによる伴走。起業家にとっては心強い品ぞろえだ。
結果は出ているのか。
約1年半で86社採択、参加者1350名、調達成果が24.3億と一定の結果が出てきています。さらにいくつかの企業、間接材購買に関する製造業向けプラットフォームサービス「Aperza」などはIPOを見据えて爆発的な成長が始まっています。(栗島さん)
パフォーマンスはWebにも公開されている。
また、採択企業の顔ぶれもかなりのものだ。見覚えがあるロゴのある方も多いのではなかろうか。
最後に、今後の目指す姿を聞いた。
差別化は効いていますし、実績も出ています。実務的にはサロンと顧問の2サービスで、エコシステムを作りながらスタートアップを経営レイヤーまで引き上げることをやっていきます。starburstはY-コンビネーターっぽく、顧問はアンドリーセン・ホロウィッツっぽく、と言う感じで。まずは国内のスタートアップイベントの登壇者の半分を関係者にしたいという野望があります(笑)(栗島さん)
今後もイベント等で卒業生を見かけることが増えそうだ。
おしん記者
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