笹原健太
「世の中から紛争裁判をなくす」という志を掲げる。
弁護士として訴訟等を行う中で「契約書さえあれば訴訟にならなかったのに」という事案を数多く経験し、紛争裁判を防ぐためには契約書が最も重要であると感じる。
しかし、弁護士が契約書を作成したり、契約書の重要性などを説き続けることことだけでは限界があり、「最も簡単に契約書を作成・締結できる仕組み」を創らなければ、契約書を作ることが当たり前にならないと感じ、クラウド契約書作成・締結・管理システム「Holmes」を開発。
日本の裁判件数は、一審の地裁事件と簡裁事件数を基準にするだけでも2013年には60万件。膨大な件数の民事紛争が起きているのが日本だ。
そんな社会課題を解決しようとしているスタートアップがある。それが「リグシー」だ。
一言でいうと「契約書の作成、締結、承認、管理までをカバーしているクラウド契約書サービス、Holmes」が私たちの事業です。
リグシーは企業の契約書作成を支援する「Holmes」を運営する。
企業に勤めている方ならお分かり頂けるだろうが、契約書にまつわる業務はとかく煩雑だ。下図のような関連する情報をまとめるだけでも一苦労。
代表の笹原さんによると、反響は意外なところから寄せられている。
ローンチしてみると、意外と大企業からの引き合いが多かったんですね。理由は3つありました。
まず、「管理できていない」。契約書は7年程度の管理が義務付けられているので保存をどの企業もしていますが、それだけに数が多く見つけられないんです。
次に、「経緯がわからない」。仮に紙の契約書だけがあっても、締結をした経緯がわからなかったりする。大企業であっても弁護士事務所でも履歴を持っている場合が少ないことがわかりました。
最後に、「めんどくさい」。締結までのコミュニュケーションコストがものすごく高い。2か月かけて契約書を作っている間に役務提供が終わってしまったりする。
こんな状況では、契約の本来の目的である紛争防止ができません。
Holmesはその工程をデジタル化し、3つの課題を解決しようとしている。
実際の画面では契約書毎にルームを作成し、履歴や関連ドキュメントを残しながら契約書が作成できる。開発者がソースコードを管理するリポジトリのようなイメージだ。
利用の流れは、導入前と変わらない。
契約書をテンプレートから選んでワードのように編集して、完成したら締結依頼を出していきます。契約書はURL形式で見ることができますので、お使いのツール、例えばLINEなどで承認をしていくことができます。
当然、変更履歴や変更者、承認履歴も全部見れます。参照してきた関連ファイルなども管理できますので資料が散逸することもありません。この手のサービスだと電子契約のイメージがあると思いますが紙面の契約もできます。
契約締結後にPDF化してアップロードするイメージですね。仮に紙で締結したとしても検索が可能なので管理が楽です。契約内容はCSVでDLでき、更新期限をセットするとアラートメールを送ったりもできるので、たくさんの文書を管理する際に便利です。
とはいえ、この領域は競合が増えてきているのも事実だ。競合サービスはあるのだろうか。
ありがたいことに比較でいくつかのサービスを上げていただくことがあります。どれも素晴らしいサービスです。
私たちはドキュメントのワークフロー全体に着目しています。契約ドキュメント業務を「大量文書管理」「タスク管理」「コミュニュケーション」3つに定義したんです。工程の一部に特化して成果を出されているサービスはたくさんありますが、作成、コミュニュケーション、保管を別々にやってきたのが現実です。
その意味でHolemsは契約業務の全体のコストをさげている珍しいサービスと言えると思います。
業務全体で契約に通じた笹原さんならではのサービスのようだ。
ではどのようにしてHolmesは生まれたのだろう。
実はもともと弁護士でした。弁護士時代、多くの裁判を取り扱ってきましたが、私が感じたことは、「たとえ裁判に勝ったとしても、クライアントは幸せではなさそうだな」ということです。
裁判においては、たとえ勝ったとしても、多くの時間、お金、精神的な負担を要します。また、何よりも、昨日の友人や取引先、会社や仲間と戦い、それらを失ってしまうことも少なくありません。
そこから、「できることなら、紛争や裁判はない方が良いのではないか」、「何とか紛争裁判にならないように予防することはできないのか」ということを強く考えるようになりました。
弁護士時代の課題感から始まったのがHolemesというわけだ。弁護士として解決する道はなかったのだろうか?
なぜ紛争が起きるかというと、契約書が適切でない場合が多いんですね。特に長期の契約の場合、途中で変わっていく実態に即して内容を修正しなかったりするのが現実です。
理由を考えると「面倒だから」だなと思い当った。
弁護士として啓蒙してても限界があるんですね。弁護士は大変な苦労をしながら契約書を作るわけで、安い値段で受けるわけにもいきませんし。企業側も依頼すること自体が面倒。
ですから、プロダクトアプローチではじめました。
なんでも笹原さんは先ほど弁護士資格を返上したとのこと。弁護士や法務業界に通暁した笹原さんならではの課題感と決断だったようだ。
将来を聞いた。いわゆる士業と対立する構造にならないのだろうか。
弁護士や司法書士、企業法務の仕事を減らすと言うよりも、本来的な業務を担える時間を増やしたいんです。契約書に関わる人間の本来的な業務とは、契約業務はもちろんですが、法律相談にのったり、裁判に対応したり、法務戦略を担ったりすることです。
ですから最近、士業アカウントを始めました。1か月で無広告で数百人の登録が来たんですよ。一番多いのは弁護士ですが、ほとんどの士業から登録が来ました。契約書業務の管理ツールとして利用をいただいてます。
士業アカウントはHolmes上で企業をサポートする特別なアカウントを無料で発行され、顧問先との業務効率化が図れる。
たしかに士業側も管理コストは変わらないわけだから、そこが減ることに抵抗感は少ないだろう。
紛争を防ぐコミュニュケーションツールとして確立していきたいですね。契約管理ののためのセールスフォースを目指しています。
紛争裁判を減らすために次に手を付けたいのは、お金周りです。
現在のHolmesでできた契約書に基づいて請求書が送付されて、払い日の管理、入金管理までできれば紛争をもっと減らせると考えています。
だいたいお金の話でもめるのは人の常ですしね。
紛争を減らすWebサービスの今後が楽しみだ。
取材担当進藤
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