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インタビュー 2020.03.13

人工衛星を使った宇宙教育サービス「株式会社HEPTA 設立準備チーム」

ロフィール

株式会社HEPTA(設立予定)代表 山﨑政彦

大学在学中からこれまで、5機の超小型衛星の設計・開発・運用に携わってきた。2012年に超小型衛星を用いた人材育成キットHEPTA-Satを開発。これまでにアフリカ・アメリカ・アジア・オセアニア・ヨーロッパの53ヵ国、400人以上の参加者に宇宙工学人材育成プログラムを実施してきた。

人工衛星を使った宇宙教育サービス「HEPTA」株式会社HEPTA(設立準備チーム)

――株式会社HEPTA 設立準備チームのサービスについて教えてください。

人材育成をサービスとしています。具体的には、超小型人工衛星・キューブサットを題材とした、複雑なシステムの設計・開発・運⽤を可能にするための「学び」と「経験」を提供する⼈材育成サービスです。対象は国・年齢・分野(⽂系理系)を問わず、システムの設計・開発を学びたい⼈たちです。

――どうやって利用するのでしょう?

利用方法は主にトレーニングへの参加、トレーニングの実施依頼、トレーニングキットの購入の3つです。現在、これらを全てWebページから受け付けています。もともとは研修だけをサービスとしていましたが、研修後にキットが欲しいという声が多く、キット販売もすることになりました。
トレーニングでは超小型衛星キットと教科書を使って、超小型衛星キットの完成を⽬指します。その過程で、設計・統合・検証・運⽤を体験し、システム設計・開発の⼀連の流れを学び・経験できるものになっています。また、トレーニングでは様々な課題が出現し、ユーザーはつまづくことがありますが、その際にはインストラクターとの議論を通じ、課題の解決を繰り返すことで、「課題解決法」を学ぶことが出来ます。

これまでに53ヵ国、400人以上に利用されました。10ヵ国からはトレーニングの依頼を受け、現地にて開催しました。教育機関、宇宙関連期間、宇宙関連企業がメインのユーザーです。また、国内外で、高等専門学校や大学・大学院の教材の一つとして利用して頂いています。

――どんな方がどれくらい利用されていますか?

これまでに53ヵ国の国籍で400人以上に利用され,また10ヵ国のホスト国としてトレーニングの依頼を受けました.教育機関,宇宙関連期間,宇宙関連企業がメインのユーザーです.国内でも,高専や大学のカリキュラムになったりしています.

宇宙関連の教育機関や企業の方のみではなく、複雑なシステムを取り扱う非宇宙系の業界の方も対象となっています。また、理系・文系関係なく宇宙システムを学びたい方や、宇宙に関する法律家や営業の方も過去に受講されています。

――競合サービスはありますか?それとの違いは?

既存の「⾼等教育機関」や幼いうちからロボットやIT技術に触れる「STEM教育」が、学習や経験を与えようとする点で特性が近いと思います。そのような中で、私達のサービスは既存サービスに⽐べ、「誰もが幅広く実践的な内容を」学び・経験できることが優位点です。


また、価格面・期間も優位な点です。例えば宇宙技術者候補を育てたい場合、高等教育を卒業し、さらに6、7年の時間と数千万から数億円のお金がかかる実践的な宇宙開発に参加して、やっと1人が育ちます。この育成方法により、宇宙技術者を育てることができますが、価格・期間に課題があります。他の育成方法として、STEM教育があります。この方法では、「STEM教育の受講経験」を有する人をたくさんつくることはできますが、実際の宇宙開発の実務とは隔たりが大きいことが課題です。

私たちのサービスは「宇宙」、特に「超小型衛星」というシンボリックなものを題材としています。難しくて自分には遠い存在に感じるモノを自らの手で作れた・理解できたというという体験をできることが特徴です。さらにそれを誰もが享受できるように、初学者でも理解できるように構成されたテキストを用意したり、PCとインターネットさえあればどこでも始められるようにパッケージ化したりしています。研修では、数人のグループを作り、テキストとキットを用いたセルフラーニングを基本としているため、一度にたくさんの人を育成することに適しています。また、参加者同士が教え合うことで、スキルの差に関係なく進められるほか、チームで動く力(コミュニケーション能力)なども含めて成長できると考えています。

 誰もが宇宙に関われる社会を⽬指す

――なぜこのサービスを?

⼤学の研究室では⼈の⼊れ替わりが激しく、知識・技術の継承が問題でした。この問題を解決するための手段として、HEPTA-Satを開発しました。その後、国内外の研究、教育機関や企業さん、国連からのオファーなどに答える形でサービスを開始しました。近年では、宇宙開発の後進国であった国々でも、衛星を作りたいというニーズが⾼まり、その期待に応えるためにサービスを展開してきました。

――将来はどのようなサービスにしたいのですか?

点ではなく線、⾯でサービスを提供し誰もが宇宙を使えるようにしたいです。その取り組みの一環として、まずは、宇宙を学びたいと考える世界中の⽅々に、さらなる⾼付加価値な教育を届ける仕組み作りを⽬指します。具体的には、効果的な学びの仕組み、例えば事前学習・復習の強化、オンライン化などを進めたいと考えています。
その先は、人材評価の仕組みを整えることで人選のためのスクリーニングとしての活用できるようにしたり、外部機関と連携し認証制度を整えることで、就職活動で有利になるようなサーティフィケートを発行するなど、付加価値を高めていきたいと考えています。また、さらに展開していくための講師育成や、小中高生を対象としたSTEM教育、企業研修を検討していきたいと考えています。

――目指している世界を教えてください。

世界中には、学ぶ経験をしたいと思っている⼈が多くいます。そして、そのような人は多くのストレスを感じていると思います。そのストレスは、誰もが理解できる学習方法を工夫すること、学習機会を劇的に増やすこと、学習深度が深まるような仕掛けや場を作ることで、軽減することができると私たちは考えています.

このストレスを低減して生活に関わる小さな知恵から衛星開発のような大規模の知恵を誰もが共有でき、この世界に今までになかった新たな知恵が⽣まれやすい状態を作ることを⽬指したいと思っています。私達がこのサービスで⼀番重視していることは、衛星のような複雑なシステムを俯瞰的にとらえられるようにし、うまくいくシステムを設計・開発・検証・運⽤できるような知恵を形式知化しモノ・コトづくりの共通言語を提供することだと考えています。


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