2018年3月に大学を卒業して、2018年4月にディップ株式会社に新卒入社しました安元一耀(22歳)です。ディップの次世代事業準備室という新規サービスを開発する部署で働いています。
この部署では、新規サービスの開発においてはLeanなサービス開発が多いようです。新卒でまだまだ学ぶことが多いですが、約1ヶ月働いてみて自分なりにLeanなサービス企画はどういうプロセスを踏むのか?を記していきます。
途中でリーンに挫折した皆さんも「社会人1年生と一緒に学ぶ」ということで一緒にリーンなサービス開発プロセスを学んでいってみてはいかがでしょうか?
今回は、プロダクトのサービス企画〜グロース前までのフェーズ(PMF(Product Market Fit)まで)に関することを書いていきます。
先日、「日系大企業はなぜ1億円の予算があっても新規事業を生み出せないのか」という記事がバズっていましたが、その理由の1つに「小さく始めて大きく育てるスタートアップと最初から大きく始める大企業」という項目がありました。
大企業の新規事業では上記の通り、Leanなサービス開発を取っているところが少なく、PSF(Problem Solution Fit)の検証をあまり行わずにいきなりサービス開発(コードを本格的に書いてローンチ)をしてしまい、結果的にPMFに到達できずに失敗というパータンが多いのではないかと思っています。(PSFの検証はコードを書かなくてもできる)
今回は、そんな事態を避けるためにもサービス企画〜PMFに到達するまでのLeanなプロセスとは何なのか?ということに加え、到達したかどうかの判断が難しいPMFの判断に使えそうな指標(定量化アプローチ)について改めてまとめてみました。
リーンスタートアップやサービス企画について詳しい人には当たり前の内容かもしれませんが、そこはご容赦ください!また、「それは違うのでは?」や「ここは間違っていると思う!」というご指摘もどんどん下さいませ。
※ご指摘はこちらへ → Facebook、またはメールアドレス(k-yasumoto@dip-net.co.jp)
リーンスタートアップのプロセスのイメージ(グロース前まで)としては、以下のようになるかと思います。
まずは顧客がどんな課題(イシュー・解決するに値する課題)を抱えているのか?を発見することから始まります。ここでは、マーケットの選定も重要です。スタートアップでも、弊社のような規模の会社でもなるべくデカいマーケットを狙いましょう。
解くべき課題が見つかれば、そのソリューションを考えます。その際に「今は〇〇というサービスが主流になっているし、ソリューションが既に存在しているから諦めよう」とか「大手企業の〇〇というサービスがシェアの大半を占めているから諦めよう」などというそんな単純な話には必ずしもなりません。多くの人はこのフェーズでサービス企画を諦めがちかもしれません。
なぜなら、解くべき課題に対してはいくつものソリューションが存在しており、今提供されているソリューションがbestではなくbetterである可能性もあります。テクノロジーやデバイス、時代、人々の思考変化など様々な要因によって「適切なソリューション」も変化していきます。
課題に対して複数あるソリューションの中からどれがbestなのか?という仮説を立てることが「idea」と言えるでしょう。
このフェーズは、「解くべき課題(Problem)と、その課題の最適な解決方法(Solution)」が満たされている状態です。これを達成する(達成したと思える)までideaは修正されます。
Leanなサービス開発においてはこのフェーズがかなり重要になります。上記にも書いた通り、大企業の新規事業失敗の要因は、このフェーズの作業をほとんど行わないことにあるのでは?と思っています。
Leanなサービス開発ではこのフェーズで様々な仮説を検証するべきですし、この検証はコードを書かなくても実行可能なため、比較的簡単に検証ができます。
そもそも論として、自分が持っているソリューション(アイデア)には確証バイアスがかかりやすいです。なので、想定される課題を抱えた顧客に対してプロトタイプを見せたり、インタビューをしたりしてソリューションを提示し、顧客からのフィードバックを得ることが必要になります。
このフェーズで、自分が今考えているソリューションが適切かどうか?をしっかり検証しておかずに次のフェーズに進んでしまうと「多くのムダ」が後々発生してしまうので、PSFの検証は必ずやっておくべきです。
PSFを達成した次にやってくるのが、PMFです。PMFのよくある定義としては、「適切なプロダクトを適切なマーケットに提供している状態」などがよく言われます。
どれだけプロダクトに磨きをかけても適切なマーケット(デカいマーケット)でなければ大きなスケールは見込めないです。マーケットを後から変更することは難しいので、先ほど「マーケットの選定も重要」と述べたのはそういうことです。
ほとんどのスタートアップ・新規サービスはこのPMFに到達できずに死を迎えてしまいます。田所雅之さんの非常に有名なスライド「Startup Science 2018 完全版」では、PMFを達成できたケースとできなかったケースの明暗がグラフでよくわかります。
参照:https://medium.com/@masatadokoro/https-medium-com-masatadokoro-startup-science-2018-5228111b275f
PMFに到達できないことが判明した場合は、戦略を変更(Pivot・ピボット)することが必要になります。
PMFを達成することができたか?の判断は非常に難しくもあります。私も当初は、「PMFが達成できたかどうか?」ってある意味主観(定性的)でしかないのでは?というような考えもありました。
しかし、リーンスタートアップについていろいろ調べたり・学習したりしていくうちに、PMFの計測についてもいろいろ情報があったのでこのブログで書いておきます。PMFの定量的な測定については主に「NPS(Net Promoter Score)」と「RR(Retention Rate)」があるので、今回はその2つを紹介します。
NPSの説明はここでは割愛しますが、よく出されるPMF達成の数値基準(NPS)として挙げられるのが、アメリカのVCである「ベンチマークキャピタル」のアンディー・ラクリフさんが言う「NPSが+40以上」です。
しかし、NPSによるサーベイの場合「あなたはこのプロダクトを周りの人に勧めたいと思いますか?」などの質問が主流であるため、ユーザー自身が未来形での回答しかできません。ユーザーは自分自身の行動や意思決定について明確な理由・責任を持っていることはほとんどない(と考えた方が良い)ので、NPSによるサーベイはそこが欠点になるかと思います。
最後に紹介するのは、リテンションレートの測定です。アプリの世界ですと「リテンション」という言葉はよく聞くかもしれません。
横軸に日数、縦軸にKPIとなるユーザーのアクティブ率を取った時、どこかのタイミングで曲線が水平(に近い状態)になっていればPMFを達成したとする測定方法です。逆に、日数の経過と共にアクティブ率が下がっていれば、PMFは達成できていません。
※以下の図はわかりやすくするため少々極端な例です。
しかし、リテンションレートの測定においては、「リテンションレートは安定的に新規ユーザーのボリュームがないと統計データとして測定しづらい」という欠点(?)もあります。特にプロダクトの初期フェーズにおいてはユーザー数が少ないという状況もあるので、NPSと同様に「これ(リテンションレートの測定)が絶対的に正しい指標だ!」ということではありません。
PMF達成の確認は非常に難しいですが、ユーザーインタビューなどの定性的な調査と以上で紹介したような定量的な調査のバランスを取りながら判断するしかなさそうです。
リーンスタートアップやプロダクトの企画などについて調べたりする中で、私が日々参考にさせていただいている方の氏名を記載させていただきます。
・田所雅之さん(https://medium.com/@masatadokoro)
・馬田隆明さん(https://medium.com/@tumada)
・梶谷健人さん(https://twitter.com/kajiken0630)
・遠藤崇史さん(https://twitter.com/gyu07)
長々と書いてしまいましたが、読んで頂きありがとうございます。有益だと感じたらシェアしていただけると喜びます。
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