畑 加寿也
保険数理コンサルティング会社Millimanで保険数理に関するコンサルティングに従事後、国内外の投資銀行や再保険会社から、商品開発・リスク管理・ALM等のサービスを保険会社向けに提供。 プログラミング: VBA / Swift / Python / Ruby. 日本アクチュアリー会正会員。 米国アクチュアリー会準会員。京都大学理学部卒(2004)
中世ヨーロッパから始まったとされる保険。当時は商人ギルドなどの同業者間の助け合い制度だったという。今や日本の保険業界の市場規模は、生命保険だけで40兆円ほど。しかし、古来からある仕組みだからこそイノベーションが起きにくい業界であるとも言われる。そこに先端テクノロジーを導入するのが「justInCase」(ジャストインケース)社である。
一言で言うと「アプリで気軽に保険に入れるサービス」です。私たちは従来の保険を細分化し、お客様にとってより身近で使いやすい保険サービスを目指しています。今は友達と一緒に加入をする、スマホ保険をローンチしています。
justInCase では、アプリで簡単に購入できる保険サービスを展開している。
私たちは従来の保険サービスを細分化し、個人個人に最適化した商品サイズと価格で提供しています。スマホ保険は、お客様のスマートフォンに対しての保険になります。画面破損などの基本保障は従来のサービスと同じですが、金額部分で違いを作っています。
従来型とは違い、かなり安く保険を購入できるという。
保険料を格安で提供できる仕組みとはなにかきいた。
保険料金を安くできる理由は、大きく分けて三つあります。一つ目は取引がアプリ上で完結すること。従来の保険サービスはお客様に対して、営業マンが付きます。我々の場合アプリ上で取引ができるので、企業側の人件費を安く抑えられほぼ原価で取引ができるようになります。
次にあげられるのが、保険料を人別に算出しているからです。上でも述べたように我々は個人ごとに最適な保険料を計算しています。たとえば、1年一回スマホを壊している人と今まで壊したことがない人ではリスクが違います。そこでかかる保険料も違うべきだというのが我々の考えです。
最後は、不正受領のリスク防止により金額を下げています。友達間で同じ保険をシェアして使うことができるので、その分不正受領のリスクを軽減できます。より多くの友人が加入している場合、よりリスクは低下します。そこを推奨しているため、本来リスクとしてかけられている金額がぐっと抑えられます。
従来の保険をより効率化し、ユーザーにとっても購入しやすい形で販売をしているのがjustInCaseの特徴だ。
他のサービスとの違いについてきいた。
よく聞かれるのが、従来型のインターネット保険との違いなんですが、我々は商品をインターネット上で取り扱うというよりは、商品そのものの形をかえることに特化しています。
例えば、生命保険では老人と若者だとリスクが違う。その分値段も違うべきだと思っています。そういったリスク判定をAIと統計で正確にはじき出すのが我々の使命でもあります。
iBeedの保険情報を共有できるサービスやlemonadeのようなサブスクリプション型で低単価のサービスとの違いは、保険の商品をより細分化し、単価を下げる手法にあるという。
なぜ創業したのかをきいた。
私は元々理系で、数学者になりたいと思っていました。ただやっぱりどこの業界でも天才っていますよね、その天才をみたとき自分は凡庸なんだと思いました。そこから、数字をいかせるという仕事を探していたら保険に自然にたどりつきました。
15年以上保険業界に従事していましたが、ある時民泊の関係で外国の方とお話しをする機会がありまして。確か有名なスタートアップの社長さんだったと思います。当時の私は「Ycombinatorとは何か」もわからなかったものですから、インシュアテックという概念も当然知らなかったです。彼からその話をきいて感銘を受けたのはよく覚えています。
海外と比較して、日本の保険は古くからのしきたりが残る業界でもあります。勿論いい部分もありますが、現在の生活の多様性に、商品として追いついてない現状もあります。
そこにイノベーションを起こしたいという思いもあり、創業にいたりました。
将来をきいた。
今後はさらにサービスとしての質を突き詰めたいと思っています。保険業界の商品の審査はとても厳しいため、一つの商品を出すためにとても時間がかかってしまいます。
今すぐにとは言えませんが、様々な商品をもっと出していきたいと思っています。例えばアルバイト保険など、ありそうでなかったものをやりたいと思っています。
もっと身近で「お守り」のような保険サービスをやりたいですね。保険って皆さんの行動の後押しだと思っています。旅行とかもそうだと思うんですけど、保険があるだけで少し安心しますよね。でもその時に購入までが面倒だったり、値段がたかったりという問題があるため、中々購入できないということがおきます。これって売る側も買う側もハッピーになれないんじゃないかって思うんです。汎用的な保険を作って、少しでも業界をハッピーにしていきたいと思ってます。
イメージとしては、旅行の前日にグーグルカレンダーからプッシュ通知が来ます。チャットボット質問をします「誰といくの?家族ですか。そしたら家族の皆さんも保険に入りませんか?」という感じですね。「どこにいきますか?海ですか。カメラは持っていきますか?そしたら故障の保険もはいっておきましょうか?」「お会計は80円と30円になります」ってね。
こんな世界にしていきたいです。
まだまだ、未発達な日本のインシュアテック業界。そこに切り込む保険の専門家「justInCase」のこれからが楽しみだ。
取材担当中山
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