長井 裕樹
大学卒業後、三菱化学にて生産技術開発を担当。その後、株式会社アカリクの立ち上げに参画。取締役として大学院生及び若手研究者の就職支援、キャリア教育に携わり年間1万人以上の理工系大学院生にレクチャーを行う。その後、大学の授業に企業人を招へいするエコシステム作りを行う一般社団法人知的人材連携センターを設立。現在は株式会社テックオーシャン代表取締役を務める。
新卒採用の市場は年々増加しているといわれている。調査によるとその市場規模は1300億円を超えたといわれ、年100億付近の増加が見込まれている。究極的な外的要因(リーマンショックなど)がなければ、簡単には縮小しないだろう。そのような先行き明るい市場において、エンジニアなどの工学系・情報科学系の学生の採用ができないという課題が存在している。しかし、一方で、学生側からは、スキルを持っているのにそれを活かした就職ができないとの声もある。売り手市場なのにうまく就職できない、この問題にターゲットリクルーティングの【TECH OFFER】が切り込む。
「TechOcean」が提供するダイレクトリクルーティングの「TECH OFFER」
一言でいうと「TECH系新卒人材のターゲットリクルーティングツール」です。今までダイレクトリクルーティングツールは15社ぐらいあるが、文系、理系ごちゃまぜで本当に技術系学生にとってのメリットが確保できているかというと疑問です。サービス対象をTECH系に絞り込むと、その能力をちゃんと評価して特別選考ルートを確保したりできます。企業側って、本来専門の技術を持っている学生を採用したいですよね。
東大の何々研究室ならすぐにほしいみたいなニーズがあるんです。つまり、TECH系に特化したターゲットリクルーティングが一番企業ニーズも学生ニーズも満たすことが可能なわけです。私たちは研究室と企業を約100万語の技術キーワードでマッチさせるプラットフォームを作っていて、特許も出願済みです。
今のリクルーティングって自己PR合戦になってますが、実際に私もそうでしたが、理系学生だとそれが苦手です。私たちの場合は直接的なオファーを出すことにより、学生側にPRをさせなくてもいいし仕組みにしています。
TECH OFFERではすごく能力のある技術系人材を採用できるように、キーワードベースでターゲット学生がいる研究室の洗い出しを行い、効率的に出会うインフラを提供させていただきます。利用方法としては、企業側がキーワードを決定し、TECH OFFER上で入力すると、登録されている研究室に直接連絡が行く仕組みです。
キーワードベースで研究室と企業をつなげるサービスのようだ。
利用する企業と学生の特徴についてきいた。
企業側はターゲットキーワードを設定できます。よく利用してくれるのが、本当に優秀な学生を採用したい大企業さん。また、自社ブランドがB to Bで学生知名度がないので、どうにか採用をしたいという企業も絶賛してくれています。最後は表看板から横にずれた募集を行う企業ですね。たとえば大手食品メーカーがデータ解析技術者を採用したいというようなニーズです。私たちのTECH OFFERの仕組みを使えば、技術用語や手法を糸口にして、学生と出会い、自社を説明することが出来、採用につなげることが可能です。
学生も、どの研究室だったら、どれくらいの採用や特別選考枠があるかが分かるようになります。また特定のキーワードで採用のニーズもわかるので、何の勉強をすればうまく就職できるかが分かります。私もそうだったのですが、一所懸命勉強しても、それがなんの役に立つかわからない中で勉強するというようなことが往々にしてあったんです、工学系、情報科学系において学んでいることと産業界とのつながりをさらにわかりやすくするのも狙いの一つです。工学・情報科学人材の教育に対しては大学の授業に企業人ゲストスピーカーを招へいするというエコシステムを作りたいと考えており、既に18の大学で展開中です。
TECH OFFERの対象の学生さんもまちまちです。トップ大学といわれるところから、あまり有名ではないところまで幅広いです。企業によっては、有名ではない大学の学生さんへのニーズのほうがむしろ高い企業もあるので、すべての大学層においてマッチングが可能です。今の技術系学生の皆さんって、2,3社で就職を決めていたりします。それって本当にいいのか。私たちはもっとたくさんのオファーを受けて、自分にとって良い会社と出会ってほしいですね。
幅広く社会で使われやすいサービスづくりをしているという。
競合サービスについて聞いた。
競合してくるのは、POLやアカリクなどに見られがちですが、彼らとの違いは明確です。他社の場合は、上位校理系学生が登録していることを売りにしていますが、ライフサイエンスと農学の学生が多いんです。これらの分野の学生はそこまで採用のニーズがないので企業の期待とミスマッチなんですよね。
また、TECH OFFERはターゲットリクルーティングツールであり、従来の検索して声掛けをしていく方式のオファーサービスとは全く異なる工夫を凝らしています。専門の領域に専門の採用オファーを出す仕組み。今までの採用市場は、割と適当に人を採用します。私たちは「この海にはたくさん魚がいるよ」という触れ込みで海に放り出されて、どうにか鯛を釣る方法を提案するのではなく、鯛がいる漁場を私たちで準備して、鯛専門の釣竿で鯛を釣っていただくという方法を提案します。(笑)
サービスを立ち上げた経緯について聞いた。
私は砂漠を緑にしたいと思って、京大の農学部に入りました。そこの研究室は山中教授に予算を付けた大教授が作られた研究室で、非常に優秀な人が集まっており、私も世の中をどうにかよくしたいという気持ちで学びました。しかし、社会に出ようとしたときに、砂漠を緑にしたいという気持ちをぶつけることのできる会社は見つけることが出来ませんでした。そのような中で、総合科学メーカーなら技術の組み合わせで夢をかなえられると思い入社しましたが、事業論理もあってかうまくできませんでした。
日本は資源があまりない国なので、知的な労働者が価値を生み出していく必要があり、最適な企業と最適な学生をマッチしていく必要があると思っています。昔、東大の素粒子論の博士が就職できないという相談にのったことがあります。私からしてみれば彼ほど優秀な人間はいませんでした。彼は大手の塾に応募して、まさかの落選。実はみんな知らないのですが素粒子論の人ってビックデータを扱えるんですよ。もしキーワードベースでの採用があれば、彼は大手企業から引っ張りだこだったはずです。そんなこともあり、今のサービスを立ち上げました。
理系学生の就職の現場を見たことから、今のサービスに至ったようだ。
将来の展望を聞いた。
教育って未来の投資だと思うんですね、私も子供がいるんですけど、教育で培われた世界観や技術や思いというものは社会でつながってほしいと思いますが、
今は数か月間の自己PR合戦でもみくちゃになって、マッチングが終わってしまう。
教育現場も社会から乖離している部分があり、産業界も教育の現場に期待していなかったりするんですよね、そこを変えていきたいと思っています。将来的には、新卒だけじゃなく、中途の市場にも入っていきたいと思っています。今は技術キーワードありきの、アカデミアと技術会社のマッチングだが、同じキーワードで、企業対企業のマッチングもできる。あるいは、キーワードベースで出会ってレコメンドされる社会人同士が遠隔で気軽に挨拶や、商談を行うことが出来るプラットフォームも作りたいですね。例えば、クールビスは社会に定着しましたが、遠隔で面談や商談を行うということはまだまだ定着していません。
日本の営業マンだけを考えても、営業の移動時間やそれにかかるコスト負担は膨大で、本当に訪問しなければならないアポイント以外は、ネットで挨拶やサービス紹介できるといいんじゃないかと思っていますね。クールビズ並みの文化をビジネスベースで作り上げたいと考えています。
この遠隔面談・遠隔商談マッチングの構想は、TECH OFFERでの新卒採用面談を起点としてノウハウを培った延長上で展開が可能と考えているわけです。私はやっぱり高収益の事業が好きで、サイズとしては500億~1000億の高収益事業をやりたいですね。新卒紹介もいいんですが、もっと大きな採用市場にも参入してみたいと思っています。
理系学生に最適な採用を作る。その思いは社会の採用を根底から翻す力を持つ。今後とも追い続けたい一社だ。
※インターン生を募集しているらしい。大学卒業時には一流企業のマネージャークラスの能力が身につくとのこと。詳しくは下のボタンまで。
取材担当中山
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