堀口 圭
2017年に東京大学法学部卒業。同大学在学時2015年に司法試験最年少合格。現在、企業法務系法律事務所にて、M&A・コーポレート関連の業務に従事
弁護士の市場規模は現在1兆円近くあり、国内の士業と比較しても大型の市場規模であるのは間違いない。しかし、その市場規模とは裏腹に弁護士の総数は減少しつつあるという。高齢化&若手の不足により市場に期待されるのはITの導入だ。数多くの士業のITツールが目まぐるしく開発される中、自身が弁護士である堀口氏が立ち上げた日本法務システム研究所は弁護士のための書面作成ツールを発表した。
弁護士のための書面作成ツール「COMMONS PAL」
一言でいうと「パーツを組み合わせて書面を作る」ツールになります。僕らが特化しているのは弁護士向け、彼らの現在の作業時間を減らせるツールを作りました。書面を作成する作業は法律上どうしても必要です、そこを手軽にするのが僕らの目的です。
サービス名は「COMMONS PAL」です。メイン機能としては、パーツの組み替えがあります。これは過去に作成した書面を参照して新しい書面を作成できる機能。基本的に書面は条約によって構成されていますが、異なる書面でも同じ条約をしようするケースがあります。同じものをもう一回最初から作るのは無駄じゃないですか、そこを自動化しているイメージです。
他にはパーツの共有を他の方としていただくこともできます。ネットの海からテンプレートではなく、生きている条文を拾ってくることが可能です。
パーツの組み替えにより書面作成を楽にするという。
利用する企業についてきいた。
想定しているのは主に弁護士事務所です。10名規模から100名規模まで、所内でノウハウを共有したい弁護士事務所からのお問い合わせが多いです。個人事務所の弁護士さんや士業の方はもちろん、企業の法務部に至るまで、最終的には契約書を作成する全ての方に利用価値があるものを目指しています。
競合サービスについてきいた。
競合は決して少なくありません。現在士業向けのITツールは多く存在しています。僕らのサービスの特徴としては、非常にシンプルな作りになっており書面作成に特化している点です。やはり士業のみなさんも使い慣れているものではないため多くの機能を省いた作りになっています。
一つの機能に特化した作りになっているという。
サービスを立ち上げた経緯について聞いた。
大学4年次に司法修習(大阪)に行き、卒業後すぐに外資系のローファームに入りました。入所してすぐに海外出張や仮想通貨ファンドの立ち上げなど様々な刺激的な経験をさせて頂きました。一方で、実際弁護士の業務を行う中で、契約書の基本部分作成の手間が、多くの弁護士にとって業務のボトルネックになってしまっていることに気づきました。さらに法テラスの相談や国選弁護等を行う中で、世の中には様々な法律問題が存在することを痛感しました。こうした業務の中で、弁護士の仕事がもっとクリエイティブになれば、本来見過ごされている法的課題に向き合うことができると思いました。契約書や文書の作成にかかっている時間を削減し、法律相談のような、より弁護士らしい仕事に時間をつぎ込むことができれば、弁護士がより価値を発揮できるものかと思っています。
また、仮想通貨や宇宙ビジネスなど、これから新たに弁護士が学ぶべき分野も増えてきています。基本的な作業を簡易化することで、弁護士としての知識の研鑽により多くの時間を使うことができるようになり、業務の質の向上に役立つものと考えたことから、こちらのCOMMONS PALというサービスの開発に行きつきました。実際先輩の弁護士の方にもお聞きすると、私が感じたような課題と同様の課題を感じているものの、長く弁護士をやるほど慣れてきてしまい、自分で事業をしようと思わなくなるとお聞きしたため、若輩者で恐縮ながら起業を決断した次第です。
将来の展望を聞いた。
4月に資金とメンバーを集めて、がむしゃらにこの数ヶ月突き進みました。ありがたい事に素晴らしい仲間が集まってくれ、今後さらに大きな事が出来ると確信しています。 弁護士の業務をクリエイティブにする先には、リーガルマーケットの拡大とともに一般の方々がもっと法務にアクセスできるインフラができて行きます。私たち日本法務システム研究所は、全ての方の権利が保障される未来を、法律のインフラである弁護士から作り上げて行きたいと考えています。
日本の法務全体を変える、大きな野望を持つ日本法務システム研究所には目が離せない。
取材担当中山
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