代表取締役社長
村中健一
慶應義塾大学理工学部及び大学院理工学研究科で最適化理論・機械学習を学ぶ。ソフトバンクで経済産業省HEMSプロジェクト主任。2016年電力自由化で電力事業の立ち上げ、電力見える化プロダクト開発のリーダを務める。IoT関連の新プロダクト企画・開発実績。2018年エナーバンクを創業。
2016年4月、長らく続いた電力のエリア独占販売が完全撤廃された。電力の自由化により、電力を供給・販売できる小売電気事業者と呼ばれる企業は一気に600社付近まで急増した。数多くのプレイヤーが電力販売に参入する中、未だ一電(一般電気事業者)と呼ばれる従来からの電力会社が業界8割のシェアを持っている。消費者が営業に左右されず、自社にとって最適な電力を確保できるサービスをスタートアップ企業が立ち上げた。まだ創業間もない、「エナーバンク」社を紹介しよう。
サービスについて聞いた。
一言でいうと「法人向けオークションで電力の最安値を見つけられる」サービスです。サービス名は「エネオク」、電力オークションプラッットフォームとでも呼びましょうか。エネオクは一般的な小売電気事業者と法人企業を繋げるプラットフォーム。電力事業者側は自社で販売する電力の価格を入札し、リバースオークションと呼ばれる手法で需要者側の電力契約を落札する仕組みです。(難しいですよね)まあわかりやすくすると一番安い電力会社を法人はリアルタイムで見つけられるというイメージですね。
エネオクは最安の電力契約を見つけられるサービスだ。電力を必要とする全法人、小売電気事業者600社全員が使えるサービスになる。
サービスの特徴としては、無料で使える点・需要者(電力を買う法人)が最安値を見つけられる点・個別チャットで交渉ができる点だ。
当サービスを導入するユーザー(需要者)は主に中小工場や総合病院、結婚式場、オフィスビルなどなど。電力消費が一般的な建物よりも多い企業さんがメインユーザーになりますね。ユーザーとマッチングさせる反対サイドには小売電気事業者と呼ばれる国内600社ある方達。彼らは顧客を増やしたいしどんどん自社商品も売っていきたい。エネオクが彼らにとっては新しい販売チャネルになりえるんです。
競合についても聞いた。
電力価格の比較サイトって昔からありますよね。その中でも一般家庭の電気料金プランをまとめているサービスは凄く沢山。法人向けの比較サイトもあります。そこで戦っても勝てないと思って考えたのが、オークション型なんです。オークションだったら値段の上下がリアルタイムで起きるため、ユーザーにとっては使う価値があるし販売者側は営業のコストが省けます。なので、現状僕らは競合を電気料金比較サイトや電気料金一括見積サービスと置いているんです。とことんユーザー目線なのが僕ら、自由な競争の中で一番お得な料金で電気を使ってもらいたいのです。
サービスを立ち上げた経緯について聞いた。
僕昔から電力、その中でも特に原子力発電に興味がありました。でも東日本大震災以降、日本の原子力の先行きが見えなくなり、より抽象的なエネルギーインフラという視点に切り替えたんです。新卒で入社したのはソフトバンクさん。その中でもネットワークインフラを担当していました。2年目で配属されたのが、当時経産省とソフトバンクが合同でやったプロジェクト、電力好きの僕がアサインされて。2年間かけて電力データを活用したプラットフォームのビジネス検証などを行いました。
2015年からはグループ内で電力自由化向けのプロジェクトを担当。技術担当の開発リーダーを務めて今の共同創業者に出会いました。当時彼は別会社でエネがえるというユーザー目線のサービスをやっていて、意気投合したんですよね。僕が思ったのは、エネルギーを攻めるならフラットな立ち位置でお客さん向けのサービスを立ち上げたい。その思いを実現するため、会社を辞め起業をしました。
大企業で電力に関する仕事を長らく務めた村中さんだからできるサービスのようだ。
将来の展望を聞いた。
エネオクは今年中、100社の小売電気事業者さんにサービス提供させていきたいですね。やはりオークションプラットフォームなので、プレイヤーは多ければ多い方がユーザーのためでもあります。もちろん正しい入札をするためにはバランスよく双方を集めていきます。今年の目標は数十億単位の取引ですね。
エネルギーって取り扱いづらいし、ルールも多いし複雑だと思われがち。でもそれって自由化が起きてから目まぐるしく変化が起きているんです。あまりの進化のスピードについていけないユーザーも多いので、僕らは整合性・公平性があるプラットフォームを作りこれをユーザーに提供していきたい。そうすれば、もっと電力を自由かつ効率よく取り扱っていける世界が実現するんです。最近サービスを飛び出してエネルギー情報を発信する「電力バンク」(https://blog.enerbank.co.jp/)というメディアも始めました。こうした情報発信も積極的に行っていきたいですね。
巨大インフラの一つと呼ばれる電力。複雑極まりない領域に飛び込むのは、大企業で得たノウハウと起業家スピリットを持つ「エナーバンク」社だ。
取材担当中山
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