山本 圭
AIのブームは今なお熱を帯び続けている。4月5日開催のAIエキスポは3年連続で出展者が増え続けている。AIの研究開発に欠かせないデータは、技術者の間では石油と呼ばれ重宝されている。その中でもデータの良し悪しを観測できるデータサイエンティストはどれだけ大事か読者も理解しているだろう。しかし、国内の現状でいうとデータサイエンティストの数は圧倒的に足りない。優秀なデータサイエンティストが「食いつく」データを用意し、ビジネスサイドでマッチングさせるプラットフォーム「D-Ocean」を紹介する。
一言でいうと「データのカタログサイトと見せかけた、マッチングプラットフォーム」です。データは石油と呼ばれているけど、それは意味のあるデータを指しています。ただデータを並べるだけではなんの役にもたたない。
僕らは一般的なSNSに近いプラットフォームを作っています。データを持っている人と、それを欲しがる人をマッチングするプラットフォーム。もちろんデータの受け渡しもクラウド上でセキュアに行うことができます。作りたいのはサイエンティストの悪ノリが掛け算で広がる世界。「あんなデータ欲しいよね、D-Oceanで探してみよう」「このデータ面白いな、成形してアップしてみよう」。
サービス上で行えるのは、欲しいデータの検索、ダウンロード、アップロードなどなど。写真を媒介としたインスタ、データを媒介としたD-Oceanと言えばイメージがつきやすいだろう。
また、サービスの作りは一般的なSNSに近く。かなりユーザーに寄り添った設計をしているという。チャット機能も豊富で、データに興味ある人が話に花を咲かせている。
より多くのデータが集まるよう、現在サービスは無料で提供されている。データを提供するとそれを軸にアイデア・交流が生まれる。データを起点としたサイクルが動き出しているという。
ユーザーとしては、データサイエンティストやアナリストが多いですね。中にはデータを専門に研究するマーケターもいらっしゃいます。私の観点ですが、ハイレベルのデータサイエンティストは日本で1000人しかいない。この方達には積極的に使って欲しいですね。
データの種類として、医療機関や中小企業など様々な法人のもの。自治体さんもアップロードしていたりします。彼らは持っているデータを成形できないので利用ができない、サイエンティスト側からは喉から手が出る貴重なものなんですよね。
サービスを立ち上げた経緯について聞いた。
元々僕は、グーグルで働いていました。当時従事していたのが、パートナーエコシステムの構築だったのですが、データを処理したり、機械学習するような案件にも多く携わっていました。値段が安く、ビッグデータの分析ができるクラウド基盤が、当時徐々に浸透していっていたところでした。しかしながら、まだ一部でしか利用されておらず、もっと多くの人が使えるはず!と思い、悩んでたのですよね。
僕は、プロ野球「西武ライオンズ」の熱狂的なファンなのですよ。居酒屋にいくと、プロ野球中継が放送されていたりしますよね?その時、野球情報アプリでデータをみながら、仲間と盛り上がるわけです。(例えば、この助っ人選手は暖かい地域出身だから、今日の気温じゃ打たないだろう!なんて。「本当かな?」とデータで見ることができたら、面白いよねと。)「データ」というものを、もっと、個人が興味のあることから活用できたらいいんじゃないかな、と思ったのです。
実はその時、CTOの八木橋とこんな話をしました。“興味のあるデータがもっと混じり合う世界、意外な組み合わせも発生する世界”。「データ」を元に、人同士が発想を交換し、新しいアイデアが生まれることって、ワクワクするよね?と。この話が非常に盛り上がりました。こういったことを喚起できるプラットフォームを作ってみようと。それが 『D-Ocean 』の原点ですね。
データを軸にした会話が盛り上がった、この経験から今のサービスを立ち上げたという。
将来の展望を聞いた。
D-Oceanはデータの海という意味。会社のロゴの上の部分は雲を表現しています。今はITがこれほど盛んな時代、データって正直いっぱい漂っているんです。でも海の上で漂うだけじゃ使えないですよね、水に濡れてぐしゃぐしゃかもしれないし。魚に半分かじられているかも。これを吸い上げて、成形してクラウド上で使えるに形にする。そう思っての社名です。僕らはこのプロダクト一本でやっていく会社です。よりサービスを流行させるよう、2020年には1万ユーザーを目指しています。しっかりとした価値を提供していくまで、無償で提供していきたい。その次やりたいのは取引所ですね。データの交流が盛んになってくれば、「データが売買される時代」になってくると思います。「データ取引所」としての機能も、将来的には考えています。そうなった世界を想像すると、ワクワクしてきますよね。
「企業」って、データを使った交流にまだまだ消極的だと思うのです。例えばですが、自動車会社は、競合となる自動車会社には、当然ながら自社データを提供しないですよね。しかしながら、異業種であるコンビニ運営会社には自社データを提供しても良い、という判断はありえると思います。自動車会社提供のデータをコンビニ運営会社が活用することで、新たなアイデアやビジネスが誕生する可能性が出てきます。また逆もしかりで、コンビニ運営会社のデータを活用して、自動車会社が世界に強いインパクト与えるビジネスを生み出せる可能性もあると思います。
結局、すべての事象は、何らかの形でデータ化できると思っています。極端な話、人類社会において、使えないデータなんてない!と思っています。ただ、それは「人が何かをしたい」、「知りたい」という目的があってのことです。日本企業の素晴らしい実績を学びたい世界の国々は多いと思います。「データを通じて学びたい」、「自国の状況とデータを比較したい」といったように。こういう動きが活発化していけば、『D-Ocean』というプラットフォームに、ありとあらゆるデータが集まってきます。そういった状態を目指し、今後は日本だけにとどまらず、世界へも広げていきたいと考えています。
“人”に着目してデータ交流を行うというプラットフォームの『D-Ocean」には、多くの「人」と「データ」が集まってくる可能性を感じました。期待していきたいです。
取材担当中山
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