櫻井将
横浜国立大学経営システム科学科卒業。ワークスアプリケーションズにて営業部・人事総務部のマネージャを経て、プロジェクトマネジメント会社のgCストーリーに入社。営業・新規事業開発と、健康経営を支援する子会社を担当。両社にてGPTW「働きがいのある会社」ランキングにてベストカンパニーを受賞。
「働きがい」を考える一般社団法人にて理事、「志」を発見する団体の主催、幼児教育に関わるNPO設立、経営者へのメンタリング・コーチングなどを通し、“個人の幸せ” と “組織の幸せ” の両立についての探究を行う。
2017年2月よりエール株式会社に入社。2017年10月より経営参画し、「YeLL(エール)」のサービス拡大に従事。
管理職になりたくない社員は増えている。そんな中面白いサービスがある。「クラウド型人事サービス」の「YeLL」だ。
例えれば「クラウド上司」を提供しています。組織の現場社員1人1人に、クラウドサポーターと呼ばれる外部メンターがつき、それぞれの悩みの解決や1人1人の生産性の向上をするためのやりとりを継続的に行います。それにより具体的には離職率が下がり、またエンゲージメントスコアがアップします。その個別のやりとりを統合して組織の状態を分析します。
クラウド上司とは面白い表現だが、なぜそんなコンセプトなのだろう。
一般的な企業で、上司の仕事は三つありますよね。長期的なメンバー育成、短期的なメンバー育成、そして成果の管理です。しかし、現実的には数字を追うことに重きを置きがちで長期的にメンバーの育成に注力することは難しいです。その一部を代替するのが「クラウド型人事サービス」の「YeLL」です。
ただ、クラウド上司といっても、実際に上司の仕事を代替しようとは思っていない。メンバーのモチベーションには、他者からの自分への評価や愚痴など、人に聞いてもらいたいという欲求が背景にあります。また、これからの時代、「働く」というキーワードと切っても切り離せない「自分は何がしたいのか?楽しいのか?」「自分は何者なのか?」という問いからの深い動機づけが必要です。そこを代行しようと考えたのです。
上司部下の関係って、なんだかんだ私情が入ってしまうじゃないですか。そうすると、上司は素直に話を受け止めることが出来ず、部下に至っては怒られるのを怖がって、相談をためらってしまいますよね。そこで考えたんです、第三者だと余計な感情が入らずにアドバイスを受けられるんじゃないかって。
現在の導入企業の満足度は80%超。
櫻井さんによると、意外な反響があった。当初想定していた「メンバーのためのメンタリング」が、まさかの部長クラスに人気を博していた。
例えばある導入企業ではこんな声が聞かれている。
「実は、YeLLを導入して一番得をしたのは我々管理職なんです。YeLLを導入すると、今の若者が求めていることがよくわかります。我々は90名弱の組織ですが、YeLLを通して日々成長してます。当社にとっては、そこも大きいメリットの一つですね」
この高い満足の理由はYeLLのユーザーに電話サポートを行うサポーターにある。YeLLではサポーターの属性を分析し相性の良い3人のサポーターを推薦、ユーザーは一人選び質の高いメンタリングを受けることができる。
さらにYeLLのサポーターは専門家だけでなく同じ目線の副業のビジネスマンも多く、ユーザーの気持ちを理解できるのもポイントだろう。
なぜこんなサービスを行っているのだろう。
櫻井さんは、システム開発会社に新卒入社し、トップ営業として名を連ねる。気が付けば、興味はプレイヤーとしてよりもも組織の構築をする方が楽しくなっていたと言う。その後、プロジェクトマネジメント会社に入社、新規事業営業と組織マネジメントに携わる。
常に、人を育てるということを念頭に置いていた櫻井さんだが、きっかけになったのはあるできごとだった。
実は昔、犯罪を犯してしまった部下を持った経験があるんです。ある社員がプライベートで非常に辛い出来事があって、仕事に身が入らない。当時の課長では手に負えなく、部長職だった私のところに話が来たんですよ。
私も当時、週に一回時間をかけて、話を聞いてたんですけどね、なんだかんだ上司部下の関係じゃないですか。心のどこかで「そんなことぐらいで仕事から逃げてんじゃねーよ」って思ってたんですよ。そしたら次第に会社に来なくなってしまいまして。
半年後ふと、私のもとに手紙が届いたんですね。今、留置所に入ってますと、あわてて、向かいましたね。ガラス越しに話をしたんですが、そこで初めて上司としてではなく、一人の人間として向き合えたんです。そうしたら彼から「きちんと罪を償って、必ずもう一度、人の役に立てるようになります」って言ってくれたんです。
利害関係のある上司部下や家族の関係には、どうしても感情が入ります。これは仕方がないことです。そんな時に利害関係のない人が関わることがとても重要なんだと気がつきました。「相手以上に相手を信じる」という関わり方が、相手にもの凄いエネルギーを与えるんだと。
こんな「第三者の存在の重要性」に気づいたタイミングで、YeLLの経営をやらないかと声がかかったのだった。
将来をきいた。
コンサルファームとかの組織診断で課題抽出はできます。また最近のHR Techサービス等でエンゲージメントを見える化するという動きは活発になっています。これはとても素晴らしいことだと思います。一方で、実際にどうやって社員一人ひとりのエンゲージメントを高めるのか?という問題は、まだ解決されていません。最後は社員一人ひとりの感情を扱う必要があります。最新の脳神経科学でも証明されているように、人の行動を決定するのは「思考」ではなく「感情」です。YeLLは社員一人ひとりの感情にアプローチすることで組織の課題を解決していきます。診断系のサービスとの提携も視野に入れています。
もうひとつ狙いがあるそうだ。
現在YeLLのサポーターは「副業」「育休中の女性」「コーチ・カウンセラー」の方が多いです。そんな中、元々はYeLLでサポートを受けていたユーザーが、サポーターとなるケースが非常に増えています。逆にサポーターをやっている方の会社で導入されるケースも増えています。このような組織の枠を超えて循環する「人材開発プラットフォーム」を展開していきます。
現在はB2Bで展開中だが、一般ユーザーにも当サービスを解放する選択肢も持ちながら循環型のプラットフォームとしてサービスを拡大する計画だ。
取材担当中山
取材担当進藤
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