アクセンチュア東京オフィスを経て弁護士に。早稲田リーガルコモンズ法律事務所の代表も務める。AI及びブロックチェーンテクノロジーの法実務への適用を支援するため当社を設立。経営全般を担当。
様々なものの電子化が進む現代において、法律の世界では先端技術の導入が遅れている。
ファックスを使ったり、紙で管理をしていることがあるらしい。
国際的に見ても、このような状況は遅れていると言わざるをえない。
そんな法律業界にブロックチェーンの技術を応用したのが、 株式会社ケンタウロスワークスが開発した「BlockRecord」だ。
詳しく見ていこう。
――「BlockRecord」について教えてください。
BlockRecordを一言でいうと、「映像や動画をブロックチェーンに記録することで、事実を証明できるアプリケーション」です。
利用シーンとしては、交通事故の現場写真やセクハラ・パワハラの音声記録、自然災害の状況動画などですね。他にも大切な思い出の記録、法律上の文章の記録の場面でも使えます。これらの画像・動画をブロックチェーンの中に記録しておけば、確固たる証拠として使えるようになるんです。
裁判の時や弁護士に相談するときに、このように証拠として確固たるものがあれば、権利救済をはっきりさせることができます。
このように証拠は大変重要なものなのですが、保全しようと思うきっかけがなければ保全しようと思えません。
きっかけがなければ家の中の写真なんて取らないですよね。しかし、この家の中の写真でさえ、重要な証拠になりえます。
証拠として持っている人と持っていない人では法律事務所の対応も変わってきてしまうんです。
――証拠として画像は大切なものなんですね。しかし、今まで証拠を保全するような仕組みはなったのでしょうか?
事実証明のための公証人という制度はありました。
本来、正式な証拠として使えるような書類を作るためには、この公証人を使う必要があったんです。
しかし、ほとんどの人は使っていません。
現状、裁判では証拠としてただの画像を使っています。
この画像はこれからの技術進歩で、いつ作ったものなのか、誰のものなのか、簡単に入れ替えられるようになるのではないでしょうか。
このような状況では、事実証明が難しくなってしまいます。
そこで、ブロックチェーンの技術を応用し、証拠として使えるようにしたのが「BlockRecord」です。
証拠が偽造されることを防ぎます。
――どんな企業・営業職の方が「BlockRecord」を使っているのですか?
現在BlockRecordはテストリリースの段階です。実際にどんな人に使っていただけるのかも試しています。どんな形で使えるのかどうかをこれから探っていきたい。
今の時点で想定している仮のユーザーは起業家や裁判の証拠として提出する際に必要になる人ですね。
これらの方々以外にも様々な用途が考えられます。まずはテストでどんな使い方ができるのか、はっきりさせたいですね。
――競合について教えてください
データを入れて、ブロックチェーンに記録し、証拠を残すというサービスは海外に若干の例があります。OriginStampやSilentNotaryなどがその一例です。
しかし、国内にはブロックチェーンデータを記録するベンチマークは少なく、最終的に弁護士業に流しこむようなビジネスモデルなのはBlockRecordだけかもしれません。
広義にとらえると、スマホのスクリーンショットの機能も競合になりえますね。
しかし、このスクリーンショットでは、メタタグ情報などの改ざんができてしまいます。大阪地検でデータを改ざんした事件があったのは記憶に新しいですよね。捜査機関でさえ、証拠を加工するんです。
ブロックチェーンで、確固たる証拠にする必要があると思います。
BlockRecordの機能一覧
――立ち上げまでの経緯を教えてください
弁護士になって今年で11年になります。
最初の4年間は一般市民向けの法律事務所にて勤務していました。その後独立し、IT領域にも取り組んでいます。
ITの知識は実際に自分がいろいろな場所に出ていって、現場で身に着けました。
当時は、AIとブロックチェーンの2つを研究していましたね。
――「株式会社ケンタウロスワークス」という独特の社名ですが、由来はなんですか?
これからあらゆる産業がAI化するといわれています。
しかし、本当に大切なことは、上半身が人間で下半身が馬のケンタウロスのように、AIと人間が一体となってともに働くことだと思うんです。
最近、将棋の名人がAIに負けたというニュースが話題になりました。
さらにさかのぼってみてみると、実は20年前に人間はチェスでコンピューターに負けているんです。
そして今のチェスの業界ではAIと人間の力を掛け合わせて、さらに強いプレイヤーが現れています。
つまり、AIと人間が共闘したほうが良い結果が現れるのです。
AIの登場で人間がいらなくなるといわれていますが、そんなことはありません。
AIの性質を理解して使いこなすことが大切なんです。これはリーガル分野にも同じことがいえます。
ですから、リーガルとブロックチェーンを掛け合わせた「BlockRecord」を開発しました。
――今後のBlockRecordのプロダクトはどんな進化をするのでしょうか?
これからのBlockRecordの展開としては2パターンを考えています。
1つ目は、BlockRecordがKYCとしての役割を果たす進歩の仕方です。
現在、インターネットでの取引の際に、本人確認が必要なケースが増えています。
ここでBlockRecordの仕組みを応用して、KYCの機能を代替できるようにしていきます。
2つ目が契約書をBlockRecordで管理するという進歩の仕方。
モノを買ったことの証明や、約束したというものをブロックチェーンに残しておけば、証明できるものとして半永久的に残すことができるんです。
これらの2つの進歩の方法を考えています。
※KYC…「Know Your Customer(顧客確認)」の略で、顧客からお金を預かる銀行は顧客の受け入れに対して明確な方針と手続きを持ち、それらの方針と手続きに沿って新規に顧客が口座開設を行う際はその顧客がどんな人物なのか、十分な身元確認を行う必要があるという指針となるもの。
――今後の展望を教えてください。
目の前の課題はブロックチェーンを用いた電子署名の仕組みを社会に受け入れてもらうことだと考えています。それに一定の時間がかかるでしょう。
その上で、ブロックチェーン技術や法規制などがもう少し熟してきたら、いわゆるスマートコントラクトと言われるような、契約と決済と業務プロセスが連動するような仕組みが実装できる段階が来るのではないかと考えています。
そのときに、個人の力をエンパワーするような仕組みを提供していきたいですね。
BlockRecordはリーガルとITの組み合わせで個人を守る。
取材担当橋本
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