代表取締役
廣田 雄将
学生時代に広告・PR事業を起業・事業売却した経験から、卒業後は医療系M&Aアドバイザーとして活躍。PMI時にグループ病院で事務長をつとめ、医療経営の実態を知る。医薬品の不良在庫に着目し「9lione(クリオネ)」を起業。
院内残薬とは、消費期限が切れて使えなくなってしまった医薬品である。1医療機関ごとに平均で年500万円分の医薬品が廃棄され、日本全体で見ると7700億円もの損失が出ている。
この院内残薬を削減することで、医療機関にとってコスト削減につながるだけでなく、患者にとっても医療費削減につながるのではないか。そうしたら大きな社会貢献になる。そう考え起業しました。
医療機関では、煩雑でアナログな管理が行われているところが多い。200品目の医薬品を手書きやエクセルで管理しているのだ。これをシンプルで簡単にするのが「9lione(クリオネ)」である。
9lione(クリオネ)には5つの便利な機能がある。
「カンタン読取」光学文字認識技術(OCR)を使用することで、手書きの処方箋もタブレットやスマートフォンで読み取ることができる。その情報から医薬品の在庫一覧が自動作成・更新される。
「カンタン管理」医薬品のバーコードをタブレットやスマートフォンで読み取ることができる。薬価改定も自動でアップデートされるため、面倒だった棚卸しの手間が省ける。
「カンタン発注」処方箋データを分析し需要・消費傾向の予測をすることで、最適なタイミングと量で発注することができる。薬剤師等管理者の経験と勘によって行なっていた従来の発注をより無駄のないものにできる。
「カンタン貸借」電話で直接現金受け取りというアナログでやっていた薬剤の貸し借りを、クラウド上でデジタル化することで、より正確な在庫管理ができるようになる。
「カンタン設定」従来の在庫管理システムは不要な情報が多く見えづらい設計。9lione(クリオネ)は自分で一覧表をカスタマイズできるため、シンプルで使いやすいものにできる。これはパートタイムが多い中小零細規模の医療機関において、誰でも使いこなすことができるので、業務の標準化がしやすくなる。
9lione(クリオネ)の最大の特徴は「高性能の医薬品管理システムを無料で始められる」という点である。バーコードリーダーも必要なく、クラウドサービスなので手持ちのiPad等のタブレットかスマートフォンがあればすぐに始められる。これは業界初の試みで、システムの導入障壁を圧倒的に低くするのが狙いだ。
ターゲットは中小零細規模に絞っています。規模が小さいほど手書きやエクセルで在庫管理をしているところが多い。また9lione(クリオネ)は無料でできるので、なかなかシステムに手を出せない方々にどんどん使ってもらいたいです。
中小零細規模の医療機関は全体の55%で12万店舗にも及ぶという。この市場でユーザーを増やすことが重要だ。実際に多くの中小零細機関から問い合わせがあり、ニーズを掴んでいることは確かだという。
創始者の廣田は、起業以前はM&Aアドバイザーとして主に事業承継問題に取り組んでいた。200件以上の案件を担当しながら、経営側の視点から医療業界を観察したとき、ドクターが経営や事務を丸投げしていると感じたという。
医療現場の課題とそれを解決できる方法を知っているのは自分だけ。そうしたら自分がいまやるしかない。そう思い起業に至りました。
医療機関に蔓延する不良在庫を解決するなど無駄を省いて、ドクターや関係者が働きやすい環境を作れないか。その思いが彼を突き動かしている。
9lione(クリオネ)α版で検証をした結果、過剰発生の75%(=380万円)を削減することができた。全ての機関に導入された場合、5800億円のコスト削減という大きなインパクトをもたらすといえる。
今後は、集まった大量の在庫データをもとに売買プラットフォームを確立することを考えています。いわば「医療機関のAmazon」を目指しています。
社名とサービス名である9lione(クリオネ)の由来は「Quality of life is one」。QOL(生活の質)を高めるプラットフォームを作りたい、という思いが込められている。しかし実はもう1つの理由があるという。
「流氷の天使」と呼ばれているクリオネのように、表向きは「医療界の天使」のような存在を目指しています。しかし見た目とは真逆の悪魔のような捕食をするクリオネのように、裏では「医療業界を喰らう」ような存在になりたい。密かにそう考えています。
医療機関の未来を創り出す9lione(クリオネ)。
これからどのようにして業界を食らっていくのか。今後が楽しみである。
取材担当下郷
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