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インタビュー 2019.07.25

クリエイティビティを定量化して、より良いテレビCMを!株式会社コラージュ・ゼロ「CREATIVE BRAIN」

クリエイティブ領域はどうしても主観に頼ってしまいがちだ。

そのため、客観的な判断ができず、クリエイターと依頼主の考えのすれ違いが起こることもしばしば。

そんな現状を「テレビCM」の領域で解決しようとしているサービスがある。株式会社コラージュ・ゼロ「CREATIVE BRAIN」だ。

人工知能によるTVCM好感度予測システムで、クリエイティビティを定量的に評価する取り組みを進めている。今後は、TVCMにとどまらず、幅広い領域で活躍することも目指しているとのこと。

どんなサービスなのか、詳しく見ていこう。

株式会社コラージュ・ゼロCEO/Producer
小島 拓也(こじま たくや)

「CREATIVE BRAIN」プロジェクトの企画・統括を担当。
理系大学院→大手広告代理店というキャリアを経て、独立。
「理系」「広告」という2つのバックグラウンドをベースに、広告×テクノロジーによるイノベーションを目指す。
一般社団法人日本ディープラーニング協会「G検定」保有。

目次

  • 人工知能によるTVCM好感度予測システム「CREATIVE BRAIN」
  • 長年の広告の原体験から生まれた「CREATIVE BRAIN」
  • テレビCM好感度にとどまらない、今後の展望について聞いた

人工知能によるTVCM好感度予測システム「CREATIVE BRAIN」

――CREATIVE BRAINについて教えてください。

CREATIVE BRAINは人工知能によるTVCM好感度予測システムです。広告業界のスタンダードとなる広告制作支援システムを目指しています。

現在のテレビは、30分の番組ならば、安いと500万円程度で制作できます。一方、15秒のCMの制作には数千万円かかることがある。年間の企業がかけるCM製作費は1社あたり数億円に上るケースも存在するんです。

これだけ莫大な予算がCMにはかけられているにも関わらず、クリエイティビティというワードを隠れ蓑にしてクリエイターのセンス・担当者の好み・政治的なしがらみでCMが作られてしまっていることがあります。このような現状を解決するために、各社がクリエイティブ領域のAIを開発し始めています。

しかし、業界のスタンダードとなる広告制作支援システムはこれまでにありませんでした。そこで、CMのクリエイティビティを定量的に評価するサービスを開発。それが、CREATIVE BRAINです。

――どのような仕組みでCMの好感度のシステムを運営しているのですか?

CMのクリエイティビティを定量的に評価するためには、データが必要です。弊社では、株式会社東京企画(CM総合研究所)のCM好感度データを使っています。

また、国際大学グローバル・コミュニケーション・センターに研究開発を委託。株式会社コラージュ・ゼロは全体の企画・発案・プロデュースを担当しています。

――実際にどうやって予測しているのですか?

テレビCM制作の流れは、企画・制作・オンエア・評価の順番です。

このCM作成の流れの上での問題点は「評価」の部分を次回のCMに生かしづらいこと。すでにオンエアされてしまっているCMは変えられませんし、次回のCMを作るときには前提となる環境が変わってしまい、前回のCMのフィードバックが活用できない場合が多々あります。

そのため、企画段階で、CMの効果が定量的にわかっていることが重要になります。

CMの効果を定量的に評価するために、CMのメタデータ(CMがどんな内容なのかというデータ)とCM好感度データの2つのデータを読みこみます。そして、AIの自然言語処理能力を使ってこの2つのデータの関係性を学習。新しく作るCM情報を入力することで、そのCMがどんな印象を持たれるか、どの性別・年代に支持されるかが予測できます。

システムの使い方はいたって簡単で、CREATIVE BRAINでは、システム上でテキスト情報を入力するだけで、好感度予測ができるようになっています。

このように企画段階で好感度を予測することができれば、目的に合ったCMが作成できるんです。

――目的に合ったCMを作れるのは特徴的ですね!

CREATIVE BRAINで予測する指標はカスタマイズすることもできます。

まだ未実装ですが、読み込むデータの領域を特定の業種に限定することでその業種により特化した予測をしたり、売り上げデータなどを読み込んで売り上げ数値を予測したり、好感度以外の様々なKPIに対応することができます。

――CREATIVE BRAINを使うと企業にどんなメリットがあるのですか?

好感度を予測して、定量化することができればCMに関する議論が前向きになります。

たしかに、広告クリエイターの方からは自分の作った広告は数字で計れるようなものではないという意見もあります。しかし、広告クリエイターの方々と敵対していくつもりはありません。

私たちは広告クリエイターが宣伝部に対して、いいと思える企画を通しやすくするためにサービスを使ってほしいと思います。

もし広告クリエイターと広告主で同じ指標で話ができれば、ゴールが統一できます。目指すゴールが一致せず、1から作りなおすといったような事例を減らしていきたいと思っています。

――ユーザーについて教えてください。

メインとなるユーザーは広告主の宣伝部を考えています。

広告主は複数CM企画を提案された際に、どのCM企画が今回の趣旨に合っているかを判断する必要があり、その際にこのシステムをご活用いただけます。複数社から複数のCM企画提案があるコンペなどでも有用です。ターゲット・目的に合ったCMがどの企画なのか判断してもらう参考となるのです。

――競合について教えてください

競合があまりいないのが課題です。

現在において、A/Bテストなどはありつつも、企画段階から広告を定量的に評価する文化がありません。だからこそ、最初はCMを企画段階から定量的に評価することに対して尻込みしてしまう企業もいらっしゃるかもしれません。

しかし、CMを企画段階から定量的に評価した方がいいのは間違いないこと。本当にいいのであれば、結果的にこの流れは必ずスタンダードになると思っています。

だからこそ、最初は、データでCMを評価する文化を根付かせる必要があるんです。これからはそんな文化を根付かせるための仲間が増えてきてほしいと思っていますね。

長年の広告の原体験から生まれた「CREATIVE BRAIN」

――CREATIVE BRAINが生まれた背景について教えてください。

大学では工学系の専攻でした。工学といっても、経営を工学的手法で分析する学部。理系なんだけれども、経営のビジネスマネジメントを学びました。

その後は大手広告代理店に入社し、営業としてクリエイティブに携わる仕事を多くしてきました。広告業界には15年近くいたことになりますね。そのため、私のキャリアのバックボーンには工学と広告があるんです。

当時は、広告主と広告のクリエイターをつなぐ仕事も多く、その原体験の中で、広告には指標がないということを感じていたんです。数千万円が動くCMなのに、時間がないから最後は妥協して決められてしまうこともあったように感じます。そこに対する大きな違和感があり、解決したいと思っていました。

――そんな想いがあったのですね!そこからCREATIVE BRAIN開発にはどんなきっかけがあったのですか?

昔は宣伝部としての経験が長い担当者が、豊富な経験や暗黙知をもとにCMを決めるようなことも多く、広告制作は属人的に行われていたんです。そんな当時の広告業界において最も大切なのは経験でした。

しかし、現代においては宣伝部以外の様々な部門の意見を取り入れつつ、広告を作成する必要があります。

様々な立場から出る意見をまとめあげ、1本のCMに仕上げるためには、主観的な理由だけでは各所に納得してもらえない。データを示すことができれば説得力を強めることができます。

クリエイターとのやり取りでもデータを軸に議論ができれば、より良い広告ができると思っています。

テレビCM好感度にとどまらない、今後の展望について聞いた

――今後はどんなサービスを考えているんですか?

現在、広告主の方にヒヤリングしている中で、「好感度のために作っているわけではない」「それよりも出稿量をどうすべきかが悩ましい」という意見もいただいています。

もちろんそのような意見ももっともだと思います。私たちの事業において「テレビCM好感度の予測」は入口にしか過ぎません。

今後は、クライアントから提供していただいたデータをInputして、様々な指標を予測できるようにしたり、予測の精度を上げたりすることを考えています。

具体的には、タレントや出稿量のデータ、クライアントが保有するデータなどを取り込めたらと思っています。

今後はTVCM好感度に限らず、あらゆるマーケティング指標の予測プラットフォームになることを目指しています。

――将来の展望を教えてください。

「5G」という言葉が話題になっていることからわかる通り、今後の動画広告マーケットは拡大していくと予想されます。

そのため、私たちの技術をテレビCMからウェブ動画にも転用することも考えています。入口はTVCMから始め、さまざまな場面で活躍できるようになりたいです。

現在の目標は、なるべく多くの企業様に企画段階からのCM好感度予測を体験していただくこと。そこで十分に成果が出すことができれば、多くの会社がCM制作の工程の中に「予測」を取り入れていただけると思っています。CMをデータ基づき制作する文化を作っていきます。

CMの好感度予測にとどまらず、幅広いマーケティング指標の予測プラットフォームへ。進歩は続く。

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編集後記

取材担当橋本

これからの時代を彩る可能性が高い「AI」と「映像」。その2点を取り入れた株式会社コラージュ・ゼロの先見性に驚きました。

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投稿者プロフィール

橋本 雅弘
橋本 雅弘
大学では社会福祉学を専攻。現在はStartupTimesのほか、日本最大級のAIメディア「AINOW」でも執筆。学生スタートアップ特化型アクセラレータープログラム「GAKUcelerator」でメンターを勤める。

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