IT人材の不足が問題視されている。
その問題解決のためには、優秀な海外のエンジニアに日本へ来てもらう必要があるだろう。
しかし、重大な問題がある。「日本語」だ。
そんな言葉の壁を、日本語速習システムの開発と、それを応用した日本語ブートキャンプの展開で解決しようとしているのが、株式会社JLBCだ。
どんなサービスなのか、詳しく見ていこう。
――サービスについて教えてください。
株式会社JLBCのサービスは、外国人エンジニアの方に特化した日本語速習システムの開発と、それを応用した日本語ブートキャンプの展開をしています。
日本語速習システムとは、独自の日本語学習のメソッドや、AIを応用したeラーニングシステムのことです。日本語をより早く学ぶためのメソッドおよびAIを応用したeラーニングシステムを教育システムに採用しています。
ブートキャンプは軍隊式短期集中訓練のことで、日本語ブートキャンプでは、日本語教育システムを使うことで、短期間で日本語力が向上する日本語教室を運営しています。
――どうやって利用するのですか?
外国人ITエンジニアの方は、短期間で効率よく日本語を習得することができます。日本国内では、仕事終わりの夜7時から11時まで、日本語研修をしていますね。
そして、企業の方は日本語を習得したITエンジニアの方を採用することができます。
――ユーザーについて教えてください。
現在、我々のサービスは日本における第一弾のPoC(概念実証)段階で、3週間で200名以上の外国人ITエンジニアの応募がありました。そのうち68名の方にPoCに参加していただいています。
企業の方々とは、我々のメインの顧客となるメガベンチャーやスタートアップ企業の方々と、色々と意見交換をさせていただいております。
――競合について教えてください。
競合は世界中にある日本語教室や日本語学校です。これらのサービスとの違いは大きく3つあります。
1つは当社のサービスがITエンジニアだけを対象としていることです。今まで介護や技能実習のための日本語学校が多かったのですが、ITエンジニアに特化している日本語学校はほとんどありませんでした。
2つ目がユーザーの外国人ITエンジニアの方には無料でサービスを提供していること。企業で紹介料をもらうビジネスモデルのため、外国人の方には完全無料でサービスを提供できます。
3つ目が一般的な日本語学校と比べて、短期間で日本語が習得可能であることです。具体的には通常6か月のカリキュラムを3か月でマスターできるようになっています。
――どれくらいの日本語の能力があがりますか?
通常6か月前後とされるN3レベルまでの到達を、3か月に圧縮する目標を掲げております。
N3は日本で日常生活をするのに困らない程度と言われる、日本語能力試験の評価です。
――もともと何をしていたのですか?
福岡大学を中退して、バックパッカーとして勢いでベトナムへ行ったんです。そのまま約2年ほど住み着くことになりました。最初は飲食店のスタッフから始まり、ベトナムに来る日本人のガイド役もやりながらベトナムで生計をたてていましたね。飲食店ではひたすらジンギスカンを焼いていて。「なんでベトナムまで来てジンギスカンを焼いているんだ」と悩んだこともありました(笑)。
その後出逢いがあって、現地の人と日本語学校を設立。経営が軌道にのったところでベトナムの起業家に譲渡し、自分は帰国しました。
帰国後、大学生を無料で海外に連れていくインターンシップ事業の会社を設立。その2社目として、今回の事業を立ち上げました。
――なぜこのサービスを始めようとしたんですか?
インターン事業を行うなかで、企業からエンジニアをもっと増やせないかという相談を多数受けていました。そこで大学生をITエンジニアにできないかと考えたのですが、短期間で企業が求めるレベルまで教育することには限界があり、頓挫してしまいました。
その課題の解決方法をずっと考えていたところ、ベトナムの知人から、ITエンジニアが日本に来たがっているから相談に乗ってくれないかと連絡がありました。なぜ日本に来たいのかと聞くと、本当はアメリカに行きたかったがビザ取得が厳しくなったため、2番目に興味があった日本に行きたいとのことだったんです。
調べたところ欧米のビザ事情の変化から日本に行きたいという人が増えていることがわかりました。これはイケるかもと思い、海外からITエンジニアを連れてくることを考えたのですが、そこでもまた課題があって…。
その問題とは「日本語習得に時間がかかる」ということ。日本語の壁が圧倒的に高いんです。アニメやyoutubeで日本語を学ぶのにも限界があります。日本学校に通おうとすると費用がかかり、借金を背負って日本に来る人もいるほどなんです。
日本語教育の難しさに悩み、また頓挫しかけていたのですが、日本語教師の方やAI技術者の方との交流を通して、「日本語速習システムを開発する」という着想にたどり着きました。そこでJLBCを立ち上げ、課題解決にチャレンジすることに決めたんです。
――このサービスの将来について教えてください。
現在の国内のPoCとeラーニングシステムベータ版の開発が終わった段階で、我々は海外PoCを開始します。
海外PoCでは、インド・ASEAN地域のどこかを拠点とし、現地のITエンジニアの方を対象に我々のブートキャンプ教室を開講予定。ここでの目的は、日本語能力を「3か月でN3以上まで」上げられることの実証です。
この実証に成功したら、ブートキャンプ教室をインド・ASEANを中心に多数展開することで、日本語習得したITエンジニアの方がどんどん日本にやってくるようにしたいと思っています。
そして、2020年で30万人、2030年には45万人にのぼるといわれる日本のIT人材不足という課題解決に貢献したいです。
また将来的には我々が開発した日本語速習システムを、ITエンジニア以外の方にも開放し、日本語を学びたい人達への助けになれればと考えております。
――目指す世界はありますか?
我々は「もっと日本語が学びやすい世界」を創って行きます。
世界で日本語を学びたい人、日本や日本文化に興味を持っている人が、今よりもっと気軽に効率よく日本語が学べる世界を目指します。そしてその結果、日本という国をもっと好きになってもらったり、日本の文化をもっと楽しんでもらったり、身に着けた日本語を仕事に役立ててもらったりなど、効率の良い日本語教育によって、いい影響が広がっていく、そんな世界を実現していけたらいいなと思っています。
もっと日本語が学びやすい世界を実現し、IT人材不足の解決へ―。株式会社JLBCが動き始める。
取材担当橋本
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