日本の高齢化が止まらない。
上のグラフからもわかるように生産年齢人口割合は減少し、高齢化率はどんどん上昇してきている。
このような、いわば「超高齢社会」において、介護職は非常に重要だ。しかし、社会に目を向けるとどうだろう。介護職の評価は高いとは言えないものになっているのではないか。
このような現状を解決するサービスの運営・開発を行っているのが「カイテク株式会社」だ。
どんな会社なのか。詳しく見ていこう。
代表取締役
武藤 高史
立命館大学院 情報工学 博士課程前期 卒業。在学中は遠隔探索ロボットの研究開発を経験。
世界最大級の医師プラットフォームを運営する事業会社エムスリー株式会社にて、主力サービスのプラットフォームディレクター/サービス責任者に従事。富士ゼロックス→INNOBASE→エムスリー。
――CaiTas(カイタス)について教えてください。
カイテク株式会社が運営しているCaiTas(カイタス)を一言でいうと、「介護に特化した求人ウェブサービス」です。介護職に向けた求人を掲載しています。特徴は、地図ベースで求人を探せること。
従来の求人サービスは、一覧で求人票が並んでいました。これでは、広告費や更新頻度で掲載順位が決まってしまう。しかし、介護職や看護職の人にとって、近くの職場を探したいというニーズがあるんです。
そのため、地図で探して、すぐに問合せができるようになっていることが大きな特徴になっています。
――CaiTasの特徴は他にありますか?
CaiTasの特徴として、「バーチャル施設見学」があります。Googleのストリートビューのように、介護事業所の中を遠隔操作で見ることができるんです。求人票の中に組み込めるようになっており、手軽に施設見学ができるようになっています。
――なぜバーチャル施設見学の機能を追加したのですか?
なぜバーチャル施設見学の機能を追加したかというと、介護職の方々は、利用者の方と施設の中で一緒に生活するようになるからです。お風呂やトイレ、デイルームの位置関係を把握し、全体の構造を見ることは働くうえで大事になります。そのため、施設見学を気軽にできるようにしたかったという想いがありました。
――現在開発中のサービスについて教えてください。
現在開発しているのは、「介護のワークシェアリングができるサービス」です。介護職の方と事業所のマッチングができるサービスを開発しています。
特徴としては、スポットマッチングであること。「この時間だけ働きたい」介護職の方と、「この時間に人が欲しい」という介護事業所をアプリで簡単にマッチングしています。面接・履歴書なしですぐに仕事ができるんです。
また、相互評価をできるようにする予定です。自分と事業所の評価をしていきます。
――相互評価はとても画期的ですね!
介護事業所の評価は今まであまりされてきませんでした。というのも、評価をする人が介護施設を利用している高齢者の方であるため、データを取ることが難しかったんです。介護状態で評価を書くことは困難ですし、基本的に施設には一か所しか行かないので、相対評価ができません。
これらの課題を解決するために、働き手に注目しました。実際に働いている人であれば、現場のデータを集めることができるんです。
また、介護事業所に関係のない第三者が関わることは、とても価値のあること。施設では、基本的にずっと同じ人が対応するので、飽きてしまうことがあるんです。いろいろな人と関わることで、施設で働いている人や利用者の方の刺激にもなります。虐待防止も可能です。
働き手が事業所を評価することは、多方面で価値があります。
介護に特化した求人ウェブサービスと介護のワークシェアリングができるサービスを組み合わせて、シナジーを生むべく、開発が進められている。
サービスイメージ
――ユーザーについて教えてください。
ユーザーは介護事業所と介護従事者の方になっています。
介護事業所は施設と通所サービスを中心に展開。介護従事者の方には、介護福祉士の実務者研修・初任者研修・資格がない人に向けた求人案件を掲載しています。
また、介護の現場において非常に大切な存在である、看護職の求人案件も掲載。
これらの職の資格を持っているが、働いていない「潜在層」の人もターゲットにしていきます。潜在層の方の活躍が今後カギになってくると思っていますね。
――サービスの強みはなんですか?
私たちのサービスは、介護の専門職を必要とするような業務が対象になっていることが特徴です。
そのほかにも、単発で働けることや即日給料が受け取れること、時給を高く設定していること、相互評価が付けられることも強みになっています。
また、サービスの使いやすさも追求。全体のUI・UXにこだわるのはもちろん、地図サービスで探せるようになっています。
――カイテク株式会社の創業の経緯について教えてください。
大学では、ロボットを作っていました。研究室にこもっているような典型的な理系学生。原子力発電所で活躍するようなロボットを開発していましたね。老若男女を問わず使えるようなロボットを作りたかったんです。
新卒では富士ゼロックス株式会社に入社。開発を担当しました。いわゆる大企業だったのですが、面白くなくて(笑)。大企業特有の意思決定の遅さが自分に合わなかったんですよね。また、世の中にある課題を解決する事業や、ゼロイチでつくるような事業をしてみたいという想いがありました。
そこで、スタートアップの会社に転職したんです。
――スタートアップでは何を?
転職したスタートアップは、ウェブと人材を掛け合わせたサービスを提供していた企業。しかし、入社して早々に会社の状況が厳しくなってしまいます。早い段階で経営の難しさを知れたのはよかったです。
そこでエムスリー株式会社に転職。エムスリー株式会社はインターネットを利用した医療関連サービスの提供をしている会社です。大学時代の専攻がIT系だったこともあり、ずっとウェブやインターネットに興味がありました。
そこでは、エムスリーのメインサービスでもある「MR君」関連のサービスの企画や設計を担当。プラットフォームディレクターとして、サービスの責任者をしていました。エムスリーには3年間在籍しましたね。
――そこから福祉の領域に興味を持ったきっかけはなんだったのですか?
福祉の領域に興味を持ったきっかけは家族の原体験です。
私の祖父は起業家で、病院を作ったり、学校法人を立ち上げたりしていました。そんな元気だった祖父が認知症にかかり、介護状態になってしまった。さらに祖母も追いかけるように、介護施設に入所しました。長い間、介護施設にはお世話になりましたね。
そこで祖父を支えてくださった介護従事者の方々の姿に感銘を受けたんです。本当にすごいと思った。この体験がきっかけで、福祉の領域に興味を持つようになりました。
――CaiTasのサービスを立ち上げるきっかけを教えてください。
自分自身が福祉の業界に興味を持ってから、地域のボランティアに積極的に参加しました。一人暮らしの高齢者のお宅に伺い、電球を替えたり荷物を運んだりとお手伝いをしていたんです。
もっと深くこの業界を知りたいと思い、自分も介護職として現場に飛び込みました。デイサービスや特別養護老人ホーム、小規模多機能型施設など様々なところを見て回ったんです。
そこで思ったのは、やっぱり現場で働いている方々はすごいということ。自分には持っていない能力を持っている人がたくさんいました。
しかし、社会に目を向けると、介護職に対する評価は高くないですよね。業界について調べれば調べるほど、介護業界は崩壊してしまうのではないかと思いました。
介護業界は社会のインフラ。人生の最期を迎えるときに不幸だったら、それは本当に不幸なことですよね。介護業界は本当に大切なんです。
そんな社会のインフラともいうべき介護業界を支えられるような仕事をしたいと思いました。そこでまずは介護職に従事している方のサポートを開始。それが今のサービスのもとになっています。
――今後プロダクトはどんな進化をしていきますか?
私たちは、介護現場の方々の「最幸な出会いをココに。」というミッションを持っています。
今後は、施設だけでなく在宅にもサービスを提供していきたい。訪問看護・訪問介護の領域にも進出していきます。
在宅サービスでは、高齢者の家族がすぐにサポートを呼べるサービスを作ることを考えています。最初は事業所から介護者を送っていければなと。最終的にはCtoCで利用できるサービスの開発を目指しています。
――他に考えている進化を教えてください。
ウェブ上でITロボット製品の比較が簡単にできるようなプラットフォームも作りたいですね。最終的には、自社でITやロボットの開発まで取り組むことも考えています。
介護から医療に幅を広げ、サービス軸も増やしていきます。そして、最終的にはテクノロジーで介護や医療の領域にイノベーションを起こすことを目指します。
――会社のミッションを教えてください。
これから誰もが経験したことのないような高齢社会に日本は突入します。そんな中で私たちは「人類未踏の超高齢社会を誰もが安心して、楽しく、ワクワクする世界にする。」をミッションにしています。
現在、世の中の介護に対するイメージが良くないですよね。とくに20代・30代は特に介護業界に対するイメージがネガティブなモノになっている。
しかし、高齢社会の到来は避けようのない事実。誰もが安心して楽しい社会を実現するためには、介護業界で働く人がとても大事になってきます。
介護従事者の方々がやりがいをもって、楽しく仕事をしていけるように支援していきたいですね。人材不足問題の貢献になればと思っています。
――目指している社会について教えてください。
ワークシェアのサービスを使うことで、介護の総労働力を増やそうと思っています。総労働力とは、介護職員数、労働時間、労働効率の合計だと思っていて。それらの向上をすれば介護の総労働力は上がります。
介護職員数に対しては、潜在層の活躍の支援をします。労働時間の面では、空いた時間の有効活用ができるようにしていきます。労働効率の面では、業務を細分化して、効率的に仕事ができるようにしていきます。
これらの取り組みで介護の総労働力を上げることに貢献したいと考えています。
「人類未踏の超高齢化社会を誰もが安心して、楽しく、ワクワクする世界」を実現すべく、カイテク株式会社はさらに活躍の場を広げていく。
取材担当橋本
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