実力も人気もあるのに、音楽活動だけで安定した収入を得ることが難しいミュージシャンは決して少なくない。
合同会社ベステンダンクはアーティストとそのファンの繋がりを活動資金に変える会員制のSNSプラットフォーム「unitive(ユニティブ)」を開発した。
CEO
大浦勝也
――まずはunitiveというサービスについて教えてください。
unitiveのサービスを一言でいうと、アーティスト活動を支援するための会員制SNSプラットフォームです。アーティストとファンをつなぐ、いわゆるファンクラブ的なネットワークを作成できるプラットフォームとして活用できます。
アーティスト…といっても、主にミュージシャンを想定していますが、ファンがコンテンツを閲覧するために支払う会費をアーティストにバックするための仕組みを作っています。
一般ユーザーの登録は無料で、基本コンテンツのプロフィールやディスコグラフィー、動画、電子チケットの購入ができます。
また、月額300円で特定のアーティストのコミュニティメンバーになることができ、メンバーになるとライブ配信の視聴や限定チケット購入、限定動画の視聴、フィード閲覧といった限定コンテンツの閲覧ができるようになります。
この会費300円の半分をアーティストに還元します。ですから、twitterやinstagram、
facebookといったSNSの更新をするのと同じように、 unitiveでファンに対して情報発信をすることで一定の活動 費用を得ることができるんです
――アーティスト側にコストは発生しないんですか?
アーティストはシステム利用料を月額500円に設定しています。これは弊社としても苦渋の決断でしたが、しっかり運用してもらうという意味で有料にしています。
ただし、有料のメンバーを100人獲得したら、以後、利用料は永久に無料としました。また、サービスリリース(9月下旬~10月を予定)までに事前登録していただいたアーティストは最初から利用料は無料です。
先にも述べましたが、ファンの会費は50%の150円、ほかに、有料動画は設定価格の70%、電子チケットは100%をアーティストの取り分にしています。
チケットの価格を100%バックにすることで、システム利用料以外にアーティスト側のコストは一切発生しない仕組みです。
――すごいですね。サービス側の収益は大丈夫なんですか?
ギリギリで赤字にならないことは大前提に設計しています。なによりもアーティスト活動を支援するのが目的なので。
チケットについては購入者に手数料を負担いただく形としました。
――ターゲットとしているアーティストについて教えてください。
特定のカテゴリを狙っているつもりはありません。自分たちで音楽を作っている人なら、だれでも利用していただけます。
バンドでもソロシンガーでも、ラッパーでもトラックメーカーや作曲家でも、もちろん利用可能です。
あえて言うなら、それなりにファンから支持を受けているのに、音楽以外の仕事をしないと活動が継続できない人たちに活用してほしいと思っています。
――競合サービスはありますか?また、その競合サービスにはない強みとは?
似たようなプラットフォームを展開しているサービスはいくつか認識しています。
unitiveの特徴は、ミュージシャンをイメージしたサービス設計をしているところ、会費以外の収益ポイントを設けているところ、アプリとWebで同等の内容を提供しており、オフィシャルのホームページとしても利用が可能なところ、あとは、何よりもアーティスト活動を支援したいという気持ちでは絶対に負けていません。
――ミュージシャンに対する愛が溢れてますね!
他にもunitiveを通して、ミュージシャンがファンの情報を知ることができるのも強みですね。ミュージシャンと話をしていてわかったのは、ファンがどこにどれだけいるのかがわからず困っている人が多いこと。
特にインターネットがこれだけ発達した社会において、リアルにライブに訪れるファンがどこにいるのかが逆に見えにくくなっています。全国ツアーを企画するときに、適切なライブ会場の選定が難しいとのことでした。
unitiveは都道府県レベルですが、ファンの居住エリア情報を取得しているので、どの地域にどのくらいファンがいるかが把握できるようになります。このデータはツアーを組む時に大いに活用できますよね。
あともう一点、JASRAQとの包括契約を結んでいるので、カバー楽曲の動画販売も可能です。とにかくアーティストファーストという軸を最優先に開発を進めています。
――ファンにとっての強みはありますか?
特別なことではないですが、やっぱり好きなアーティストと近しいコミュニケーションがとれたら嬉しいですよね。それに対してできるだけハードルは下げようと思っています。
たとえば、最近はクレジットカード決済しか使えないサービスも多いですが、それでは学生を中心に、クレジットカードを利用できない層は好きなアーティストのファンクラブに入れない。
unitiveでは携帯のキャリア決済にも対応しています。電子チケットはコンビニ決済も利用できるようになっています。
また、unitiveをウェブとアプリの両方で使えるのもポイントです。できるだけユーザーの環境に合わせるようにしています。
合同会社ベステンダンクにおいて、unitiveは新機軸の事業で、現在の主たるサービスとしては「5万円からのRPA」を提供している。業務自動化を小規模、低予算から導入できる仕組みを作っている。
――もともとの業務であるRPAに取り組むようになるまでの経緯について教えてください。
もともと株式会社ガイアックスで8年間、webサービスのQAエンジニアをやっていました。そのスキルを活かして、副業でRPA事業を始めました。
その後独立して、フリーでRPAの事業に取り組んでいました。ただ、そこから、自社プロダクトを創りたいという想いが強くなったので、unitiveの開発を開始し、合同会社ベステンダンクを設立しました。
――unitiveを開発するまでにどんな経緯があったのでしょうか。
実は10年前までミュージシャンだったんです。バンドでドラムを担当していました。大学在学中にメジャーデビューして、アルバムも3枚リリースさせていただきました。
しかし、CDを出してもなかなかお金が入ってこない。音楽以外にもバイトをやっていないと生活が成り立たず、それこそ血を流しながら音楽活動をしているような感じでした。
当時から、ファンが定額で支援してくれるサービスがあったら活動しやすくなるのに、という考えはありましたね。あとは、自分のことだけでなく、音楽業界に対して課題を感じていたのもunitive開発のきっかけです。
最近の日本は、音楽業界のソフトの市場規模がどんどん縮小してきています。そのため、音楽ビジネスが成功しづらく、誰もやりたがらない・続けたがらないような業界になってしまいました。このような音楽業界を何とかしたいと思ったんです。
そこで自分が持っている知見や時代の変化を逆手に取ってアーティストが活動しやすい世の中を作ろうと思い立ちました。音楽への恩返しをしたいという気持ちも込めて、unitiveのサービスを開始したんです。
――unitiveは今後どんな進化をしていきますか?
現役のアーティストからは「海外から来られる方の対応をしたい」という要望を多くいただきました。海外から来たファンがチケットを買いづらいんです。
そのため、unitiveも海外ユーザーの利用を想定した多言語対応を考えています。それが逆に、海外で活動しているアーティストへの利用促進にもなると考えています。他にも、ファンユーザーのデータを活用して、全国でunitive主催のライブイベントやフェスも行っていきたいです。
グッズなど物販もアーティストの収益になるので、EC機能の追加もしていきたい。アーティストそれぞれのやり方に合うことを、アーティストが自分たちで作れるようなサポートをしていきたいです。
――他に考えている展望はありますか?
今、夏フェスはYoutubeでライブ配信をするようになりましたよね。unitiveも映像や音声のクオリティが高いライブ配信サービスにして、参加したユーザーに最高の体験をしていただきたいと思っています。草の根レベルでライブ配信が見られるようになれば、業界の新人発掘にも使えるようになりますよね。
事務所・レーベル事業・音楽ライセンス事業など、できることがあれば広げていきたいです。現在は、フリーで活動するアーティストの負担が大きい。そのため、ディレクションなどの役割を担えるようにもなりたいと考えています。
――目指している世界について教えてください。
実現したいのは、音楽産業に新たなお金の流れを作り、それを文化として根付かせていくことです。
もっとアーティスト個人が音楽活動をやりやすい世の中にしたい。
そして、大ヒット作がなくても長く音楽活動ができるようにしたいです。このようなアーティストファーストの音楽業界にしていくために、今後も活動を続けていきます。
アーティストがより活躍できる社会に。合同会社ベステンダンクの進化は続く。
取材担当橋本
AIアクセラレーター、募集中。メンタリングを受けた人の感想はこちらやこちら。
30分で取材
掲載無料
原稿確認OK