品質と生産性を両立の最適解とは「エッジAI」である。株式会社エイシングの独自技術に迫る。

エッジAIをご存知だろうか。

エッジAIとは従来のディープラーニングをはじめとするクラウド側で処理するAIに対して、エッジデバイス側に組み込んで利用するAIである。

自動運転や工場の機械、ロボットの予兆保全などの場面での活躍が期待されている。

しかし、現在のエッジAIには課題もある。それが、クラウドサーバー側で学習してエッジ側と通信する際に通信遅れが発生することだ。

この課題を”エッジAI”のプロフェッショナルとして、解決している企業がある。株式会社エイシングだ。

独自の技術で、従来のエッジAIの課題を解決している。

株式会社エイシングの独自技術は、既存のエッジAIにとどまらない。ディープバイナリーツリー(以下DBT)と呼ばれる機械学習アルゴリズムを開発している。

DBTとは、エッジへの組み込みを念頭に作られたアルゴリズムのこと。エッジ側の計算環境を高めるアプローチではなく、機械制御に特化して学習するデータを絞り、エッジ側での学習と予測を可能にしている。

今回は、株式会社エイシングの独自技術を深堀りしつつ、どんな企業なのか詳しく見ていきたい。

代表取締役/CEO プロフィール

出澤 純一

2004年早稲田大学ビジネスコンテスト「ワセダベンチャーゲート」最優秀賞。
2008年早稲田大学大学院理工学研究科精密機械工学専攻。修士卒業後は会社経営と並行しAIアルゴリズム研究も行う。
2016年12月株式会社エイシング 代表取締役CEO就任。

AISingの独自技術①「エッジAI技術」

――そもそも、従来のエッジAIとはどんな仕組みなのですか?

従来のエッジAIは、クラウドの上で学習済みのネットワークを、デバイスに移して機能していました。

このエッジAIの課題は、瞬時の対応ができない点です。

従来のエッジAIはデバイスの予測器の条件が変わった時に、再学習する必要があります。この時、再度クラウド上にデータを戻す必要があるんです。

再学習するたびにクラウド上に戻していると、5Gの回線でも遅れが出てしまいます。この少しの遅れが自動運転車やドローンにとっては命取りです。

このような課題を解決するためには、デバイス側の高速処理が必要になります。

しかし、デバイスに高価なGPUを積むわけにはいきません。そのため、今までのエッジAIではソリューションとして課題が大きかったんです。

――AISingのエッジAIはどんなものなんですか?

AISingのエッジAIは、GPUを使いません。マイコンやCPUで動かせます。ラズパイレベルのCPUやマイコンで、マイクロ秒単位の学習や予測もできるようになっているんです。

しかもネット環境も必要ありません。これらをできるエッジAIは少なくなっていますね。

――他に強みはありますか?

弊社のエッジAIの強みは、4点あります。

まず、クラウド側と通信していませんので、リアルタイム性が保証できる点です。

2点目は精度が高いこと。従来のエッジAIと同程度の精度を保つことに成功しています。

3点目は、弊社のエッジAIはオンタイムでストリーミング学習できる点です。ネット環境がなくても、環境に応じて、学習を積み重ねていくことができます。

最後に、説明可能なAIである点です。製造業でAIを活用する際には、安全性を証明する必要があります。弊社の技術は、ホワイトボックスになっていますので、理論上説明できます。

これらすべてを実現しているのは、AISingのサービスしかありません。

AISingの独自技術②「ディープバイナリーツリー(DBT)」

――ディープバイナリーツリー(DBT)はどんな技術ですか?

DBTは情報工学と統計学を組み合わせた技術です。

そもそもDBTが生まれたのは、私を含めAISingのメンバーが機械工学部出身であることに背景があります。

私はもともとロボットの研究室にいたんですよね。そこで、ロボットの関節を制御するなどのAIを研究していました。機械制御だけでなく、AIを知っているのが、私たちのチームの強みです。

AIを開発している方々は情報工学の出身が多く、機械制御について詳しい人は少ないんです。反対に、機械制御を専門としている人が、AIについて知っている人も珍しい。

AIと機械制御の両方の知識を持っているという強みを生かして開発したのが、DBTになります。

――DBTの強みについて教えてください。

DBTの強みは、ストリーミング学習や掛け捨て学習ができる点です。

掛け捨て学習が可能なため、データを大量に保持する必要はありません。その場その場のデータを使って学習し、その結果を反映していくだけで、どんどん賢くなっていきます。

――機械自身がどんどん賢くなっていく仕組みは、本当にすごいですね!

他にもDBTの強みとして軽量・安価なデバイスでも稼働ができる点があります。

なぜこのことが実現できるのかというと、DBTがシンプルな作りをしているからなんですね。計算構造が簡単なため、高性能なデバイスを必要としません。

そもそも、GPUなどが必要になるのは、並列計算が必要になるからです。ディープラーニングを行う際には、並列学習が必要です。既存のアルゴリズムを使うと、どうしても並列学習が必要になります。

一方、我々のDBTは単一構造で計算をしています。直列計算だけで学習できるアルゴリズムを開発したんです。

このため、GPUが必要なく、普通のマイコンでも使えるようなアルゴリズムになっています。

――DBTはシンプルな作りをしているとのことでしたが、精度に問題があるのではないですか?

たしかに、単一木構造ではアンサンブル学習(※)ができません。

しかし、DBTでは1個の計算式だけで、アンサンブル学習と同じ精度まで高めることを実現しました。

このように学習の精度は保ちつつ、計算コストを抑えることで省メモリー化を達成したサービスは、今まで少なかったんです。

シンプルな計算式で、安全性と精度を保てています。

※アンサンブル学習…別々の学習機として学習させたものを融合させることで、未学習のデータに対しての予測能力を向上させるための学習手法のこと。

――他に強みはありますか?

組み込みや実装に強いのも強みになっていますね。

機械制御の場面で、AIの技術を組み込むのは非常に難しくなっています。

というのも、エンベデットシステム(※)という専門の知識が必要だからなんですね。この知見がないと、なかなか組み込みが難しい。しかし、エンベデットシステムは一朝一夕にはマスターできない技術です。

弊社には、その組込技術のスペシャリストがいます。その点も強みになっていますね。

※エンベデットシステム…、家電製品や産業機器などに搭載された、特定の機能を実現するためのコンピュータシステムの総称

AISingの独自技術が活用されるビジネスシーンとは?

――AISingはどんなビジネスシーンで使われているのですか?

弊社の技術は、個体差補正を得意としています。そのため、機械の経年劣化への対応やFAラインの効率化などのビジネスシーンで活用いただいていますね。

他にも予測精度の場面で活用できます。具体的には、ビルの空調制御のモデル制御やドローンの予測制御の実証実験などを行いました。

他にも電車のブレーキの異常点検や、新幹線の水で雪を解かすためのモデルベースを作ることにも取り組んでいます。

大手ゼネコン様とも仕事をさせていただいたことがあって、トンネルを掘るシールドマシンの制御にも弊社の技術をご活用いただきました。

――さまざまなシーンで活用されていますね!

我々はアルゴリズムとその使い方だけを提供しています。その使い方はAIリテラシーのない人でも理解できるものです。

AIエンジニアを必要とせず、ユーザー様の側でカスタマイズするのが可能になっています。しかもアルゴリズムを導入していただければ、数千万円のロスを10分の1にできた実績もあります。

これは、ビジネス間の横展開や現場への導入が非常に簡単になっていることを意味しています。

――なぜ、ビジネス間の横展開や現場の導入が簡単なのですか?

弊社の技術構造がシンプルだからです。

ほとんどお客さん側でアルゴリズムをいじる必要はありません。計算の階層数などを何パターンか試して、できるようになればそれで実装することができます。

品質と生産性の両立を目指す

――AISingの技術はビジネスにおいて、どんな活躍をするのですか?

弊社の技術を使って、品質と生産性の両立を実現しています。

製造業では、「生産性と品質の両立」が非常に大きな課題です。それを弊社のソリューションで実現します。生産性か品質を選ぶのではなく、高い生産性と高い品質のどちらも実現したい。

機械自身がその場で学習し賢くなっていく技術を発達させていくことで、さまざまな課題に対応できるようになりたいです。

ビジコンで優勝。卸売業への挑戦…。AISingがAI事業に乗り出したきっかけとは?

――起業するまでの経緯を教えてください。

大学では、ワセダベンチャーゲートビジネスコンテストの初代優勝者になりました。それから10年以上くすぶっていましたけれど(笑)

当時は、傘のシェアリングサービスを提供していましたね。傘の広告モデルを実現しようと思ったんです。しかし、当時はまだガラケーの時代。さまざまな課題があり、ビジネスとして成功させることはできませんでした。

それから研究室に配属になり、AIを研究することになりました。大学院1年のときに、AIベンチャーの会社を立ち上げたんです。

しかし、当時はAIの冬の時代。非常に厳しい状況でしたね。AIの事業も中断することになりました。その後、就活をして内定もいただいていました。

しかし、それも内定辞退をさせていただきました。事業もなにもないのに起業継続したわけです。

――起業してからどんな経緯があったのですか?

さまざまな苦闘を経て、5年ぐらいで今とは全く違う事業が軌道に乗りました。それは、大手量販店に家電や日用品を卸す事業で、最終的には年商2億円を達成できました。

この事業が軌道に乗ったことで、新しいビジネスにも挑戦。プラズマの医療機器の開発を始めたんです。これは国の指定研究にも指定してもらって、今も進めています。

――AIのサービス取り組み始めたきっかけはなんだったのですか?

AIブーム再興のニオイがし始めたことがきっかけになっています。

アルファ碁などで、AIブームが復活の兆しを見せ始めていました。そこでAIの事業を仕込み始めたんです。

ある程度事業構想が固まった時に、日本総合研究所主催の「未来2017」ピッチコンテストに挑戦しました。最終ラウンドまで勝ち進み、出資の話を頂くことになったのですが、卸売りの会社に出資するのには課題があって…(笑)

そこで、依然やっていた卸売りの会社からAI事業をスピンアウトしました。そしてできたのが今のAISingです。

AISingの技術は、進化を続ける。

――AISing今後の展望について教えてください。

現在のお客様は、マニュファクチャリング系の製造業のお客様が多くなっています。

そのため、少々技術の導入に時間がかかってしまうんですよね。そのため、今後3年は今のお客様の成熟を待つような形になると思います。

3年後には、ライセンスビジネスとして成功例を示せるようになればうれしいですね。

――他に考えていることはありますか?

現在、DBT以外のアルゴリズムを開発中です。

実は、世界的大手企業でもエッジAIの新しいアルゴリズムを作るには至っていません。

それに対して、我々はファンダメンタルなまったく新しいアルゴリズムを作ることが得意としています。

そのため、アルゴリズムをどんどん開発していき、ライセンスとしていきたい。さまざまな課題の解決ができるようになりたいですね。

――新しいアルゴリズムをどんどん生み出していくんですね!

そのほかにも、エッジデバイスとクラウドの連携も進めています。

今は、デバイスだけではまだまだ賢くありません。多くのデバイスが集まることで、賢いものを開発できると思うんです。デバイスを集め、集合知的なサービスを目指していきたい。

集合知を実現できれば、元データが必要なく圧縮したデータをアップロードするだけで、自然に賢くなっていくような超効率的なAIを作っていけると思っています。

生産性と品質の両立へ―。

――目指しているミッションについて教えてください。

私たちは、機械自身を賢くして、社会全体の効率化を実現したい。

そして、「生産性と品質の両立」を達成することをミッションとしています。

生産性と品質のバランスを取るだけでなく、どちらも上げていきたい。いろいろな業界に適用できるサービスを作っていきたいですね。

生産性と品質のいいとこどりでさらなる効率を!AISingは進化を続ける。

編集後記

取材担当橋本
「生産性と品質の両立」は「馬車から車へ」レベルのパラダイムシフトであると感じました…!時代を大きくする変えるサービスに出会ってしまったかもしれません。

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