現在、ブロックチェーンや暗号資産の技術が、実サービスで使えるものは少ない。
そのため、ブロックチェーンの技術は幻滅期にあると言われている。メディアとしても不信感が高いように取り扱われている現状だ。
しかしブロックチェーンや暗号資産の技術は、実際に使ってみると非常に便利。ビジネスに活用できる部分もたくさんある。
今回はそんなブロックチェーンの技術を、新興国との貿易に応用したサービスを紹介したい。 株式会社STANDAGE(スタンデージ)が開発・運営を手掛けるShakeHandsContract(略称:SHC)だ。
SHCは現在の新興国との貿易における課題を解決できるサービスである。
現在新興国との貿易には、
などの課題がある。
これらの課題を、 SHCはブロックチェーンの技術を活用することで解決する。
どんなサービスなのだろうか。詳しく見ていこう。
代表取締役社長(CEO)
足立 彰紀
――SHCについて教えてください
SHCは一言でいうと、「貿易のための決済や契約を、ブロックチェーン・暗号資産で行うための貿易総合プラットフォーム」です。
大きく分けて機能は三つあります。
一つ目が、 ペイメントの機能です。特にエスクロー(※)に特徴があります。
二つ目が、ファイナンスの機能です。貿易をする時には、商品を仕入れる資金が必要です。そこでデジタル通貨をベースにした融資スキームを確立しました。このスキームは日本初です。
最後に、バイヤーさんとセラーさんをマッチングするマーケットプレイスを提供しています。
この三つの機能を統合して、総合的な貿易プラットフォームを提供しています。
※エスクロー…取引において買い手と売り手の間に第三者やサービスが介在し、代金と商品の安全な交換を保証するサービス
――まず、 ペイメントの機能について教えてください
ペイメントの機能では、暗号資産やブロックチェーンの技術を基盤とした、貿易用のデジタル金庫を実現しました。
この機能により、非常に安い国際送金手数料を実現。実際の送金手数料は0.7%になります。
また暗号資産を使えば、新興国とのやり取りも確実なものにできます。
――そこまで手数料を安くできるんですか?
現在、海外に送金するためには、多数のコルレス銀行が介在しています。そのため、一つ一つの銀行に手数料を払わなければならず、多くの金額を払わなければならなかったのです。
お金を預けてリリースするまで、複雑で高額、かつ非効率な海外送金の状況にありました。
しかし暗号資産を使えば、直接やり取りができるようになるので、送金の手数料をほぼなくすことができます。
これにより、安い手数料を実現しているのです。
――ファイナンスの機能について教えてください
ファイナンスはデジタル通貨を担保に融資を受けることができるサービスです。
例えば、バイヤーさんがエスクローに商品代金を入金したとします。この時、中小企業のセラーさんは、納品するまで商品代金を受け取れませんでした。
しかし私たちのサービスを使えば、エスクローにデジタル通貨が入っていることを担保に、仕入れのための資金を金融機関から借りられる仕組みを整えました。
このスキームは日本初となっています。
――マーケットプレイスの機能について教えてください。
SHCのマーケットプレイスは、B to Bのマッチングプラットフォームです。
このサービスは中小企業さんの実際の声から生まれました。中小企業の多くは、新興国と貿易をするためのリソース(経験、人員)がない場合が多く、言語の壁もあります。
SHCのマーケットプレイスでは、ただ、B to Bのビジネスをマッチングするだけでなく、貿易をサポートするコンシェルジュのマッチングも行います。メーカー様に変わって、製品のリスティングや現地での営業サポート・英語での交渉、海外出張時のアテンドなどを必要なサポートサービスを提供できるようにしています。
――エスクローの信用性は大丈夫なのでしょうか。
エスクローは私たちが管理しているわけではなく、バイヤーさんとセラーさんが共同で管理するブロックチェーン上にある金庫のようなシステムです。
SHCのエスクローでは条件に基づいて、送金されます。その条件を満たせなかった場合、この金庫に入金された資金はバイヤーに返金されるようになっているんです。
取引中、入金された資金はイーサリアムというブロックチェーンからつくられた金庫に保管されています。この資金は我々が勝手に取り出すことはできません。
そのため、例えば私たちが潰れてしまった場合でも、エスクローされた暗号資産がなくなることはありません。
このようにブロックチェーン技術で信用性を担保したサービスになっています。スタートアップ企業のような信用性の低い企業でも、ブロックチェーン技術を活用することで、安心して貿易をすることができます。
――暗号資産だと価格変動が起きてしまうのではないですか?
SHCの決済で主に使用するのは、ステーブルコインと呼ばれる通貨です。
ステーブルコインは価格変動がドルなどの法定通貨と連動している通貨になります。そのため大きな価格変動が起こりづらい通貨になっているんです。
また、暗号資産に詳しい法律事務所に法務面での監修をしていただいており、金融庁からも本スキームにおいて許可を頂いています。
使用するステーブルコインも裏付け資産が担保されているサービスです。
――ハッキングされる危険性はないのですか?
2009年にビットコインのブロックチェーンが生まれてから今まで、ビットコイン、イーサリアムといった実用性の高いブロックチェーンはこれまで一度も、クラッキングされたことはありません。
過去に暗号資産が流通してしまった事例は、金庫の鍵(銀行口座におけるパスワードのようなもの)が盗まれたことが原因でした。つまり、金庫自体がクラッキングされたわけではありません。
そこで、私たちは鍵を複数作り、もし鍵をひとつだけ盗まれたとしても、開けられないようにセキュリティを担保しています。
このようにハッキングされる危険性も低いサービスになっています。
――強みについて教えてください。
我々はこれまで実際に貿易ビジネスを何百例も行ってきました。そうした、ビジネスの最前線で培われたニーズを基に開発されたブロックチェーンサービスであることが、大きな強みです。
――他に強みはありますか。
メンバーの泥臭さと根性はどこにも負けません。
また、新興国現地で使ってもらうために、毎月ナイジェリアに行っています。システムをつくりながら、お客様のもとに足を運んでどんなサービスが欲しいかディスカッションし、お客様のニーズにあわせてシステムをつねに修正します。
このように現場感が強いことや泥臭さがあることも強みになっていますね。
システムの開発が遅れて営業員の手が空いてきたら、他の商品を営業して開発費を稼いでくるという、自分達の食いぶちは自分達で稼ぐ野武士文化があるのも弊社の強みです。
――会社を立ち上げた経緯について教えてください。
私たちが会社を立ち上げたのは、2017年3月です。
前職は、伊藤忠商事に勤めていました。新卒からずっと国際貿易に従事していました。
そこで感じたのは、新興国と貿易をする時に、既存の金融インフラだとサービスを提供できない新興国があったり、企業が存在しているということでした。
特に中小企業はこの課題に直面していました。
――それからSHCを開発するきっかけはなんだったのですか?
2015年にビットコインに出会いました。
当時は怪しいという印象もありましたが、実際につかってみるとデータが価値を持って、ブロックチェーンというネットワークを通じて世界中とやりとりができる、革命的な技術だと思いました。暗号資産を使えばもっと簡単に早く新興国と直接やり取りができると確信しました。
これがSHCを開発する大きなきっかけになっています。
――SHCの今後の展望について教えてください。
現在はファイナンスの部分に力を入れています。エスクローに入っているお金をベースにして融資を行い、中小企業の国際貿易を活性化させます。
今後、ユーザー様が増えて、実績やデータがさらに溜まってくれば、買い手の信用も可視化できると思っています。
買い手側と売り手側の信用のスコアリングをすることで、さらに安心して貿易を進めていけるようにしていきたいですね。
――ミッションについて教えてください。
私たちは革新的なビジネスの創造を通じて、世界のすべての地域を豊かにしたいと思っています。
今までアフリカや東南アジアにはインフラがなかったのでビジネスの機会がありませんでした。しかし、世界のあらゆる場所がビジネスフィールドであるはずです。したがって、この現状を是正し、新しい経済圏と文化を作っていきたいと思っています。
SHCについて詳しく知りたい方は、ぜひサイトをチェックしてみて欲しい。
取材担当橋本
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