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インタビュー 2020.02.21

虫のポテンシャルを最大限に発揮し、食べやすい昆虫食を!――株式会社昆虫食のentomo「いもむしゴロゴロカレー」

昆虫食には偏見がある。そのため、メディアなどでの取り上げられ方も、パフォーマンスになりがちだ。

たとえば、罰ゲームとして昆虫を食べるといった扱われかたをすることが多い。

そんな現状から脱却し、昆虫をひとつの食材として扱うべく「いもむしゴロゴロカレー」が開発された。開発したのは、株式会社昆虫食のentomoだ。

なぜ、いもむしごろごろカレーを開発したのだろうか。開発までの経緯とは?代表の松井氏から話を聞いた。

プロフィール

代表取締役
松井崇

大阪生まれ。慶應義塾大学理工学部電子工学科卒。4年前まで昆虫食に強い偏見があったが、体を壊したことを機に始めた糖質制限(農耕以前の古代食)で体調が回復。古代食の実践・研究の過程で、昆虫食が高タンパク質・低糖質でミネラルと食物繊維が豊富で、古代から食べられてきたスーパーフードだと知ったことから昆虫食の研究を開始。伝統的な昆虫食を現代の技術で「昆虫食2.0」にアップデートし、日本と世界により豊かな食文化と栄養価が高い「肉」を広めたくて昆虫食の輸入・製造・販売会社のentomoを創業。昆虫食の国際会議(IFW2018)や日本昆虫学会での共同発表、事業構想大学院大学での講演、メディア掲載など実績多数。

虫にはポテンシャルがある。「いもむしごろごろカレー」とは?

――なぜいもむしを食材として使おうと思ったのですか?

いもむしに食材としてのポテンシャルを感じたからです。

当社の扱っている芋虫は、シアバターで知られるシアの木の葉っぱを食べているいもむしです。日本名がないため「シアワーム」と名付けました。

いもむしと聞くと柔らかいというイメージがあるかもしれません。しかし、シアワームは皮が硬く、ビーフジャーキーのように噛みごたえがあります。

そのため、素揚げにすると、かりんとうのような食感になるんです。また、長時間煮込んでも形が崩れません。ぷりぷりとした食感を楽しむことができるんです。

シアワームは食感を楽しみたい茹でもの料理やカレーで味わうのに適しています。

――いもむしの栄養面での特徴について教えてください。

はい。いもむしは栄養面にも強みがあります。

まず、いもむしは6割がタンパク質で構成されています、そのため、肉と比べると3~4倍のたんぱく質が含まれていることもあるんです。

他にもミネラルや鉄分、オメガ3も多く含まれています。

昆虫には、ゴボウ並みの食物繊維が含まれ、さまざまな栄養素を摂取できるんです

――なぜいもむしの形を残したままの調理法をしているのですか?パウダーにするなどの調理法はしないのですか?

いもむしごろごろカレーでは、あえていもむしの形を残しています。

たしかに、昆虫を粉末にしてクッキーなどに加工するのは、昆虫食の第一歩としては優れています。私たちも、当初はクッキーを提供していました。大阪万博誘致イベントにて、8000個を配布し、お客様からは好評でした。

しかし、これは昆虫の食材としてのポテンシャルを活かせていないと思ったんです。

昆虫そのものの味を広めることが、重要だと思っています。

いもむしごろごろカレーに使われているシアワーム。
乾物状態でニオイはかつお節に近い。

――なぜ数ある調理法の中から「カレー」を選んだのですか?

昆虫特有の味もカレーに入れると減らせます。 これは「海軍カレー」をヒントにしました。

日本では明治維新まで肉食禁止令がだされるなど、長らく「肉=ゲテモノ」でした。食べ慣れていない肉は、生臭くて食べにくかったそうです。

そんな肉食文化が日本で広がったきっかけは「海軍カレー」だったのです。 日清戦争や日露戦争に従軍した人達が、海軍カレーで肉おいしさに気づき、その後日本でも肉文化が広がった歴史があります。

同様に、いもむしもカレーの力を借りれば、広げられるのではないかと思いました。

芋虫特有の味は慣れないうちは、違和感になるかもしれません。しかし、文化として定着すれば昆虫特有の美味しさになります。その文化になるための第一歩として、カレーは大変優れた調理法です。

いもむしごろごろカレー

――なるほど。いもむしごろごろカレーの特徴は他にありますか?

はい。私たちが扱っているいもむしはフェアトレードで、西アフリカから輸入したものです。現地生産者から直接買い付けています。

そのため、西アフリカの経済発展に寄与しています。

それだけではありません。

いもむしの採集に従事している多くは女性です。そのため、女性の地位向上にも貢献できます。

これらの取り組みにより、今話題のSDGsにも合致しています。実際に、当社のSDGs達成に向けた取組みとSDGs宣言は、外務省のホームページに、SDGs貢献にコミットする日本国内の企業の一例として紹介されています。

「食べやすい昆虫食を広めたい」そんな想いからいもむしごろごろカレーは生まれた。

――いもむしゴロゴロカレーを開発した経緯について教えてください。

私は最初から昆虫が好きだったわけではありません。むしろ苦手でした。

それから昆虫食に取り組み始めたのは、あるきっかけがあったんです。

そのきっかけは、私自身が体調を崩した時のことでした。健康について知るべく、ビーガンやローフードなどさまざまな健康療法を試したんです。

その中でもっとも効果があったのが、糖質制限でした。

――糖質制限から昆虫食に行き着くまでにはどんな経緯があったのですか?

糖質制限が、農耕文化以前の狩猟採集時代の食生活が理論の土台となっていること、昆虫は高タンパク・低糖質で狩猟時代から肉や木の実とともに食べられてきたことを知りました。

そこで昆虫食のことを少し調べたものの、当時の昆虫食の扱われ方はエンターテイメント的なものばかりで昆虫食への偏見が逆に強まり、「昆虫食はちょっと無いなー」という結論に。その代わり、厳格な糖質制限食や、狩猟採集時代に近い食生活を実践しました。

人類は肉食と火の使用で、脳を進化させてきたので、人類は雑食ですが肉食寄りです。そこで、食生活も肉食動物に近づけました。

例えば基本的に1日1食で、肉は毎日1kg前後。更に、狩猟採集時代は毎日食べられるとは限らないので、定期的(週に1回か2週間に1回)は断食(ファスティング)を実行。

肉食動物は空腹時(断食中)に狩りをするので、それにならって、断食中は特にハードな筋トレをしました。また肉食動物は「食い溜め」をするので、週1回の「チートデイ」を設定しました。一見、現代の栄養学の観点では滅茶苦茶かもしれませんが、学生時代に体育会で運動していた時よりも、筋肉量が増えました。

ただ体脂肪が薄くなりすぎて秋が近づくと冷えやすくなり、自転車など固い椅子に座るとお尻が痛くなるなど、不便を感じることが増えてきました。そこで野生動物や狩猟採集時代の人類の秋から冬の食生活を調べてみることに。

野生動物は冬を超すために、秋から冬にかけて脂肪を蓄え、体毛を増やします。縄文時代の日本人は、例えば夏は魚を、秋は木の実を蓄え、冬は狩猟と、春夏秋冬、季節によって食べ物が変わります。

そこで人類が、魚や肉類と比べて「恵みの秋」の食べ物が太りやすいのは、脂肪をつけて冬を越して生き延びやすくなるためだと推測して実践。秋から冬にかけては、ナッツ類の量を増やすなど「逆ダイエット」をし、体脂肪率を12%(体重72kg)くらいまで増やしたところ、冬でも過ごしやすくなりました。

このような試行錯誤を2年ほど続けた結果、健康診断や血液検査などで要注意だったのが良好状態に改善。血管年齢は10代になり、体の中から健康になり、狩猟採集時代の食生活の効果を実感しました。 (※entomo創業後は製品開発のため、飲食店巡りや食べ歩きをするようになったので、以前の食生活は難しくなりました)

またこの時期、理想的なタンパク源を追い求め、大豆などの植物性タンパク質が肉の代わりになるかを自分で検証しました。まず業務用の30kg袋の大豆を購入し、納豆(自分で発酵)など色々な大豆料理にチャレンジしました。

しかし大豆はアクが非常に強いためか、アク抜きを繰り返しても、納豆などの発酵食品か、市販の豆腐以外は体質に合いませんでした。

大豆以外の植物性タンパク質の候補として、大豆には劣るが比較的高タンパク質なナッツ類で肉の代わりになるか検証するため、様々なナッツ類や豆類を各10kg単位で購入し、自分で試してみました。

その結果、タンパク質の「量」は栄養学上は十分で、満腹になったとしても、何故か肉の満足感にはどうしても負ける。また、菜食主義の弊害の調査データも知り、肉は植物で置き換えることができないという結論に達しました。

そこで、理想的な肉は何かを考え始めた時に、一度はチャレンジを放棄した昆虫食を思い出しました。

今度は昆虫食の学術的な本で調べた所、「昆虫は栄養豊富で昔から漢方として使用」「現在も世界中で食べられている」「アフリカやアジアでは昆虫は肉より高価な高級食材」「生物的にエビと大差ない」ということを知り、昆虫食への認識が「ゲテモノ」から「食材」に少しづつ変わっていきました。

そして昆虫食に挑戦しました。

――最初の昆虫を食べた時のエピソードについて教えてください。

はい。私はイナゴの佃煮と蜂の子が初めての昆虫食でした。
 
最初それらの料理を見た時、本能が拒絶しましたね(笑)一口目を食べるのに30分かかりましたが、2口目以降は普通に食べることができました。
 
そこでさまざまな昆虫食を試してみようとしたのですが、伝統的な昆虫食は佃煮がメインで製品のバリエーションが少ないんです。また、蜂の子や海外産の昆虫食も松坂牛並みに高価。そのため、昆虫を肉や魚と同じ感覚で「おかずの一品」として日常的に食べるのが難しくなってしまっています。
 
この状況をなんとかしたいと思うようになりました。そして、食べやすい昆虫食を広めたいと思い、entomoを創業しました。

――日本で昆虫食文化は広まるのでしょうか…?

実は、日本でも、数十年前までは昆虫を食べていたんですよ。

大正8年の「食用及薬用昆虫に関する調査」によると、全国で55種類の昆虫が食材として扱われていたそうです。漢方としても123種類が扱われていました。このように昆虫は日本の歴史にも馴染み深いものなんです。

また、いもむしからは出汁も出ます。日本は出汁文化ですので、日本食との相性も良いのではないかと考えています。

日本文化だからこそ、いもむしのポテンシャルを活かせると思っていますね。

「昆虫食を未来食に。昆虫食2.0にアップデートする」

――今後のプロダクトの展望について教えてください。

今後は商品のラインナップを増やしていこうと思っています。

カレー以外の商品を開発していきたいですね。スナックなど、気軽に食べられる商品の開発を目指しています。

他にもいもむし以外も扱っていく予定です。

――他に考えている展望はありますか?

日本で昆虫の養殖も進めていきたいと思っております。 より効率的な養殖システムを目指して、現在、実証試験中です。

ピザとクッキーの試作品
全て昆虫が使用されている。

――ミッションについて教えてください。

私たちのミッションは、「昆虫食を未来食に。昆虫食2.0にアップデートする」です。

今までの伝統的な従来の昆虫食を1.0とすると、私たちが作る料理は「昆虫食2.0」としていきたい。 そして、食文化も豊かにしていきたいと思っています。

――昆虫食2.0への進化を考えているのですね!

現在、代表的な昆虫食は佃煮ぐらいしかありません。これは昆虫は腐敗しやすいため、保存食として佃煮にしていました。

しかし、現在は様々な食品加工や保存技術があり、佃煮以外にも様々な昆虫食が開発できるようになりました。 肉や魚は冷凍保存技術の発達する以前は、腐敗防止のため干魚など流通方法が限られていました。

しかし現在では肉や魚は、海外産のものであっても、近くのスーパーで新鮮な状態で購入することができます。また、現在の食品加工技術を使うことで、江戸時代では実現できないような美味しくて安い肉や魚の加工食品が流通されています。

昆虫も肉や魚と同じように、現在の食品加工技術によって、美味しくて安い様々な製品を開発できるようになると思います。

昆虫食は新たな食文化となりえるか。気になった方は、サイトもチェックしてみてほしい。

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編集後記

取材担当橋本

取材前はいもむしに偏見がありましたが、お話を聞いていく中で「食べてみたい…!」と思うようになりました。今後の展開に期待しています!

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投稿者プロフィール

橋本 雅弘
橋本 雅弘
大学では社会福祉学を専攻。現在はStartupTimesのほか、日本最大級のAIメディア「AINOW」でも執筆。学生スタートアップ特化型アクセラレータープログラム「GAKUcelerator」でメンターを勤める。

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