PCが普及して20年以上経ち、現代では経営に関わる数値を表計算ソフトで管理するのが主流だ。表計算ソフトの登場で、経営管理にかかるコストはかなり減った。
しかし、各部署や拠点ごとに表計算ソフトでまとめた数値をメールやチャットツールによって送受信すれば、未だに経営管理には大きなコストがかかる。
経営に関わる数値をクラウド上に集めて全社員で管理することで、企業の経営管理にかかるコストを減らし、業績向上の基盤を構築できるサービスがある。株式会社ログラスが開発運営を手掛ける”Loglass”だ。
Loglassは企業の経営に関わる数値の管理だけでなく、経営分析や他分野のツールとの連携も視野に入れる。どんなサービスなのか。株式会社ログラス代表取締役CEOの布川友也さんに話を聞いた。
株式会社ログラス代表取締役CEO
布川友也
ーーサービスを一言でいうと?
経営企画部向けのGitHubだと思っていただければわかりやすいと思います。
店舗や部署ごとの予算や売り上げなどの現場が管理する数値を経営側と手作業で共有している企業は多いと思います。Loglassは、これを自動化するサービスです。表計算ソフトで管理する現場の数値をクラウドに集めて、アカウントを持つ人がアクセスできる環境をつくります。
経営側は現場の数値をリアルタイムで把握し、現場は経営側に業績に対するアプローチを提案することが容易なため、社員全員がデータ分析を行う環境をつくることができます。
ーーどんな企業に向けたサービスですか?
規模は様々ですが、主に100名以上、売上規模で10億円以上の企業を対象にしています。業種は主に人材系・IT系・商社系、多店舗展開をしている企業を対象にしています。まずは、経営に関する数値管理の作業コストがかかる業種の企業にサービスを提供していきたいです。
その次の段階としては、経営分析機能の搭載を考えています。ログラスはマイクロソフト社がグローバルで提供しているスタートアッププログラムであるMicrosoft for Startupsの承認を受けており、マイクロソフト社と技術的連携をすることが可能です。Loglassでは、マイクロソフト社が提供するBIツールであるPowerBIを製品内部へ導入することによって、企業に蓄積された情報の解析を自由に行うことができます。この機能は2020年夏頃までに実装する予定です。
ーー競合サービスはありますか?それとの違いは?
競合サービスは国内外に複数ありますが、これらは各社が独自開発した疑似表計算ソフトを利用して管理するケースが多いです。一方で、Loglassでは、クラウドにデータを集めた後にExcelなどの既存のツールを、ユーザーにとっては、他サービスよりも既存業務との親和性が高いといえます。加えて、近年一気に利用が拡大しているGoogleスプレッドシートと連携した経営管理サービスはLoglassだけで(2020年3月現在)、これは圧倒的な差別化に繋がるのではないかと考えています。
また、Loglassは日本企業の予算抽出の仕組みに合わせてして開発されていることが特徴です。日本企業では、経営陣と現場のトップダウンとボトムアップのすり合わせによって予算を決定します。比較的トップダウンで予算を策定する米国企業を想定したサービスよりも、日本企業にとって利便性が高くなるように設計されています。
ーーなぜ起業したのですか?
大学時代にスタートアップの立上げに関わった時に、企業としての生き残りをかけた経営の充実感を知ったことがきっかけです。中学時代に恩師であった部活の顧問が突然亡くなったことをきっかけに、自分が死ぬときに誇りを持てる人生にしようと決めていたのもあって、「自分で新しい価値を出せる事業を創ることができれば後悔のない人生が歩めるかも知れない」と考えるようになりました。最終的に、100個以上のビジネスアイデアから現在のサービスまで絞ることになります。
ーーこのサービスを始めた経緯を教えてください。
2016年末、ある企業で過重労働で自殺してしまった従業員が出てしまった事件がニュースになってから、私が当時勤めていた金融系の会社も残業時間を減らすために動きました。非効率な作業を見直して省いていけば、残業時間を半分にしても一定の収益性は維持できることに気がついたのです。
そこから、働く人たちを非効率な作業の繰り返しから救うためにToBのサービスを立ち上げる決意をしました。
ーーこのサービスの今後は?
Loglassをまずは特定業種に利用してもらい一定のデータを集め、徐々に複雑な組織や業態にサービスが対応できるように開発を進めていきたいと考えています。将来的には、業種・業態を選ばずに利用して頂けるようにサービスを進化させていきます。
ーー目指す世界はありますか?
会社が事業に使うと決めた「予算」という”ものさし”をもっと自由に活用できる世界を目指しています。営業部や人事部といった他領域のツールとも連携して、各部署の予算に対する支出の大きさがリアルタイムで可視化できれば、予算オーバーの防止やより大きな投資の意思決定が可能になります。
既にSalesforceとの連携を計画していて、総務省とNICT主催の起業家万博では、Salesforce.com賞を受賞しました。今後も、他領域のツールとの連携を模索していきたいと思っています。
株式会社ログラスが気になった方は、以下のリンクまで。
編集後記
取材担当佐野
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