画像認識や自律制御…AIの登場で自動運転技術は近年大きく発展している。自動車への導入が期待されているこの技術だが、注目すべきは自動車への活用だけではない。
株式会社Marine Xは、水上モビリティにおける操船支援システムや自律航行システムを開発し、マリンレジャーを楽しむ全ての人に、海の上での優雅な体験を届ける。
コミュニケーション・ロボット「ロビ」などの開発に携わってきた木村裕人さんは、これからの発展が期待される水上モビリティの自動運転に注目し、この企業を立ち上げた。将来的に目指すのは、全ての船舶が安全に航行するためのプラットフォームの実現だ。
どんな企業なのか。詳しく見ていこう。
株式会社Marine X 代表取締役社長
木村裕人
ーーどんなサービスを提供していますか?
技術開発をメインとするマリンテック事業と、プレジャーボートの企画開発を行う水上モビリティ事業の2つに分けられますね。
ーーマリンテック事業について詳しく教えてください。
主に小型船舶を対象に、操船支援システムと自律航行システムを開発しています。
操船者に求められる技術をテクノロジーで代行するという、自動車のADAS(先進運転支援システム)と似たアプローチ方法で研究を進めています。現在は、第一弾として画像認識AIを活用した船外監視システムを開発中です。実用化されれば、操船者の「目視」の負担が減り、他船や障害物の見落としなどに起因する事故を大幅に減らすことができるでしょう。
自律航行システムは、操船技術の多くを代行する技術です。プレジャーボート や漁船など、小型船舶が関わる海難事故の約65%は船外の見張り不足や操船ミスなど、人が関わることで起きているものなのです。このシステムを普及させることで、人為的ミスが原因で起こるすべての事故の回避を目指します。
ーー水上モビリティ事業についてもお願いします。
マリンテック事業で開発した技術を自社開発のクルーザーに搭載し、新しい水上モビリティとして世の中に提案していく事業です。画像認識AIを使った船外監視システムなどの先進技術を搭載した、高級クルーザーの開発を進めており、2020年秋の販売開始を予定しています。
ーー企業としての強みはどこにありますか?
ロボット開発の経験が豊富なメンバーを中心としたスタートアップとして、船舶業界にロボティクスやAIの知見を持ち込み、応用することができるところです。既存の技術を効率的に活用することで、企画から開発、実現までをハイスピードで行えます。創業は2019年ですが、2020年秋には新しいクルーザーと操船支援システムの発表を行う予定です。
弊社と同様に小型船舶の技術開発を行っている会社が日本で少ないのは、海という特殊な環境における技術的な難しさが影響していると考えられます。風や波、うねりなど、陸上にはない外乱の影響などを考慮した、制御のノウハウの蓄積も必要です。スタートアップとしての強みを生かし、業界のパイオニアを目指したいですね。
ーー起業の経緯を教えてください。
自動車やドローンなど、「陸」と「空」のモビリティの自動運転技術の開発は盛り上がっているのに、「海」のモビリティ、特に小型船舶に関する技術開発にはほとんどプレイヤーがいないことに気づいたのが起業のきっかけです。
特に、安全性や快適性の面では自動車や他の業界に大きく遅れをとっていると感じました。そこで、今までロボット業界で培ってきたノウハウを持ち込むことで船舶業界を大きく変革できるのではと考え、ロボットクリエイターの高橋智隆を始めとして、ロボット業界で実績のあるメンバーと共にMarine Xを立ち上げ、現在に至ります。
ーーこのサービスの今後は?
まずは操船支援システムの開発を進め、部分的自律制御から自律航行船まで、プロダクトのステップアップをしていきます。将来的に目指したいのは、蓄積した航行データをもとにした、船舶が安全に航行するためのプラットフォームの実現です。
国内だけでなく、できるだけ早いタイミングで海外の巨大なマーケットにも進出し、水上モビリティ業界全体のテクノロジーをアップデートしたいと思っています。
ーー最終的な目標を教えてください。
弊社のミッション「海の上で優雅なひとときを。」の達成です。水上モビリティの安全性と快適性を高める技術を提供し、マリンレジャーが好きな全ての人に、これまでよりも楽しい時間を水上で過ごしてもらうことを目指します。弊社のサービスを通して、マリンレジャーが好きな人を増やしていけたらいいですね。
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