株式会社BaaSが提供する「FLAT TALK(フラットトーク)」は、管理者が立てたスレッドに従業員が匿名で意見を書き込むことができる社内掲示板ツールだ。
代表取締役の土井竜也さんは、本業としている転職支援の仕事で、本音を言えない職場環境に不満を感じて転職を決める人が多いことを課題に感じ、それを解決するために同社を立ち上げた。サービスの提供を通じて、すべての人が自分らしく働ける社会の実現を目指すそうだ。
「FLAT TALK」とはどんなサービスなのか。詳しく見ていこう。
株式会社BaaS 代表取締役
土井竜也
兵庫県出身、1988年1月7日生まれ。
2010年関西学院大学社会学部卒業。池田泉州銀行へ入行。三菱UFJ銀行への出向を経て、現職のリクルートキャリアに入社。
兼業にて2019年9月20日に株式会社BaaS設立。
ーー「FLAT TALK」を一言でいうと?
経営層と従業員の間で本音によるフラットなコミュニケーションを実現させることで従業員エンゲージメントを高める、完全匿名の社内掲示板です。
ーーどんな場面での利用を想定していますか?
議論が必要なあらゆる場面で使うことができます。例えば、社内会議でなかなか本音が出てこない際には、スレッドを立てて気兼ねなく議論していただけます。
また、新入社員の方が現場に配属された時です。新入社員の方のオンボーディングがなかなかうまくいかない理由に、誰に聞いたらいいか分からなかったり、先輩に気を遣って質問しづらいことがあるからです。
実名アカウントで議論する既存のチャットツールではハードルが高いことも、匿名であることで気軽に発言できるので、議論の活性化に繋がると考えています。
ーーサービスの利用方法を教えてください。
管理者の方が聞きたいことや議論したい内容をスレッドに立て、従業員及び管理者が匿名で投稿を連ねていきます。
利用者のIDはスレッドごとに変更されます。同じIDを使い回すと個人特定の跡追いができてしまい、利用者の心理的安全性が下がってしまうからです。ただ、スレッドごとに任意でニックネームの設定ができるようになっているので、実名で議論に参加することもできます。
また、共感度を定量的に測るために「イイね機能」をつけています。これにより、意見がどのくらいの人の共感を得ているのかを知ることができるでしょう。
ーー掲示板への「荒らし行為」の心配は?
基本的に社内での掲示板は荒れにくいと考えております。匿名とは言え、秩序立っている会社でのツールであるため、建設的な議論の場になるでしょう。別プロダクトのengagementも含め導入企業で荒れたことはありません。
しかし、万が一に備え、あらかじめNGワードを設定しています。企業ごとに個別の設定も可能です。
また、FLAT TALKでは、スレッド作成の権限を管理者にしか渡していません。業務に関係のないスレッドが乱立し、炎上する可能性を抑えられます。
ーー競合サービスはありますか?
社内用チャットツールが類似サービスになってきますが、サービスの提供を通じて目指す方向性が異なると考えております。
匿名性が弊社サービスの最大の差別化ポイントであり、それを生かして本音での議論を実現させたいです。
ーー改めてサービスを利用するメリットを教えていただけますか。
経営層が社員の本音を聞き、彼らのエンゲージメントを高められることです。
経営側が抱える悩みとして、従業員が退職する理由がわからなかったり、彼らの本音を聞けなかったりすることがあります。もし彼らが社内で言えない不満を外部の口コミサイトに書いてしまうと、会社のブランディングにも影響が出てしまうでしょう。
そうなる前に社内で意見を回収できれば、従業員の満足度と会社としての価値の向上に繋げることができるのです。
ーー従業員側のメリットはいかがでしょう。
会社に対して本音を言えるようになることです。
私は兼業でこの仕事をしているので、サラリーマンでもあるのですが、本音を言えないことによる無駄や生産性の低下が相当発生しているように感じます。
現場では誰も本音を言えないという現実を変えれば、誰もが働きやすい職場になると考えています。これは経営側のメリットにも通ずるところですね。
ーー従業員の本音をしっかり拾うことができれば、飲食チェーン等で導入されている外部のモニターに頼る必要も無くなりそうですね。
そうなんです。心理的安全性が相当高くなければ実名で本音を話すことは難しいので、外部の会社から斡旋された方でも本音は話しにくいと思います。そういった意味では、このサービスを利用したほうが外部モニターに頼るよりも従業員の本音を聞くことができ、業務効率の向上にも繋がるのではないでしょうか。
ーーなぜこのサービスを始めようとしたのですか?
本業である転職支援の仕事を通じて、会社への不満や意見を持っていながら、それを聞いてもらえないまま会社から離れてしまう人が多いことを知り、社内で従業員が本音を言える環境の必要性を感じたからです。
退職する人には心理的負担が伴いますし、会社には新しく人材を採用するコストが何百万とかかります。せっかく採用して教育してもまた辞めて、また採用するという無限の繰り返しを止め、従業員の本音を聞いて対策を打てる環境を整えるべきだと考え、このプロダクトを作りました。
ーー転職相談に来られる方々はやはり、会社に対して持つ不満が大きいのでしょうか。
転職支援の企業紹介や従業員の方の面談などを月に40人〜50人ほどしているのですが、社内での不安や不満が転職を希望する理由の大部分を占めていると感じます。「不満のない転職は存在しない」と言われているほどです。
なぜそれが発生してしまうのかと言うと、従業員が社内で本音を言えないからなんです。上司に本音を言えなかったり、言ったとしても会社は何もしてくれないと諦めているのかもしれないですね。
従業員の方々は、不満を解決して欲しいと言うより、ただ本音を聞いて欲しいのだと思います。
意見の全てを実行する必要はなくて、一旦意見を集めて、実行すべきかどうかを判断し、それぞれの理由をきちんと説明することが求められていると感じます。実行できない理由があるなら、それをきちんと開示することが必要だと考えます。
ーーなるほど。従業員の方々は双方向のコミュニケーションを取ることを望んでいらっしゃるのですね。
そうですね。全ての問題を解決して欲しい訳ではなく、本音を聞いて欲しいというのが一番にあると思います。
ーーこのサービスの今後は?
今は社内での使用を想定していますが、将来的には採用のシーンでのFLAT TALKの使用も視野に入れていきたいです。
建前で会話が進んでしまいがちな就活の現場でも、企業と就活生の間で相互理解が深まらずにミスマッチが起きてしまっています。
実名では聞きにくいことや、企業のプラス面だけでなくマイナス面も聞ける環境を作ることができれば、採用された方は安心して入社できますし、企業への信頼度も増すと思います。従業員の定着にも繋がるでしょう。
ーー目指す世界観、ビジョンを教えてください。
「すべての人が”自分らしく働ける”社会」を目指しています。
自分らしく働けるというのは、本音を言えることを意味します。学生の時はそうではなかったのに、会社に入った途端に自分らしさを失ったり、本音を言えないことによって自分を押し殺して働いている人が多いように感じます。
一部の場面ではそういう部分も必要だと思いますが、あまりにもそれが大きすぎて弊害を生んでいるというのが今の社会に対して感じることです。このままでは生産性は下がり続ける一方であると思います。
従業員が本音を言える環境を作ることで、企業をあるべき姿にもう一度戻していきたいと考えております。
「FLAT TALK」が気になった方は、以下のリンクまで。
取材させていただけるスタートアップ、募集中。詳しくはこちら。
AIアクセラレーター、募集中。メンタリングを受けた人の感想はこちらやこちら。
30分で取材
掲載無料
原稿確認OK