株式会社Mediiが提供する「E-コンサル®︎」は、地方病院、医師向けの専門医シェアリングサービスだ。このサービスを導入すれば、専門医が不足している地方の病院でも、総合病院にいる専門医の知見を借りた医療を提供することができる。
代表取締役医師の山田裕揮さんは、リウマチ膠原病の専門医でありながら、自身が免疫疾患の難病をもつ患者でもある。一人で地元の地域医療への貢献をと専門医になったが、一人で戻ってもできることは限られ、同じような地域はたくさんあるため課題解決にはならない。医師と患者の立場から感じた地域医療の専門医不足を解決するため、同サービスを立ち上げた。
「E-コンサル」とはどんなサービスなのか。詳しく見ていこう。
1989年生まれ和歌山県出身。日本リウマチ学会専門医、日本内科学会認定内科医。自身も免疫難病患者である。和歌山県立医科大学卒業後、聖路加国際病院、慶應義塾大学病院等を経て課題を抱える地域医療現場の仕組みを変えることを志し, 株式会社Mediiを創業。
株式会社Medii 代表取締役医師
山田 裕揮
ーー「E-コンサル」を一言でいうと?
感染症内科、膠原病内科、血液内科、神経内科をはじめとした地域医療で不足しがちな専門医の病院間シェアリングサービスです。
ーーどんな方がサービスを利用していますか?
主に地域医療に従事している医師ですね。離島の診療所から地域の中核病院まで、幅広い規模の病院でご利用いただいています。
ーーサービスについて具体的に教えてください。
E-コンサルは、ウェブやアプリでご利用いただくサービスです。利用する医師の方はサービス内のチャットや通話の機能を使い、専門医からのコンサルティングを受けながら診療を進めることができます。
感染症内科などの全国的に数百人しか居ない専門医からアドバイスを求める「院内コンサル」は、専門医が多数在籍する総合病院では当たり前に行われています。しかし、医師の絶対数が少ない地域の病院では、すべての科の専門医がいない場合が多く、院内コンサルを実施できていない現状があります。そこで、院内コンサルではなく「院外コンサル」として、専門医の視点を求めるプラットフォームとなるのが、このサービスなのです。
日本国内32万人の医師の中で、私が専門としているリウマチ膠原病内科の専門医は日本国内に約1000人しかいません。専門医のいない病院では、適切なタイミングで転院させることができなかったり、転院させてもその大きい病院では何も対応できないために患者が片道数時間かけて「元の病院でまた診てもらってください」と5分の診察で返されてしまうケースも実際にはあります。今までは、大学の先輩後輩や勤務先が一緒だった先生などに専門の先生がいれば相談していました。しかし、そのような横のつながりには限りがありますし、いくら知り合いでも何度も相談することには気を遣うこともあるでしょう。
E-コンサルと協力関係を結んでいる専門医の数は完全承認制で約300名を超えています。これはほとんどの医療分野をカバーできる人数で、大きなクラウドホスピタルを想像していただければわかりやすいと思います。費用は利用する医師本人ではなく、地域病院や自治体に負担していただくようにしています。
ーーサービスを利用するメリットを教えてください。
例えば、プロ野球選手にはピッチャーやキャッチャーがいて、ピッチャーの中でも先発抑えなど色々な専門性があるので、そのすべてをできる人はいません。医療業界も同様に、すべての分野に最新知見まで精通して詳しい医師は中々居ないです。それでも、自らの専門分野以外の領域について相談できる仕組みがあれば、近くに専門医がいない地域医療の現場でも、患者さんにとってより最適な医療サービスを提供できるでしょう。
ーー競合サービスはありますか?
医師同士をつなぐサービスでICU領域をされているT-ICUさんはありますが、救急ICU領域の急性期疾患がメインであるのに対して、むしろ私たちは慢性的な特殊な内科系疾患を専門にしており、協業が可能な領域だと思っています。海外には似たような仕組みの会社は出てきていますが、国内では私たちが初めてで病院向けの特殊な内科の専門医を集めたプラットフォームは他にないと思います。
ーー類似サービスが出てくる可能性はあると思います。どんな特徴を差別化点にしていきますか?
東京大学工学部和泉・坂地研究室と組んでいるAI技術の導入が挙げられます。翻訳などにも用いられているテキストマイニングという技術は、約2年前からBERTが開発されたことにより格段に精度が上がりました。この技術で世界中の論文や確固たる先生方のコンサル情報をAIに深く学習させ、限りある専門医のリソースを技術に一部を置き換える取り組みを始めています。医療コンサルにおける専門的リソースを可能な限りAIに置き換える試みは、他ではなされていないことだと思います。
また、サービスに協力していただいている先生方は、完全紹介制・完全承認制で参加していただいた、とても優秀な方ばかりです。もともと専門としている方が少ない領域の先生方を集めているので、四隅に当たる先生方を取り囲ってしまっている側面もあります。このサービスに参加できていること自体が、今後は医師にとっても一つの付加価値となっていくと思います。
ーーコロナ前後でサービスを取り巻く環境に変化はありましたか?
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、地域の病院に専門医がいないという問題が一層浮き彫りになりました。E-コンサルのニーズは増加しています。
ーーサービスを始めた経緯を教えてください。
私はリウマチ膠原病という領域で専門医をしているのですが、難病患者でもあります。自己免疫疾患といって、感染症にかかった時に体の中に入ってきたウイルスをやっつけてくれる免疫細胞が間違って自分の体を攻撃してしまう病気です。このような難病は10万人に数人という一定の確率で発症し、完治はしません。
この病気に関する知見がある専門医は、出身地の和歌山にはまだ少なく、一人の患者として地域医療の課題を感じていました。地元に帰って専門医として働いても、問題の根本的解決にはなりません。同じように専門医不足に悩まされている地域は、全国各地同様にあるからです。「業界の仕組みを変えなければこの問題はずっと続く」と考え、臨床医として働きながら、E-コンサルの立ち上げに至りました。
ーーこのサービスの今後は?
現場の医師に寄り添ったシステムで、先生方にこのサービスの素晴らしさを感じていただけたらなと。院外コンサルという仕組みにAI技術を活用することは、他の人にはあまり真似できないことだと思います。3~5年後には、E-コンサルの存在を医療業界において当たり前なものとなり、医師リソースが物理的には限られる日本において今後は必要不可欠な存在になると信じています。
ーー目指す世界観を教えてください。
これまでの地域医療は、一人か数人の先生で支えられてきました。それは、患者さんにとっても仕方のないことだったとしても、専門医に診てもらいたいというニーズはあったはずです。国や自治体を含め、どの先生にも課題を解決したいという思いはあったのに、状況は改善されませんでした。
E-コンサルは数百名、これからは数千、数万という医師が在籍する「クラウドホスピタル」としての機能を果たすので、例え離島でも一人の先生がいれば、どんな専門医療も受けられるシステムを作ることができます。実際に導入いただいている離島の診療所の先生と患者さんたちからも感謝のお言葉をいただいております。海外でも、日本の先生の医療を受けたい患者さんの思いに応えることができるようになるでしょう。どこに住んでいても、すべての人がより良い医療を受けられる世界を実現したいですね。
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