新型コロナウイルスの流行も伴って、買取販売業界は大きな打撃を受けている。豊富な知識を必要とする店舗スタッフの人手不足、そして、外出自粛による店舗への客数減少…。
こういった課題を解決するため、とっておきのサービスがある。
株式会社エーエヌラボが提供する「かいとりロボ」だ。カメラで写真を撮るだけで、AIが対象を瞬時に認識し査定を行う。査定にかかるコストの削減につながるほか、店舗スタッフの人手不足も解消されるだろう。将来的には非接触での査定を可能にするそうだ。
代表取締役の大原健さんは、コロナ禍で大きく打撃を受けた買取業界からの依頼を受け、このサービスを立ち上げた。サービスの提供を通じて、流通の問題を解決する「一つの柱」になることを目指す。
「かいとりロボ」とはどんなサービスなのか。詳しく見ていこう。
株式会社エーエヌラボ 代表取締役
大原健
ーー「かいとりロボ」とはどんなサービスですか?
買い取り対象を画像で認識し、AIが査定するサービスです。
現在は買取店向けにサービスを展開しています。提供するスマホアプリを使っていただき、店舗スタッフが写真を撮ると商品の情報が出てくる仕組みです。
査定には、買取会社がもともと所有していたデータとインターネット上にあがっているデータの2種類を使用しています。
ーー利用するメリットを教えてください。
メリットは主に3つあります。
1つ目は、査定にかかる時間が短いことです。これまでは店舗スタッフが個人の知識を基に査定したり、インターネットで検索して査定するのが一般的でしたが、アイテム1つあたりに1~2分の時間がかかっていました。しかし、AIが作業を代替する「かいとりロボ」なら、5~10秒で査定することができます。実際にクライアントからも査定時間が大幅に減ったという声をいただいています。
2つ目は、人手不足の解消に貢献できることです。買取店では取り扱う商品は多岐にわたります。そのため、査定の知識を豊富に持つスタッフを育てなければならず、人材の育成に時間がかかり、人手不足につながっていました。このサービスを導入すれば、スタッフの育成にかかる時間やコストを大幅に減らし、業務効率化につなげることができます。
3つ目は、ネットで査定できることです。以前は店舗に査定して欲しい商品を持ち込むことが主流でしたが、新型コロナウイルスの流行に伴い、ユーザーは来店することに抵抗感があると思います。リモート査定にメリットを感じる方は、かなり多いのではないでしょうか。また、事前に査定額を知れることで自分の納得のいく査定につながるはずです。これはまだサービスとして始まっていませんが、構想として考えています。
ーー競合サービスはありますか?
海外・国内ともに類似サービスはあります。
ーー競合サービスとの差別化点を教えてください。
海外の類似サービスでは、写真を撮ると、対象物が混ざっている写真すべてが出てくる仕組みになっているため、1つ1つページを開いて確認する作業が必要です。また、一般的な画像処理サービスであり商品に特化したサービスではないため、我々のサービスよりも精度は劣ります。「かいとりロボ」は、ピンポイントで必要となる情報だけを提供できることを強みとしています。
国内の類似サービスは基本的に専門とする分野が違います。例えばブランド品に絞るサービス、商品のパッケージやタグを認識して査定するサービスがあります。主に中古品を対象としている弊社サービスの強みは、パッケージやタグがなくても査定できることです。
ーーなぜこのサービスを始めようとしたのですか?
私はもともと大学院で画像認識に関する研究をしていて、13年前に画像認識AIを中心にサービスを展開する会社を設立しました。このときは買取サービスを作ろうとはまったく思っていなくて。これまで10年ほどAR系のビジネス展開をしてきましたが、ARブームがこなかったので新しいことに挑戦しよう思い、去年まではホテルの写真の判定を行っていました。具体的には、ネットにアップロードされているホテルの写真は本当にそのホテルのものなのか判定するソリューションです。しかし、今年のコロナウイルス流行によって旅行業界が落ち込んでしまったので、違うことをしようと思い、「かいとりロボ」の立ち上げに至りました。
実は「かいとりロボ」のアイディアを出してくださったのは、買取店の方でした。彼らもコロナ禍によって人手不足に陥り、自動判定できるソリューションを探していて。そこで私たちが十数年研究・開発してきたソリューションと彼らのデータを組み合わせたところ、1~2週間でお互いの強みを活かせるものが出来上がったので急遽商品化しました。問い合わせをいただいたのが2・3月で、商品化したのが4月でした。買取店の業務に対して細かい部分を作り直せば良かったため、早いスピードでローンチすることができたんです。
ーーこのサービスの今後は?
小売りや流通業界にも展開し、今後は無人レジのAIをつくりたいと思っています。
商品を認識する際、基本的にはバーコードやRFIDが使用されていますが、単価が低い商品に関しては、それらを貼る行為にかかるコストの比重が大きくなってしまうのです。バーコードなしですと流通コストが下がり、人と人が接触する工程も省かれるため、感染防止対策などにも役立てられます。今はまだ無人レジに対して抵抗感がある方も少なくないと思いますが、このような社会情勢に配慮した動きが今後出てくると思うので、現在いろいろな実証実験や開発を行っています。
ーー目指す世界観を教えてください。
世の中に流通している商品のパッケージは、流通の都合で過剰な包装になってしまっていて、見た目がかっこよくないと感じています。ムダな工程を無しにして、すべての商品が画像ベースで流通できるようになれば、商品は本来の形で店頭に並ぶようになり、小さな会社や個人で運営しているような方たちの販売業務は、もう少し簡単になるのではないでしょうか。
これらを支える技術は我々だけではないと思いますが、流通の問題を解決するための「一つの柱」になりたいと思っています。
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