コロナで予定していた海外研修が中止になり、その代替案を探している学校は多いのではないだろうか。実際に渡航できないのであれば、オンラインで海外と繋げばいいじゃない!と思う人もいるかもしれないが、簡単なことではない。時差を考えて海外の学校と連絡を取り、それぞれの学校の教育カリキュラムを踏まえながら授業案を話し合うなどオンラインの国際交流を一から準備することは先生にとって骨の折れる作業だ。
しかし、そんな悩みを一手に引き受けてベストな解決策を提案してくれる会社がある。株式会社With The Worldだ。
同社が提供するのは、学校の先生の要望を元に事前学習から授業案までトータルで設計してくれるオンライン国際交流授業である。アジアを中心とした世界54カ国の提携校をもち、リアルタイムで世界の学生と意見交換をすることができるのが特徴だ。
代表取締役の五十嵐駿太さんは、世界中に教育を届けたいという思いから同社を立ち上げた。サービスの提供を通じて、世界の学生をオンラインで繋ぎ、それぞれの地域に対して行動を起こすリーダーの輩出を目指すそうだ。
株式会社With The Worldのサービスはどのようなものなのか。詳しく見ていこう。
株式会社With The World 代表取締役
五十嵐 駿太
ーー株式会社With The Worldの事業を一言でいうとどのようなサービスですか?
世界の同年代の学生をオンラインで繋ぎ、各国の社会問題をディスカッションできる授業を提供するサービスです。リアルタイムで国際交流することで、子供たちの語学や海外への興味関心を引き出します。また、各国が抱える課題や悩みを子供達自身で考え、議論し、解決に向けて取り組む姿勢を身につけられる授業を展開できるよう、授業設計を行なっています。
ーーどのような方がサービスを利用していますか?
海外研修がコロナで中止になり、学内で国際交流を継続させたいと思った学校に対して主にサービスを提供しています。オンラインを使って何かしたいと思っても、すでに部活動やクラス行事の予定が詰まっている先生にとって時間を新たに確保することは容易ではありません。そんな時、弊社にご連絡をいただければ私たちが海外校を探してマッチングをし、先生の想いを乗せたプログラムの構成からその後の生徒の学習効果レポートの作成までセットで国際交流の授業を提供します。
アジアやアフリカ、南米など世界54カ国に提携校があります。オンライン授業なので、安全面や手続きの関係で実際に渡航することが難しい国々との交流も可能です。ただ、ほとんどの学校が授業中に国際交流したいと考えるので時差の関係からアジアの学校と交流することが多いです。
ーー日本でこれまでにこのサービスを利用された方はどれくらいいらっしゃいますか?
2018年に起業してからこれまでに42校、1000人を超える生徒の方々がオンライン交流を経験しています。
ーー実際に授業を受けるまでの流れを教えてください。
まず、先生方にヒアリングを行い、そこで出たアイディアをもとに弊社が授業案を作成します。その後、先生からフィードバックをもらい、出来上がった授業案をもとに授業を行います。手間のかかる授業案の作成などを弊社が請け負うことで、先生の負担を最低限に抑えています。また、先生方の要望を受けてから授業を組み立てるため、学校によって内容が全く異なるオリジナルの授業になることも特徴です。
また、授業を受ける生徒のほとんどは語学力に自信がないことが多いので、事前学習のサポートも行っています。事前学習にも力を入れることで、オンライン国際交流までにワクワク感とコミュニケーションへの自信を高めることができます。
ーー実際の授業はどのように進んでいくのでしょうか。
最初はお互いの趣味の話などをしてアイスブレイクを行います。「相手を知りたい」「友達になりたい」という気持ちを掻き立てることは、オープンな国際交流の場づくりをするための第一歩です。このように段階的に国際交流を進めることで、社会課題についての議論や各国間のシビアな問題の話になっても、お互いを信頼した自由な意見交換ができる雰囲気作りに繋がります。
生徒たちの距離が縮まったところで、各国の社会課題についての議論に移ります。
まず、探究や総合の時間で学んできた各国の社会課題、例えば環境問題やジェンダー、教育格差などを発表し、そこから生まれた生徒視点の問いを議論のトピックとして挙げることも可能で、授業の延長線上で国際交流授業をコーディネートしていきます。学校のカリキュラムや先生のアイディアによって内容はさまざまですが、SDGsに関してのトピックが8割と多いです。発表の後、そのトピックに関して少人数のグループに分かれて生徒同士で自由に意見交換をします。
生徒たちの授業での学びと国際交流を繋げることで、生徒主体の探究や社会貢献への意識向上が期待できます。
ーー類似サービスとの差別化ポイントを教えてください。
弊社の提供する授業の強みは、国際交流の良さを生かした能動的な学びの実現です。
語学力や海外知見の向上に特化したテキスト型の教材やオンライン英会話などが類似サービスに当たります。
しかし、新型コロナウイルスの影響で中止された国際交流の代替として、新規でご連絡をいただく学校もあれば、上記のようなプログラムをすでに導入している学校が、更なる国際交流プログラムのアウトプットの場として取り入れるところも多くあります。弊社が提供する国際交流授業は「リアルタイム」かつ、「同年代」の世界各地の学生と意見交換することに特化し、インプット(事前学習や普段の学校の授業)とアウトプット(意見交換の場)どちらもの要素を兼ね備えている点が差別化ポイントと言えます。
ーー株式会社With The Worldの起業に至った経緯を教えてください。
With The Worldの起業に至ったのは、大学4年生の時に海外を渡り歩いて、子供たちにテニスを教えて回ったのがきっかけです。
大学時代は体育会系のテニス部に所属しており、毎日テニスコートに通う生活でした。しかし、大学四年生のある時、ふと電車の中で世界の貧困についての広告が目に留まったんです。「自分ってもしかして世界の貧困支援に興味があるのかも」と振り返ってみると、国際交流や貧困支援を特集したテレビ番組が好きで録画して何度も見返していたことに気がつきました。
そこで、自分も何かできないかと思い、ずっと続けてきたテニスを貧困地域に住んでいる子供達に教えることにしたんです。
所属していたテニス部を引退してからフィリピン、タイ、カンボジアなどを訪問し、全部で120人のスラム街の子供達にテニスを教えました。
特に印象に残っているのが、タイの孤児院での経験です。孤児院を離れる時、子供達がずらっと並んで「シュンタの夢が叶いますように」と涙を流しながらお祈りしてくれていたんです。本当に心が打たれました。その時に、彼らに教育を届けるために人生を捧げたいと思いました。
ではどうしたら多くの子供達に教育を届けることができるか考えた時に、学校に通っている子供達が何らかの事情で学校に通うことができていない子供達に教えている状況を思い出しました。そして、教育を受けている子供達が教育を受けられていない子供達に教育を提供して、お互いに学び合える空間を教育を通して作りたいと思い、この会社を立ち上げました。
—今までやってきた授業で印象に残った授業はありますか?
日本とインドとパキスタンの3カ国でディスカッションをしたことは強く印象に残っています。
インドとパキスタンは過去に争いが起きたり、今でも国境付近では対立意識が強かったりと、シビアな関係で知られています。しかし、生徒たちの間では「昔はいろいろなことがあったって歴史で学ぶけれど、僕たちは今を生きているからそんなこと関係ないよね」という話をしていたんです。
同年代を繋げることによって、平和な世界を創るリーダーを輩出することができる希望が見えた瞬間でした。
ーーこのサービスの今後は?
これからは、世界中の学校との提携を増やしながら、海外の学生と交流した学生がいろんな人を巻き込んで自分の地域に対して何か行動を起こせるようなプログラムの提供にも注力していきたいと考えています。
また、日本と海外の学校のプログラムだけでなく、海外の学校同士をつなぐことによってより広い地域での繋がりを作りたいです。特に、今は時差の関係で提携が少ないアフリカにも弊社サービスを通した教育を届けたいですね。
ーー目指す世界観を教えてください。
若い世代の繋がりを広め、深めることで平和で持続可能な世界を実現するためのリーダーを輩出し続けることです。
With The Worldのロゴは、5大陸をイメージした5人の子供達が手をつないでいるものです。文化の違う者同士が手を取り合い、平和で持続可能な世界を作るために協力していこうという願いが込められています。With The Worldを通して、国際交流を人と人の繋がりとして捉え、子供たちが世界平和への第一歩を踏み出すサポートをこれからも続けていきたいです。
そのために、With The Worldの授業が世界中の学校で当たり前に導入されることを目指し、成長していきたいと思います。
With The Worldのオンライン国際交流が気になった方は、以下のリンクまで。
取材させていただけるスタートアップ、募集中。詳しくはこちら。
AIアクセラレーター、募集中。メンタリングを受けた人の感想はこちらやこちら。
30分で取材
掲載無料
原稿確認OK