貸したお金が返ってこない。そんな経験をしたことがある人は多いのではないだろうか。個人間の小さなお金の貸し借りはもちろん、自営業をしている個人事業主同士では、何百万円単位で貸し借りが行われている。
あげるつもりで貸したとしても、期日までに返ってこないとコミュニケーションが取りづらい。しかし、契約書を結んでいないため、催促することも気が引けてしまう。そんな悩みを抱えている方に、ぴったりなサービスがある。
common株式会社が提供するクラウドサービス「common(コモン)」だ。無料で簡単に契約書を作ることができるほか、メールなどで返済期限を管理・通知することもできる。
代表取締役の石川毅志さんは、個人事業主の資金の問題と、資金繰りの危うさに課題を感じ、これらを同時に解決するため、同社を立ち上げた。サービスの提供を通じて、誰もがお金の心配をすることなく挑戦できる社会の実現を目指すそうだ。
「common」とはどんなサービスなのか。詳しく見ていこう。
common株式会社 代表取締役
石川毅志
ーー「common」とはどんなサービスでしょうか。
個人間のお金の貸し借りを無料で簡単に管理するサービスです。機能は主に4つです。
1.個人間でお金の貸し借りをする際に必要になる、金銭消費貸借契約が無料で簡単に作れます。
2.電子サインを使って契約書をオンラインで締結することができます。
3.万が一、返済遅延が発生したときのための督促状を、契約書データを使って簡単に書き、弊社が送付代行することができます。
4.お金の返済日はメールで自動的に配信されるので、期日管理がしやすいです。
ーーこのサービスのターゲットを教えてください。
20代、30代の中小企業の経営者をターゲットにしています。中小企業の経営者は大手企業と比べて、個人間のお金の貸し借りを頻繁に行います。債権債務の管理の煩わしさと、契約書を書かないことから約束事が曖昧になり、最終的にその契約がうやむやになってしまうことが多いです。
お金が期日通りに返ってこないと、やはり人間関係が悪化してしまいます。この悩みを解決するために、今回のサービスを作りました。
ーーサービスの使い方を教えてください。
まず、お金の貸し借りをすることになったら、必要項目を入力するだけで、約1分で契約書を作成できます。
電子サインを使いたい場合は、commonに新規登録をして使うことができます。契約相手のメールアドレスを入力すると、契約当事者に順番に電子サインのリンクが貼り付けてあるメールが配信されます。契約当事者は契約内容を確認してガイドに沿って簡単な手続きをします。契約当事者のすべての電子サイン完了後に、締結された契約書がダウンロードできるリンクが貼り付けているメールが配信されます。
ーー契約書締結の際は必ず電子サインを使うのでしょうか。
PDFでプリントアウトできるので、紙とハンコで契約することも可能です。ただ、書面での契約は郵送費や手間もかかりますし、印紙代もかかります。電子サインの方時間短縮かつ非接触型の手続きで全部済むので電子サインをお勧めします。
ーー返済までの流れを教えてください。
返済期日の1ヶ月前、2週間前、1週間前、3日前、当日に、弊社のシステムから期日を伝えるメールが届きます。期日まで時間がある時点でメールが届くので、余裕を持ってお金を借りた人に返済の進捗を確認することができます。
その後、約束日を過ぎても返済がない場合は、書面で督促状を送ることができます。契約書作成時にご入力いただいた情報があるので、追加で必要な情報を数カ所入力するだけで、督促状の下書きができます。送付に必要な手数料を決済していただくと、我々が督促状の送付を代行することができます。
ーー督促状の作成も御社にお願いすることはできますか?
催促を代行するのは法律上、弁護士しかできないため、督促状の作成を代行することはできません。
ただ、我々が用意したフォームの項目を埋めるだけで作成できるので、書状を一から準備することが難しくても大丈夫です。
ーー貸し借りの契約を結ぶ相手はアカウントを登録しなくても契約書を作ることができるのでしょうか?
はい。契約相手に関しては電子サインを用いるときのみ、メールアドレスを登録することになっています。電子サインを使わない場合は、メールアドレスの登録も必要ありません。
ーー利息は自分たちで設定できるのですか?
利息制限法という法律の範囲内で自由に設定できます。貸付元金が10万円以下の場合は年利20%まで、10万円から100万円の場合は年利18%まで、100万円以上の場合は年利15%までです。
個人間の貸付の場合、利息制限法を上回った利息をつけても罰せられるというわけではないのですが、我々は法律内で運用していただける方に使っていただきたいと思っています。利息制限法以上の利息をつけると、エラーが出て使えなくなりますのでご注意ください。
ーー有料プランには無料プランに比べてどんな違いがあるのですか?
無料プランでは、契約書を無料で作れるのが月1枚であるのに対し、有料プランでは無制限に作ることができます。また、契約相手にも期日管理メールが届くように設定できます。他にも、電子サインの使用が無料になり、督促状の代金も割引され、コストメリットのあるプランです。
ーー類似サービスはありますか?それとの違いを教えてください。
リーガルテックに特化したサービスは類似サービスに当たります。彼らは契約書のパターンを増やしていくことでお客さんを広範囲に集めていますが、我々はあくまでも個人間のお金の貸し借りに絞り込んで資金の流れを良くしたいと考えています。
また、個人のお金の貸し借りを活発化するために、お金を持っている人と投資家のマッチングをするソーシャルレンディングも弊社サービスに類似しているのですが、そういったサービスには法律などの障壁があり、現時点で完全なマッチングはできていないと考えております。
我々はオフラインで社会的繋がりのある人たち同士のお金を貸し借りを助けることに着目してサービスを組み立てることで、資金調達の悩みを解決しています。
ーー起業に至るまでの経緯を教えてください。
スマートフォンが開発され、不便だと思っていたことがかなり解消されるようになった2010年、私も世の中の不便なことを解決するサービスを開発したいと思っていた頃、仕事でベトナムに駐在することになったんです。
ベトナムは日本よりも大企業の数が少なく、優秀な人はどんどん独立します。現地で出来たエンジニアの友達もその一人で、エンジニアリングに関しては本当に優秀なのですが、独立する上で必要な資金繰りは苦手でお金に困っていました。
彼らが必要としているお金は、私からしたら出せない金額ではなかったため、資金格差の問題と、個人事業主や中小企業経営者の資金繰りの危うさを問題意識として感じました。
この2つの問題を一緒に解決できないかと考え、2017年に日本に帰国してから周りの経営者に聞き回りました。最初は資金需要者と投資家のマッチングを考えていたのですが、やはり色々な規制があって難しいことがわかりました。そこからさらに会社勤めしながら2年くらい考えて、今のビジネスモデルにたどり着き、起業に至りました。
ーーサービスを構築する上で大変だったことはありましたか?
私はエンジニアリングの知識がなかったので、サービスづくりやWebマーケティングのこともほとんど知りませんでした。ほぼゼロから勉強しながら開発するのは難しかったです。
ーー会社勤めをしながらビジネスモデルを考えて、勉強も一からして、すごいですね。そこまで起業への思いが強かったのですか。
前職も楽しかったんですよ。仕事も楽しいし仲間にも恵まれていたのですが、やはり根っこに自分でビジネスを立ち上げてみたいという思いがありました。また、このサービスモデルを思いついたときに、もしこのビジネスをやらずに60歳になったら、「なんであの時やらなかったんだ」と絶対今の自分を責めて後悔するだろうなと思いました。それだったら35歳の今やってみようと思ったんですよね。
ーーこのサービスの今後は?
まずは、このサービス規模を大きく強くして、いろんなユーザーにご利用いただきたいです。その上で、たとえば保険商品の開発やファクタリングなど、貸した人の元にお金がちゃんと返ってくる出口の開発していきたいです。
お金の貸し借りをする際の一番の困りごとは貸したお金が返ってこないことだと思います。逆にその解決方法は、貸したお金がちゃんと返ってくることなんですよね。
更には、借主の返済能力についても助言できるような、よりユーザーに安心してご利用いただけるサービスにしていきたいです。海外の展開も目指しています。
ーー目指す世界観を教えてください。
人によっては不便で危なかったり、怖いものになってしまうのが「お金」ではないでしょうか。commonの提供を通して、お金を安心安全、そして便利に使えるような社会を実現したいです。お金のせいで挑戦したくてもできない人がいる状況を解決したいですね。
「common」が気になった方は、以下のリンクまで。
現在、common株式会社では、採用活動を進めています。
サーバーサイドを中心として、全体に詳しいエンジニアを募集しています。
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