コワーキングスペースが増えてきている。このような現状で、コワーキングスペース同士の差別化は非常に難しい。
差別化のためにコワーキングスペースは「コミュニティ運営」に目をつけた。コミュニティマネージャーという役職を置き、より良いコミュニティの構築に尽力している。
しかし、この取り組みには上手くいっていない部分も多い。コミュニティマネージャーだけに情報が集中してしまうことや育成が難しいことなどの課題がある。
今回はそれらの問題を解決できるサービスを紹介したい。株式会社funky jumpのTAISY(タイシー)だ。1日に100人と会っても、1人目を思い出せるサービスを提供し、コワーキングスペースのコミュニティづくりに貢献しているのだという。
9月からベータ版がローンチされる予定の本サービス。どんなものなのだろうか。詳しく見ていこう。
代表取締役
青木雄太
東北大学農学研究科卒業後、2016年パナソニックに入社。住建分野における物流関連業務に従事。18年3月より株式会社ゼロワンブースターに参画。大手企業のオープンイノベーション、スタートアップ支援に取り組む、アクセラレータープログラムを担当。19年2月に株式会社funky jumpを創業。コワーキングスペース向けコミュニティ形成支援ツール、TAISYの開発に従事。Polar Bear Pitching 2019仙台予選グランプリ。 フィンランドにて行われた同本選でファイナリスト。
――株式会社funky jumpのサービスの「TAISY」について教えてください。
TAISYを一言でいうと、「1日に100人と会っても、1人目を思い出せるサービス」です。
話した内容をTwitterのように入力していくことができます。アカウントを共有している人同士で、だれが・いつ・何をしゃべったのか内容を共有できるようになっているんです。
この機能を通して、ちょっとした雑談や立ち話の内容でも、見える化して共有できるようになります。
――TAISYのユーザーについて教えてください。
メインのユーザーさんは、コワーキングスペースのコミュニティマネージャーさんを想定しています。
現在、個人の情報がコミュニティマネージャーの人だけに集中してしまっています。そのため、頭の中の情報をシェアして、よりコミュニケーションを円滑に進める手助けをします。
――競合について教えてください。
コワーキングスペース向けのサービスとしては、station株式会社さんの「station」を競合とよく言われます。しかし、実はカバー範囲が異なるので一緒にコワーキングスペースを盛り上げられる仲間と捉えています。
このサービスの場合は、出入りしている人を知ることができ、どんな人がいるかを把握できます。また、イベントだけいらっしゃった方でも登録されて、その中でマッチングをしたり、イベントの告知ができるようになっているサービスです。
その他にも勤怠管理に特化したキャップクラウド社のanyplaceというサービスもあります。どのサービスもファウンダーの方々と仲良くさせていただいているので実際仲間感があります。
――TAISYの強みについて教えてください。
私は間に人が入らないと、人はマッチングしないと思っています。そのため、サービスの間に人がいるというのは強みになっていますね。
こう思ったきっかけは、学生時代に社会学を研究していたことにあります。自分とピッタリであると思えば思うほど、理想と違ったときのがっかり度が高いことなどを知りました。
それはマッチングも同じで、上手なコミュニティマネージャーほど、人を適当につなぐんです。多少雑なマッチングの中でも意外な共通点があることで、良質なコミュニティが形成されることがあります。
このようなより良いマッチングをできるようにしていることが強みになっていますね。
――人が間に入ることで、マッチングをより良いものにしているんですね!
コミュニティマネージャーの育成もできるようにする予定です。コミュニティマネージャーの仕事は職人技で誰でもできるものではなく、育成も大変。
そこで、AIを利用したマッチングの提案をする機能を考えています。新人のコミュニティマネージャーの頑張ろうという気持ちを応援しつつ、うまくマッチングしやすい人達をレコメンドできる機能をつけていきたいですね。
――他にどんな強みがありますか?
現在、コワーキングスペースは、戦略なく運営されていることがあります。しかし、コミュニティには発達段階があって、その都度必要とされることは変わるんです。
このコミュニティ運営に関する内容をパッケージ化して、コミュニティマネージャーの育成に生かしていきたいと思っています。良い意味で「雑な」共通点を大事にしつつ、より良いコミュニティ実現のお手伝いをしていきたいと思っています。
――株式会社funky jumpを立ち上げた経緯について教えてください。
新卒では、パナソニックに入社しました。物流の部門を担当。
物流を仕事にしたのは、シリコンバレーに行ったことがきっかけになっています。
現地法人で社長をやっている方に「なぜ君は世界を主語にできないんだ」と言われたんです。そこで心動かされてしまって。日本で使っている技術を世界に売って使ってもらいたいと思うようになりました。
しかし、入社してからは、先が見えてしまったんですよね。出世のルートがわかってしまった。
このまま会社にいるよりも、自分でもっとチャレンジしたいと思うようになりました。そこから1年半ほど自分の事業について検討して株式会社funky jumpを立ち上げました。
――TAISYのサービスを立ち上げた経緯について教えてください。
人はひとりになってはいけないと思っています。というのも、自分自身が寂しくてしんどかった時期があり、この状態が進むと鬱になると実感したことがあったんです。
また、親族にシングルマザーがいるのも、コミュニティの重要性を実感したきっかけになっています。親族がその子供を寄ってたかって面倒を見ていたんですよね。子育て環境としてはすごく良かった。
これらの出来事から、コミュニティの力は本当に大切だということを実感しました。しかし、コミュニティは社会の合理性の中でうまくいっていない面もある。だからこそ、自分がコミュニティに関わる事業をしたいと思ったんです。
しかし、コミュニティ運営はソーシャルなビジネスなので、お金になりにくい。
そこで、自分が独立して仕事にしようと思ったのが、コワーキングスペースのコミュニティ・マネージャーだったんです。ソーシャルとビジネスの交点にコワーキングスペースがあると思いました。
そこで、TAISYのサービスの開発を決意しました。
――TAISYの展望について教えてください。
TAISYはコミュニティ戦略を立てられるようになりたいと思っています。
具体的には、コミュニティマネージャー同志を繋げる機能を作ることや、コワーキングスペース以外にもさまざまな場所で人とのつながりを作っていくことなどを考えています。
最終的には、コミュニティの総流通量を評価できるようにしていきたい。信頼をスコアで表すことで、さらに人を繋げられるようにしたいですね。
――どんな場所に活用範囲を広げていく予定ですか?
TAISYは顧客の情報を細かく・すぐに入れられることが特徴です。
そのため、保険や百貨店など立ち仕事からPCでCRMを開くまでの時間差が大きい業界で活用いただけると思いますね。
――TAISYのミッションについて教えてください。
人間は150人しか覚えられないと言われています。
その人数の上限はダンバー数と呼ばれ、人がコミュニティを構築できる限界の人数と考えられているんです。
しかし、もっと人のことを覚えることができたら、時代は進むのではないでしょうか。私は、TAISYのサービスを通して、人類の進化に貢献していきたいと思っています。
人間の限界と考えられているダンバー数を越える。TAISYは人間の進化に重大な道具となりえるかもしれない。
取材担当橋本
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