購買担当者の負担は大きい。査定が困難であったり、過去の類似品目の見積書が残っていなかったり、データの保管場所が散在していたりするためだ。
この課題に着目し、見積もりデータを一元管理することで、最適購買を実現しているサービスがある。A1A株式会社のRFQクラウドだ。
どんなサービスなのか。詳しく見ていこう。
松原 脩平
営業職とVC業務を経験した後にA1A株式会社を創業しました。プロダクトを通して世の中に価値とインパクトを提供していくべく、チーム全員で日々奮闘中です。
2009〜2013:慶應義塾大学法学部政治学科卒業
2013〜2016:株式会社キーエンス
2016〜2018:株式会社コロプラネクスト(ベンチャーキャピタル)
2018〜現在 :A1A株式会社創業
――RFQクラウドについて教えてください。
RFQクラウドは見積もりデータを一元管理し、原価低減のための足掛かりを構築します。最適購買を実現するサービスです。
見積書を同じフォーマットにそろえることで、過去のデータや類似データ、同業者間の比較が可能になっています。
――具体的にどんなサービスですか?
今まで、営業などのサプライヤーの方が見積もりを提出していました。しかし、受け取り手のバイヤー側にとっては見積書のフォーマットがバラバラで管理しづらい状況にあったんです。
この状況を解決するために、バイヤー視点で自分たちの指定したフォームで、見積もり依頼をを出せるようにしました。このように、買い手側がフォーマットを用意すれば、管理がより簡単になるんです。
バイヤーが用意した書式に対して、サプライヤーに見積を入力していただきます。そうすれば、バイヤーは同じフォームで見積もりが取れるようになり、過去の見積もりや類似の見積もりとの比較が簡単になるんです。
――ユーザーについて教えてください。
サービスを始めた当初は製造業のご利用が多くありました。しかし、最近は製造業以外の業界からもお引き合いをいただいていますね。
というのも、購買見積をとって査定している業界は、製造業にとどまらないからです。現在は製造業をメインターゲットとしていますが、今後サービスを広げていくことも考えています。
――競合のサービスについて教えてください。
SaaSの形式でバイヤー向けの見積管理を提供しているサービスは少ないです。
一方で競合するのは、SIer企業に「自社システム」として個別にカスタマイズを依頼するケースです。その場合競合するのは、発注システムを保有する国内大手システム会社さんや外資系ERPメーカーさんですね。
これらのサービスは柔軟なカスタマイズが可能である代わりに、利用する料金が高額である特徴があります。
――強みについて教えてください。
RFQクラウドは月間利用料金が15万円〜で、コスト面に大きな強みがあります。
また、発注の前段階に特化したサービスであることも強みですね。
他のメーカーさんは、「発注システム」がメインで、見積管理機能はあくまでサブ機能という扱いです。
そのため、新しいサービスを入れるとなると、完全にそのサービスをリプレイスしなければならなくなってしまうんです。
RFQクラウドはお客様が今のサービスを使ったまま、見積もりの部分だけ自動化できるようになっています。発注の前段階だけをシステム化できることが強みです。
また、取引に関するデータを蓄積することもできますので、コストのデータベースも作っていくことができます。今後さまざまな展開に活用可能です。
――A1A株式会社の立ち上げのきっかけはなんだったのですか?
子供のころから、夢はサッカー選手か社長になることでした。サッカー選手になる夢は途中で厳しくなってしまったため、会社を作ろうと思っていたんです。
そこで、大学4年で人材エージェントのヘッドハンターをインターンで経験しました。そこから営業力が必要であることを痛感し、営業が強そうな会社へ就職しました。
それが、 株式会社キーエンスだったんです。
―― 株式会社キーエンスでは、どんなことに取り組んでいたのですか?
キーエンスでは中部地方の自動車関連メーカー向けの営業を担当しました。
ここでは、一つの会社が複数の工場を持っていることが多くあって。それぞれの工場に営業で回っていたんです。この時、同じ製品でも工場ごとに違った価格で購買担当者が調達をしていたことに気づいたんです。同じ会社にも関わらず、一物一価が徹底されていないのが当たり前だったんですよね。
当時は意識していませんでしたが、利益率が重要になってくる製造業において、購入金額の1%の積み重ねは大きなものになります。
ここでの経験や想いが、RFQクラウド開発のきっかけになっていますね。
その後、VCに就職しました。スタートアップに関することを学び、A1A株式会社を設立しました。
――RFQクラウド開発までの流れについて教えてください。
RFQクラウドを開発する前に、およそ100人にインタビューしました。
そこでの課題は、見積明細が取得できていないために査定が困難であることでした。
他にも、過去の見積もりが残っていないことや、見積プロセスの業務負荷が大きいために価格妥当性や原価低減の判断が難しいことが課題として挙げられていました。
これらの課題を解決するために見積フォーマットを統一し、価格妥当性の判断ができるプロダクトが必要だと思ったんです。そこで、RFQクラウドを開発しました。
――今後、RFQクラウドはどんな風に進化していきますか?
私たちは、取引コストが下がった世界を目指しています。取引コストは探索・交渉・監視コストで構成されています。
現在、ToCのサービスは、探索コストが低くなっていますよね。Amazonなどのサービスを使って検索すれば、欲しい商品を簡単に見つけることができます。商品の比較も簡単です。
一方、ToBのサービスは探索・交渉・監視コストが非常に大きくなっています。めぼしい商品を探すのは大変です。交渉する際には対面での取引や契約書の取り交わしも必要になります。
契約が履行されているかどうかも監視しなければなりません。これらが円滑な取引において阻害要因になってしまっています。
――ToBのサービスの阻害要因が多くなっていますね…。
私たちは、これらの阻害要因を解決し、情報の非対称性を解消していきたいと思っています。最終的には、バイヤー・サプライヤーともに最適な取引を実現していきたいですね。
バイヤーの方は自分たちのほしい情報にアクセスでき、透明性の高い情報から取引先を見つけられることを目指しています。
サプライヤー側も同様に、自分たちの強みをアピールして取引先を探すことが可能になりますし、実績や品質のアピールもできます。取引先としてのバイヤーの評価も見られます。
最終的には、評価されるべき企業が正当に評価されて、最適な取引が実現されているような世界を実現していきたいです。
――他に考えている展望はありますか?
RFQクラウドの特徴として、ネットワーク効果が大きいことも挙げられます。バイヤーの企業は1社で数百~数千以上のお客様と取引されています。そのため1社で使っていただければ、多くの企業様と関わることができるんです。
バイヤー様は1日あたり、10~30件程度の見積もりを出していらっしゃいます。そのため、RFQクラウドは日常的に使う場面が多い。企業のインフラ的なサービスになることを目指しています。
製造業の世界において、海外との取引がない企業様は、とても少なくなっています。そのため、ネットワークに参加していただける会社は世界中に存在することになります。
RFQクラウドを通して、最終的には日本発のグローバル企業間取引のプラットフォームになっていきたいと思っています。
だからこそ、現在はグローバル対応も進めています。
――ミッションについて教えてください。
今後は、買い手向けのシステムだけでなく、サプライヤー側にも機能を提供していこうと思っています。
現在、サプライヤーさんからは、営業は大変だという声をよくいただいています。ビジネスモデルとしても労働集約型であることが多い。
そのため、無理に営業活動をしなくても、商品が売れる仕組みを作っていこうと思っています。プロダクトを使えば、新しいお客さんがついてくるような仕組みを作っていきたい。
最終的には、自分たちが作ったプラットフォームの中で、流通総額が増えていくことを目指しています。
――バイヤー・サプライヤーどちらも使えるプラットフォームサービスを提供していくのですね!
また、企業はバイヤーだけではないですよね。一つの企業で、買い手にも売り手にもなります。
だからこそ、サービスを利用していただける企業の数を増やしてデータを貯め、適切な会社とマッチングできるようにしていきたい。
自分たちのプロダクトをもとにしたプラットフォームを作り、スケールできるような仕組みづくり進めていきます。
バイヤーとサプライヤーの両者の課題を解決するプラットフォームの構築へ。A1A株式会社の採用に興味がある方は、サイトをチェックしてみてください。
取材担当橋本
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