新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、葬儀配信サービスをはじめとしたオンライン葬儀の需要が増加している。
株式会社むじょうが提供する「葬想式」は、スマホから写真やメッセージを親族や友人で共有し合い、故人を偲ぶサービスだ。
代表取締役の前田陽汰さんは、コロナ禍を受けた「葬儀自粛」のニュースに衝撃を受けたことをきっかけにサービスを立ち上げた。サービスの提供を通じ、「感情を見渡す足場の創出」というミッションの達成を目指す。
どんなサービスなのか。詳しく見ていこう。
株式会社むじょう 代表取締役
前田陽汰
ーー葬想式とはどんなサービスですか?
距離と時間を超えて故人を偲ぶオンライン葬儀サービスです。
故人との思い出が詰まった写真や、故人に向けたメッセ―ジをオンラインで共有できるので、時間や場所にとらわれずに大切な人にお別れを告げることができます。
ーーどんな方が利用されていますか?
新型コロナウイルス感染拡大の影響で四十九日や一周忌に合わせて地元に帰れない個人のお客様や、家族葬や直葬などの小規模な葬儀に親族以外の方がオンラインで参列できるプランを加えたい葬儀社様にご利用いただいています。従来の葬式と組み合わせて利用することも可能なんです。
ーー喪主側の利用方法を教えてください。
ご利用登録が完了したら、喪主様には故人様のお名前やお写真、ご紹介文、親族からのメッセージなどの基本情報を登録していただきます。登録された写真やメッセージは、開式時から画面に表示されます。
基本情報の登録後、LINEやメールで参列者様に招待URLを送信します。1つのURLからは1人しか入室できないので、部外者が式に参加してしまう心配はありません。
開式中は参列者様から故人様に向けた写真・メッセージを受け取れます。届いた写真やメッセージは、喪主様が承認しなければ他の参列者は閲覧できないので安心です。喪主様のみ、閉式後3日間は会場を閲覧できます。
ーー参列者はどうやって利用するのでしょう?
参列者様は開式の時間になったら招待URLから入場します。受付ページでご芳名を記入したら、故人様に向けたメッセージや写真を投稿・閲覧できるようになります。開式中の入退室は自由です。
ーー競合サービスに比べた強みは何ですか?
他のオンライン葬儀サービスは葬儀社さんの売上アップに貢献することを主眼としていますが、葬想式はご遺族のお気持ちを一番に考えて開発されたサービスです。
例えば、葬想式に故人様のご友人を招待するときは喪主様が連絡先を知っている必要がありますが、これはご遺族が本当に呼びたい人だけ招待できることの言い換えにもなっているわけです。
また、ご遺族は故人様のご友人を葬想式に招待することで「皆さんで思い出を共有しましょう」というポジティブな意思表示ができます。通常、葬儀の参列者には身内を亡くされたご遺族に対する話しかけづらさがあるものですが、このサービスを介することでそういったうしろめたさをお互いに解消できるのです。
ーー起業に至った経緯を教えてください。
「感情を見渡す足場の創出」というミッションを事業を通して達成するために、株式会社を立ち上げました。実は会社を立ち上げたのはこれで2社目なんです。起業した1社目はムラツムギというNPO法人で、同じミッションのもと「まちの終活」をテーマにした活動をしていました。
ーーなぜこのサービスを始めようとしたのですか?
ムラツムギでの活動の延長線上で事業を展開しようとしていたときに新型コロナウイルスが流行し始めたのですが、そんな状況で出た「葬儀自粛」のニュースに衝撃を受けたからです。1月末くらいに行われた祖父の葬儀で、知らなかった祖父の一面を知ることができたことをきっかけに、葬儀が持つ役割について考えていたときでした。
葬儀には「悲しみ」という感情を超えた前向きな感情を見つめるための足場としての役割があると思います。この自粛ムードで葬儀が行われなくなってしまえば、行き場のない思いをどうすればいいのか、わからなくなってしまう人が大勢出てくるでしょう。
そこで、インターネットを通じたコミュニケーションを活用して、死という節目に向き合う人たちにとっての新たな選択肢を作ることにしたんです。
ーーこのサービスの今後は?
今後は葬儀社さんとの連携を強め、葬儀の新しい選択肢として葬想式をより多くの方に利用していただきます。
その中で利用者様から頂いたフィードバックを開発に活かし、このサービスが世の中に必要とされるようにアップデートしていく予定です。
ーー目指す世界観を教えてください。
終わりを見据えることで、今をより良く生きることができる世界をつくります。
「死」や「終わり」と聞くと、多くの人はネガティブな感情を抱いてしまいがちではないでしょうか。サービスの提供を通じ、感情を見渡す足場を創ることで、葬儀を「この先どう生きるか考える人生の節目」としてとらえる人を増やしていきたいですね。
株式会社むじょうの「葬想式」が気になった方は、以下のリンクまで。
前田陽汰さんのnote記事はこちら。
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