新型コロナウイルスの流行に伴い普及したフードデリバリーサービス。「巣ごもり消費」を後押しした反面、デリバリーに関わる人たちに低報酬・手数料大・個人負担大の三重苦を負わせることになった。
株式会社Offisisが提供するフードデリバリーサービス「JOY弁」は「ソーシャルデリバリー」という仕組みを活用し、現状のフードデリバリーのビジネスモデルが抱える苦悩を解消する。
代表取締役の田野宏一さんは、三菱商事株式会社に勤務しているときから、物流業界のラストワンマイル問題解決に取り組んできた。あるべき社会の形の一つとして、「ラストワンマイルのニューノーマル」の創造を目指している。
どんなサービスなのか。詳しく見ていこう。
株式会社Offisis 代表取締役
田野 宏一
東京大学卒業後、三菱商事株式会社にてスーパー・コンビニエンスストア・外食等の食品小売り事業および 財経・投資審査業務に従事。現場の運営や物流網構築、商品開発や経営管理まで幅広く担当するとともに、企業M&Aや国内外での新規事業開発等様々な案件に携わる。
その後独立し、2016年に株式会社Offisis創業。
ーー「JOY弁」とはどのようなサービスですか?
新型コロナウイルスに苦しむ飲食店の救世主と期待されたフードデリバリーサービスですが、三重苦(低報酬・手数料大・個人負担大)のビジネスモデルとなっており、本質的な解決に至っておりません。
一方ドイツでは、「ソーシャルデリバリー」という消費者同士が他の用事で移動するついでに物を届け合うデリバリーモデルが普及しており、大手ECサイト運営会社 Zalando(ザランド)社が効率的な配送網構築を進めています。また日本においても、オフィスワーカー同士で同僚の弁当もついでに届けるという行為が日常的に見られることから、ソーシャルデリバリーが日本国内で展開された時には新たなデリバリーモデルとして普及していく可能性があります。
そんな中、JOY弁は「ついでに」仲間の分も「まとめて」配送する日本初のソーシャルデリバリーサービスとして誕生しました。
<従来のデリバリーモデルとソーシャルデリバリーモデルの比較>
ーーどうやって利用するのでしょう?
具体的には、お弁当の注文と、注文したお弁当の受け取りを誰かにお願いできるアプリサービスで、「JOY弁」アプリ上でコミュニティ内(友人、家族、同僚等)のメンバーが注文したお弁当を、代表者が自分の分を取りに行く「ついで」に仲間の分も「まとめて」受け取りに行く仕組みです(=おつかい型配送)。代表者は、受け取りに行くことで注文金額合計の10%のポイントが付与され、次回お弁当注文時の支払いに充当できるようになります。
ーー新サービスの立ち上げに至った経緯を教えてください。
三菱商事にて店舗ビジネスに従事する中、店舗のモノやサービスを消費者へとつなぐラストワンマイル(最終拠点からエンドユーザーへの最後の物流)を研究し、最適な提供方法を模索してきました。
ところが、既存の消費習慣の中でラストワンマイルを考えてしまうと、提供効率の向上に限界が生まれ、モノやサービスの提供方法が非合理的・非効率的なものとなってしまうんですね。そうして色々考える中、あるべきラストワンマイルの形を実現するためには、消費者の消費習慣そのものをアップデートする必要があると考えるようになりました。
そして、ラストワンマイル問題の解決へ向け、理想的な消費習慣およびモノやサービスのあるべき提供法を検討したのですが、消費者が参加するコミュニティを活用してモノやサービスを消費者に届ける“Community Based Approach”による提供モデルが最適であるとの結論に至りました。
株式会社Offisisを創業後、まずはサービス提供の効率化にチャレンジし、人が集まり、ニーズが集積するコミュニティに向けてサービスを効率的・効果的に届ける事業に取り組んできました。
サービス提供効率化に道筋をつけた現在、モノ提供の効率化を実現する新たなプロジェクトとして「JOY弁」というソーシャルデリバリーサービスを考案し、現在展開を拡大しています。
ーーサービス提供を通じ、どんな世界を目指しますか?
我々は未来のあるべき社会の形の一つとして、「ラストワンマイルのニューノーマル」の創造を目指しています。
既存のパラダイムではどうやっても上手くいかなかったラストワンマイルの最適化については、これまでのように配送方法の効率化に解決を求めるようでは、絶対に解決しないと思っています。そうではなく、もっと根幹の部分、ライフスタイルや社会システムにフォーカスしたイノベーションを起こさなければ、この問題は解決できないと考えています。
「JOY弁」では、“Community Based Approach”の考えを取り入れたサービスを通じて、日本に「ソーシャルデリバリープラットフォーム」を構築し、デリバリー業界が抱える三重苦の解決に挑んでいます。これにより、あるべきラストワンマイルの形を世の中に提供し、本当にサステイナブルなラストワンマイル物流を実現したいと思っております。
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