パソコンにオーディオインターフェース、ミキシングの技術…。通常、楽曲を創作してインターネットにアップするには、少なくない機材や知識が必要になる。
株式会社nana musicが提供する音楽コラボSNS「nana(ナナ)」を活用すれば、スマートフォン一つで自分が作ったサウンドを世界中の人にシェアし、音楽コミュニケーションを楽しむことができる。
代表取締役社長の文原明臣さんは『We Are The World 25 For Haiti(YouTube Edition)』にインターネットの可能性を感じ、このサービスを立ち上げた。世界中すべての人たちと『We Are The World』を歌うことを目標に、新機能の開発を進める。
どんなサービスなのか。詳しく見ていこう。
株式会社nana music 代表取締役社長
文原明臣
ーー「nana」を一言でいうと?
スマートフォン一つで、世界中の人たちと音楽コラボレーションすることができるSNSです。
ーーどんな方にどれくらい利用されているサービスですか?
2012年8月にリリースしてから現在まで、延べ900万人のユーザーにご利用いただいています。年齢層は10代が27%で20代が40%、男女比率は女性が63%と、若年層の女性の支持を集めている状況です。
海外ユーザーの数は、全体の約半数を占めています。インド、タイ、メキシコのユーザーが特に多いですね。サービスには合計で113カ国からのアクセスがあります。
ーー音楽コラボレーションとは?どうやって利用するのでしょう?
nanaの基本的な利用方法は、スマートフォンのマイクで歌声や演奏をレコーディングしてシェアすることです。投稿されたサウンドには、別の音源を重ねることで誰でも「コラボ」することができます。ギターの音源をシェアした投稿にドラムを重ねたり、歌に歌を重ねてデュエットにしたりと、オーバーダビングを通じて世界中の人たちとコラボレーションができるのです。
ーー他ユーザーと交流する方法は他にありますか?
ユーザー同士の関わり方はさまざまです。投稿には「拍手」やコメントを送信できますし、サービス内の「コミュニティ」を活用すれば、オリジナル曲やアカペラなど、テーマに沿った交流も可能です。また、去年の夏からは、リアルタイムで一緒に空間を共有できるライブ配信機能「nanaパーティ」をリリースし、ひとつの配信内で全員にマイクを回せることができるため、全員が参加者(配信者)として “みんなで音楽を楽しむ” ことができるようになりました。
ーーサービスの強みを教えてください。
スマートフォンで手軽に音楽の創作を楽しめることですね。「歌ってみた」をやってみたくても、パソコンやミキシングの技術がなくて始められない10代の方は多くいます。スマートフォンのマイクで音源を録音し、ワンタップでリバーブやケロケロボイス、エコーなどのエフェクトをかけられる「nana」なら、機材や技術がなくても、自分の音楽を世界中に広げることができます。
ーーなぜこのサービスを立ち上げたのですか?
ハイチ地震が起きた2010年に『We Are The World 25 For Haiti (YouTube Edition)』を見たことが着想のきっかけです。国籍も文化背景もバラバラな57名のアマチュアの方たちが「音楽で世界を一つに」というコンセプトでコラボレーションしているのを見て、非常に感動しました。
昔から好きだった『We Are The World』のオリジナルはアメリカ人のみが参加しましたが、このバージョンはインターネットの力で国境を越えて制作されました。そこにインターネットの大きな可能性を感じたんです。しかし、そんな『For Haiti』でも10カ国程度の方たちしか参加しておらず、「音楽で世界を一つに」のコンセプトは達成できていないと考えるようになりました。
そこで、iPhone3GSが発売されたばかりの当時、スマートフォンでクラウド上にアップされた歌声に誰でもアクセスできる環境を実現し、世界中すべての人たちと『We Are The World』を歌いたいという思いで「nana」を立ち上げ、今に至ります。
ーーこのサービスの今後は?
現在は、まず基盤をしっかりと作るため国内でのサービス展開に注力していますが、将来的には世界中すべての人たちと一緒に音楽を楽しむことができるよう、成長速度を上げていきたいと思っています。
ーー新たな機能の開発は考えていますか?
3つの機能の実装を検討しています。
1つ目は、ギフト機能(投げ銭)です。これまでは純粋な楽しさを求めて利用されてきたサービスに「稼ぐ」という利用動機を組み込むと、コミュニティのあり方が変容してしまうのではないかという不安はもちろんありました。それでも、「投げ銭」はコミュニケーションの一部として成り立ちつつありますし、何より自分の創作に対価がもらえる仕組みは素晴らしいと考えています。なお、この機能は既に実装を完了し、現在は経過を見守っています。
2つ目は、サウンドのハイクオリティ化です。今まではカジュアルに、手間なく投稿できるように、サウンドはモノラルで90秒の形式にこだわってきました。しかし、モノラルだと作品作りのこだわりに限界があったり、データ容量を極力抑えるための現在のミックスのシステムだと音がオーバーダビングするたびに圧縮されつぶれていってしまうといった課題もありました。今後は100人でコラボしても音楽のパワーがダイレクトに伝わるようにするために、ステレオ対応やミックスのシステム改善、音声編集加工機能の充実等を検討しています。
3つ目は、コンテンツの動画化です。単純に撮影したものをシェアするのではなく、イラストを描けたり動画を制作・編集できる人たちが、サウンドとコラボできる環境の整備を進める予定です。音声のコラボのみならず、あらゆる創作物同士のコラボができるようになり、ユーザーの創作活動の幅が広がると考えています。
ーー目指す世界観を教えてください。
世界230カ国すべてにアクティブユーザーをつくり、その人たちと一緒に音楽を創作し、つながることが目標です。全員で『We Are The World』を歌えたら、それ以上に良いことはないですね。
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