「ああしなさい」「これはダメ」と知識や経験を与えられ続けて育った子どもは自分で考えることをしなくなり、次第にその主体性を失ってしまう。日本では大人から子供に、年上から年下への教育が浸透しており、諸外国と比べ、将来に希望持つ子どもの割合が少ないと言うデータがある。
そんな日本に、子どもが将来に夢や希望を持ち、実現のため困難に立ち向かう力を引き出す環境を受けることができる活動がある。一般社団法人Nancyが主催する「ぎふマーブルタウン」だ。
「ぎふマーブルタウン」の住人は全て小学生の子どもである。彼らが自ら考えお金を稼ぎ、ルールを作り、国を運営する。
今回は、そんな「こどものまち」を運営する一般社団法人Nancyの住田さんに話を聞いた。
一般社団法人Nancy 代表理事 住田涼
—ぎふマーブルタウンとはどのようなものですか?
一言で言えば、失敗と挑戦が許容された仮想都市です。
小学生が対象で、その運営、発展を通して主体性、協調性、創造性を育むことができます。
1回のイベントで多い時は790人もの小学生が参加します。
マーブルタウンでは、大人が子どもに口出しや手出しをしない「教えない教育」を大切にしています。子どもが自分の頭で考え、自分の手で選択し、自分の足で動けるようになるためです。
子どもたちの創造性や子ども達同士でのやりとりを尊重したいので、保護者の方は入場することができません。
—具体的にはどのようなシステムなのでしょうか?
子どもたちは住民登録をした後、職業ブースで仕事を探し、働いて、マーブルというマーブルタウン専用の通貨を稼ぎます。10分働くと10マーブルが稼げますが、そのうち1マーブルは税金として国に納められます。
また、出店料を払えば、自分で手作りした商品やサービスで起業することもできます。
あるぎふマーブルタウンでは全体の75%の子どもが起業したこともありました。折り紙を折っただけなどの簡単な商品ではあまり売れず、値下げ競争に晒されたりするので、商品だけでなくパッケージにこだわって付加価値を高めようと試行錯誤が生まれます。子ども達によってマーブルタウンで暮らす方法はさまざまです。
また、国王選挙で国王を決め、税金の使い道や国のルールもその中で決定されます。国王によっては、平和的なマニフェストを掲げたり、マーケット重視の具体的なポリシーをもとに演説をしたり…。そのため、その日集まる子どもによって、さまざま様々な社会が形成されていきます。
—強みはなんですか?
自分で作ったものでお金を得る達成感を得られる点です。その日初めて会った人が、自分の商品を買うために、自分で稼いだ努力の結晶であるマーブルを使ってくれる。これは、子どもたちにとって大きな成功体験になります。
また、ぎふマーブルタウンはキャリア教育の一環として行っています。活動が終わったあと、ポートフォリオというリフレクション用シートに感想や反省などを書いたり、年に何回か開催することで次の機会につなげることも重視しています。
—どうしたら参加できますか?
申し込み用紙1枚あれば簡単に参加できます。当日いきなり来ていただいてもかまいません。
子ども自身の参加したいという意志を尊重しているので、参加費は無料です。
—なぜぎふマーブルタウンを始めようと思ったのですか?
このイベントの本家は愛知の三河マーブルタウンで、そこでスタッフとして参加したのがきっかけです。
もともと自分は「ものづくり」が好きで、大学でも工学を学んでいたのですが、アイデアを具現化する力はまだ足りていないものの、大人よりも柔軟な発想がでてくる子どもたちを見て、この子どもたちがアイディアを具現化する力、つまり「ものづくり」の力をつけたらどんな発想が生まれるんだろうと思いました。
そして、マーブルタウンでの活動を通して、どうやったら具現化できるかを「与えられる」ではなく、「自分で作っていける」と子ども達が考えられるようになるように育んでいきたいと感じました。
そうしてもともとのマーブルタウンにPDCAサイクルの要素を取り入れてアレンジしたのがぎふマーブルタウンの始まりです。
—”ものづくり”に興味がある住田さんが子どもの教育に力を注ぐのはなぜですか?
私は、インターン先の社長から言われた「”ものづくり”は”人づくり”から」という言葉を大切にしています。
物は人によって生み出されるので、人の成長無くして物の進化もありえないという意味です。
人の成長によってどんな「ものづくり」が生まれるのか、その進化を見てみたいからこそ子どもの教育に力を入れています。
—活動するにあたってNPOを選んだのはなぜですか?
一般のビジネスは当事者に向けて提供し、当事者がお金を支払います。ですが、寄付は当事者でなくとも誰でも参加できます。
私たちは、子どもや子育てをする人以外も巻き込んで、社会全体で教育問題を解決していきたいと考えています。
そのため色々な人が参加できる枠組みとしてNPO法人を選びました。
—今後の展望について教えてください
現在、年間を通して約2000人の子どもがマーブルタウンに参加しています。今後はこの100倍、200倍、……1000倍の子どもたちにマーブルタウンを届けたいです。
その一環として、10/19からマンスリーファンディングを始めます。
我々の活動に共感し、応援してくれる人を全国に増やしたいです。
各地域でサポーターのコミュニティができれば、マーブルタウンをより広げていけると考えています。
まずは全国で500人を目指しています!
—どのような社会を作っていきたいですか?
今の日本の子どもは、諸外国と比べて将来に夢や希望を持てないというデータが内閣府から出ています。今の日本は、生活としては豊かでも精神的に豊かな人はまだまだ少ないと思います。
私たちは、将来に夢や希望を持てたり、失敗を恐れず挑戦できる子どもを一人でも多く育てたいです。
ものに溢れた成熟社会のさらに向こう側、夢に溢れた成熟社会の実現のために成長していきたいです!
一般社団法人Nancyが主催する「ぎふマーブルタウン」が気になった方は以下のリンクまで。
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