システムの開発や運用に関わる業務を外部委託することが多いIT業界。プロジェクト立ち上げの際に重要になるのが、料金や開発工数の見積もりだ。しかし、エンジニアによる主観的な判断で見積もりが行われているこの業界では、プロジェクトの進行が想定通りに行かず、トラブルが発生するケースが少なくない。
株式会社Engineerforceが提供するSaaSシステム「Engineerforce」は、AIが各タスクの作業量やリスクを計算し、見積もりを作成するサービスだ。エンジニアはこれまで見積もり作成にかけていた時間を大幅に削減しながら、客観的に算出された工数に従って本来の仕事に集中することができる。
同社代表の飯田佳明さんは、見積もりの正確性が重視されていないIT業界の現状に課題を感じ、このサービスを立ち上げた。「エンジニア業界に革命を」というビジョンの達成を目指して事業の展開を進めている。
「Engineerforce」とはどんなサービスなのか。詳しく見ていこう。
株式会社Engineerforce 代表
飯田佳明
ーー「Engineerforce」を一言でいうと?
エンジニア向けの見積もり支援サービスです。独自のAIシステムが各タスクの作業量やリスクを計算し、開発工数や概算金額の客観的な見積もりを提示します。
ーーどんなエンジニアの方を利用者として想定していますか?
ターゲットとしているのは、ソフトウェアやアプリケーションを設計するITエンジニアです。使用するプログラミング言語やエンジニアの熟練度は問いません。プロジェクトの進行に関わる条件をサービス内で入力いただくことで、客観的な見積もりを算出することができます。
ーーどうやって利用するのでしょう?
プロダクト名、会社名、作業開始日、使用するプログラミング言語、対象とするプラットフォームなど、プロジェクトの情報を入力していただきます。プロジェクトで行われる具体的なタスクの内容を入力すると、AIが作業量を解析し、タスク毎にかかる工数を算出してくれます。
各タスクの作業内容を入力した後、”PROJECT RESULT”を押していただくと、プロジェクト全体にかかる時間や金額がダッシュボードに表示されます。ガントチャートもAIが作成してくれるので、プロジェクトの進捗管理にも役立てることができるでしょう。ダッシュボードはPDFなどの形式で管理者や現場エンジニア、社外の取引先と共有していただけます。
ーーサービスを利用するメリットを教えてください。
これまで見積もり作成にかけていた作業時間を大幅に削減できること、AIの分析による客観的な見積もりを得られることです。IT業界では現在に至るまで、ITエンジニアの経験則に基づく主観的な見積もり作業が行われてきたため、実際の開発工数が見積もりをオーバーすると、発注元とのトラブルに発展する可能性がありました。客観的な判断によって算出された見積もりは、メーカー側にとっても工数の妥当性を判断する良い材料になると思います。
ーー競合サービスはありますか?
類似サービスとして、Webサイト作成者に向けた見積もり支援サービスが海外にありますが、「Engineerforce」はメーカー系のシステム開発にも利用可能な点を強みとしています。また、AIやクラウドシステムを使って客観的な開発工数を提示できるのも、弊社サービスだけの特徴です。
ーーなぜこのサービスを始めようとしたのですか?
IT業界に7年従事する中で、誰も見積もりの正確性に課題を感じたからです。AIに工数の見積もりをさせることで、業界に客観的な指標を設けたいと思い、このサービスの立ち上げに至りました。
この業界では、受注元からヒアリングした内容と自らの経験則に基づいて、現場のエンジニアの方がExcelで見積もりを作成しています。主観的かつ属人的な判断基準が前提とされているため、企業内でナレッジが蓄積されることもありません。想定よりも開発工数がかかることがわかり、プロジェクトが立ち消えてしまうことも少なくないのです。IT業界で成功したプロジェクトの数は全体の3割程度だと言われています。
これは日本企業だけの問題ではありません。私は前職で最先端のツールを常に取り入れているフィンランドのIT会社に勤めていたのですが、そこでも見積もりの作成はExcelで行われていました。”見積もりはエンジニアがExcelを使って行うものだ”という考えは業界全体に定着してしまっています。その常識に一石を投じるクラウドサービスとして、「Engineerforce」を展開していきたいです。
ーーこのサービスの今後は?
今後は「Engineerforce」を見積もりの算出からプロジェクトのマネジメントまでを一貫して行えるサービスとして開発していきます。先日には「Jira software」など、業界スタンダードとなっているソフトウェア開発者向けのサービスを展開するオーストラリアの企業アトラシアンとのパートナー契約を締結しました。同社のツールとの連携を進め、予定通りに作業が推移していなければ、プロジェクトマネージャーにアラートでフォローアップを促す機能などを随時追加していく予定です。将来的に株式会社ヌーラボ様が提供しているBacklogとも連携を行いたいと考えております。
また、海外展開も積極的に進め、このサービスをすべてのエンジニアにとって欠かせないものにしていきます。システム開発の発注元も、送られてきた見積もりの正確さを判断できないなど、業界全体で深いペインを抱えている状態を「Engineerforce」の普及によって変えていきたいと思っています。
ーービジョンはありますか?
私たちは「エンジニア業界に革命を」というビジョンを掲げ、すべてのエンジニアの方たちが幸せになる世界の実現を目指しています。社名でもある”Engineerforce”には、エンジニアを後押ししたいという思いが込められているのです。
IT業界で働きながら、メーカーさんの要求に沿って正確なプログラムを書くエンジニアの方々を日々尊敬しています。見積もり工数の計算など、本来の業務ではないところで時間を奪われ、システムの完成を間に合わせるために夜遅くまで働いているエンジニアの方たちが報われるためにも、プロジェクトに関わる人にとって共通の判断材料となる指標を私たちのツールで作り出していけたらいいですね。
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