熊谷 洋平
Kumagai Yohei
株式会社tayo 代表取締役
海洋微生物の研究で博士(環境学)を取得後、株式会社フリークアウトにて機械学習エンジニアとして一年弱勤務。その後JAMSTECに移り深海微生物学者として楽しく研究中。研究の傍らで、2019年5月に株式会社tayoを設立しtayo.jpの開発・運営を行う。
ーどのようなサービスか教えてください。
一言で言うと、「アカデミア向けの求人プラットフォーム」です。大学や研究機関が、研究者や大学院生の募集記事を無料で出すことができます。応募者側の視点からすると、SNSログインするだけでアカデミアの求人情報や大学院生の募集情報を一覧で無料で見ることができます。
ーサービスを利用する顧客について教えてください。
大学院で学びたいと思っている学生や研究者、そして大学院生を募集している研究機関などが主なユーザーです。現在は公的な研究機関に限定しておりますが、いずれは民間企業の求人も受け入れていきたいと考えています。
ー競合について教えてください。
文科省系のサービスで、JREC-INという求人サイトがあります。同じ研究者の求人サイトという面で競合になり得ますが、私たちのサービスのように大学院生の募集機能はありません。研究室単位で大学院生を募集できるようなサービスは他にはなく、Googleで「大学院 進学」と調べても、まとまった情報が出てこないのが現状です。
ー会社設立の経緯を教えてください。
僕はもともと東京大学で海洋微生物の研究をしていたのですが、博士号取得後に機械学習エンジニアとして民間のIT広告企業に入りました。博士新卒での就職というちょっと特殊なキャリアのなかで、民間とアカデミアの間に大きな溝を感じました。その溝を埋められないかと始めたのがtayoです。ちなみに僕は現在アカデミアに戻っていて、本職としては海洋研究開発機構で深海微生物の研究をしています。
ー大きな溝というのはなんですか?
民間企業の求人サイトと比べ、アカデミアの求人サイトはあまりに質素で、魅力を感じ辛いと思いました。この状況では民間に行こうかアカデミアに残ろうか迷っている人が民間に流れやすくなってしまいます。また、民間企業にもアカデミアへの思いを残した人たちは大勢いますが、そのような人たちが大学院に入り直したいと思っても、大学院の情報は全然開かれていません。そんな状況の中で、もっとアカデミアの求人を盛り上げたいと思いました。
ー厳しい環境を身近で感じ、その想いが今の事業につながっているんですね。
ー近年でのサービスの展望について教えてください。
大学院進学率の低下もあり、研究室の大学院生募集が難しくなってきています。特に日本のアカデミアには研究環境も良く予算も持っているのに大学院生が集まらない、というラボが多くあるので、その辺りのギャップを埋めていけたらいいなと思っています。
ー目指す世界はありますか?
民間とアカデミアの大きな壁を崩していきたいです。まずは大学院というものをもっとオープンにするところから始めようと思っています。
社名の「tayo」は「多様性」という言葉から生まれたものです。また、当社のイメージには多様性の象徴としてダーウィンフィンチという鳥を掲げています。民間とアカデミアの人材交流がもっと盛んになり、世の中にもっと多様なキャリアパスが生まれればいいと思っています。
社会が複雑化していく中で主体的に生きて行くために、学問はすごくわかりやすく公平な手段だと思います。就職や転職と、大学院進学が同じ土俵で考えられる世界が理想ですね。
ー大学院生/ポスドクのための求人検索サイト「tayo」の今後に注目ですね。
編集後記
取材担当大野
30分で取材
掲載無料
原稿確認OK