誰でも気軽にAIを使える――。そんなSF映画のような世界を現実にするかもしれないサービスが登場した。
株式会社ヒューマノーム研究所が提供するHumanome Eyes Workstation(ヒューマノーム・アイズ・ワークステーション)だ。
一体どんなサービスなのだろうか。詳しく見ていこう。
代表取締役社長 瀬々 潤
ーーHumanome Eyes Workstationはどのようなサービスですか?
一言で言うと、プログラミングの知識がなくても人工知能を開発できる企業向けのサービスです。自社業務への人工知能の導入をすすめたくても、社内に専門家もいないし、何から手を付けたらよいのか分からないので新規開発は難しい、という声をお聞きすることがしばしばありました。このようなご意見を踏まえ、各企業が自社内で独自の人工知能を作れるようになることで、人工知能の普及を促進できる需要を感じ、本サービスをはじめました。
ーーターゲットはどのような企業ですか?
医療や農業など、ライフサイエンス系の企業からのニーズを想定しています。それ以外にも、壁の非破壊検査や不審者を見分けること、物を探すことなど色々な用途に使っていただけます。
ーー具体的にどのように活用されていますか?
医療の領域でしたら、例えば内視鏡手術で腫瘍を発見するのに役立ちます。手術中の動画に不審なものが写っていないか、どこに注目すればよいかなどについてAIによって判別できるんです。農業関係ですと、収穫できる果実がどこにどれくらいあるのかを認識し、収穫に最適な時期を知ることができます。完熟して色づいた果実や、まだ青い果実などを見分けることも可能なので、さらに使い方は広がると思います。
また、高感度のカメラとHumanome Eyesの学習を組み合わせれば、夜間に何が起こっているのか?を知り、防犯に役立てることもできます。つまり、使い方は無限大です。使っていくことを通じて、ユーザーの皆様に新しい問題に対する意識を高めてもらって、人工知能にできることをどんどん試していただきたいです。
ーー使える人工知能をつくるための設定は専門知識がないと難しそうですが、どうやって利用するのですか?
専門知識は必要ありません。例えば先ほどの農業の例ですと、菜園の写真をたくさん用意し、そこに写る果実を順番にクリックします。これをアノテーションと言います。その後、この情報を人工知能に学習させるボタンをクリックし、しばらく待つと人工知能モデルのできあがりです。PCのマウスを操作するだけで人工知能ができてしまいます。
ーーこのサービスの強みは何ですか?
専門的なプログラミングの知識がなくても、誰でも手軽に人工知能を試せる点です。先ほど写真をたくさん、と言いましたが、実際のところはケースバイケースで、必要とする枚数は100枚だったり300枚だったりします。そこも含めて企業の方には「人工知能を試してみる」という気持ちで、色々なことに使っていただきたいと考えています。その中で、もし問題点やうまくいかないことがあった場合には、当社の研究者集団がすぐにご相談に応じ、解決策を提案できる点もこのサービスの強みです。
ーー他の人工知能のサービスとの差別点は何ですか?
Humanome Eyes Workstationは、画像のアノテーションから学習まで全て一括でできます。現状では同じようなサービスは他にありません。
アノテーションのみのサービスはありますが、それらは機械学習モデルの構築ができません。一方、人工知能構築の部分だけであればMatrixFlowやNeural Network Consoleなどがありますが、画像のアノテーション機能はありません。画像のアノテーションから機械学習まで、一括でできるということが最大の差別点だと考えています。
ーー会社を立ち上げた経緯を教えてください
会社を立ち上げたのは2年半前で、本格的に稼働を始めたのは1年半前です。僕自身は以前、産業技術総合研究所という国の機関に勤めており、そこの人工知能研究センターで機械学習のチーム長をしていました。その繋がりで日本中の研究者に知り合いが多かったため、会社を立ち上げる際に優秀なメンバーを集めることができました。
人工知能には色々できることはあるものの、なかなか社会に利用が広まらないというのが現状です。使いたくてもどう使っていいかわからないこともありますし、作ってみたいけど踏み出せる人が少なかった。そこで多くの人にもっと人工知能の可能性を知ってもらい、幅広く利用してもらうために、人工知能を中核にした会社を作ってサービスを始めようと思い立ちました。
人工知能を広めるという事業のほかにも、AIを活用した研究にも力を入れています。既に実証実験として、温泉街の方々と組んで1ヶ月間デジタルデバイスを使って実施した健康データ観測を行っており、Humanome Eyes Workstation とはまた違った形で、様々な方々に人工知能を身近に感じて頂く活動を進めています。今回のHumanome Eyes Workstationも、人工知能を広める目的で始めましたが、私たちの会社はデータを取るところから解析、必要に応じ手法開発をするところまで全て提供する、人工知能活用の総合的な事業を展開しています。
ーー今後の展開を聞いた
今後も人工知能の利用拡大と、技術研究の2つの面で事業展開していく予定です。
また、新たに予防医療や福祉的な領域にも踏み出したいですね。例えばAIを利用してデジタルデバイスから近未来の健康を予知するような予防医療サービスの開発などを行っていきたいと思っています。
さらに上記と並行して、Humanome Eyes Workstationを多様な分野に利用できるよう、機能拡張を進めたいと考えています。今まで手を出せなかった人工知能を、さまざまな人達がもっと気軽に試して、人工知能を使う輪がさらに広がっていくことを願っています。ここまで使い方の例を紹介してきましたが、僕らの思いとしては、ユーザーの皆様に想像もつかないような使い方をしていただき、手を動かすことから生まれた「こんな使い方ができたよ!」というような、「生きた」アイデアの募集という面も含めて、今後は展開していきたいと考えています。
最も重要なことは、人工知能の利用によって僕らの健康や生活が潤うことです。このサービスを通して新しいライフスタイルが見つかってくると面白いなと思います。
ーーミッションを聞いた
僕たちは人工知能を活用した健康社会を目指しています。AIが入ってくると人間の仕事が奪われるなどとよく言われていますが、そうではなくて、「AIがあればもっと面白いことができるよ!AIがあれば人間ってもっと生き生きとしたことができるよ!」ということを伝えていきたいです。AIがあるからこそ楽しい世界、そういう世界を作るためのAIを作りたいと思っています。
人工知能を活用した、より豊かな健康社会を目指すヒューマノーム研究所に今後も注目していきたい。
取材担当阿久沢
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