何事も一番頼りになるのは経験者の声である。それなのにどうして社会人はOB訪問をしないのだろう?
株式会社ブルーブレイズが提供する「CREEDO(クリード)」は、転職や起業など、自分の検討しているキャリア選択にピンポイントでマッチする経験者を見つけて、直接話を聞くことができるキャリアシェアサービスだ。
どんなサービスなのだろう。詳しく見ていこう。
代表 都築 辰弥
東京大学工学部卒。学生時代は、国際学生NPOアイセックで活動した後、バックパッカーとして世界を一周。新卒でソニー株式会社に入社し、スマートフォン『Xperia』の商品企画担当を務める。その後、『世界に100億の志を』というミッションを掲げ、アイセック時代の友人とともに2019年8月に株式会社ブルーブレイズを創業。社会人でもOB訪問できるCtoCキャリアシェアサービス『CREEDO(クリード)』を運営する。
ーーCREEDOはどんなサービスですか?
ひとことでいうと、社会人でもOB訪問できるCtoCのキャリアシェアサービスです。自分のキャリア経験談を話したり、自分の興味あるキャリア選択をした先輩の経験談を聞いたりできます。
ーーユーザーはどのような方ですか?
CREEDOには、キャリア経験談を「話したい」ユーザーと「聞きたい」ユーザーがいます。どちらか一方だけではなく、両方の目的で利用いただくことももちろん可能です。
まず、“話す人”のパターンは2つあります。
1つ目のパターンが、困難なキャリア選択をしてきた方で、その経験を人生の後輩に伝えて役立てたいという貢献意欲のある方です。具体的には、異職種の転職や一般的ではないキャリア選択をした方、起業、独立・フリーランスという道を選んだ方などがいらっしゃいます。自分の挑戦をシェアして貢献しようというお気持ちで経験談を登録してくださっています。
2つ目のパターンは、リファラル採用をしたいという意欲のある方です。リファラル採用は、自分の知っている人の紹介を通してオファーするという特性上、出会える人材に限りがあります。ですがCREEDOを利用すれば、元々は自分の知らない人でも、自分のキャリアに興味を持って話を聞いてくれた人と出会えるので、採用に繋げられます。
”聞く人“のメインターゲットは、現在社会人で、転職や独立、起業などのこれから大きなキャリア選択をしようとしている方です。「社会人のためのOB訪問」をイメージしています。
ーーどのように利用するのですか?
”話す人“は、会員登録後ガイダンスに沿って経験談を登録します。それから自分のキャリアに当てはまるタグとタイトルを入力。その際ご自身の経験談にタイトルを付けるのは難しいという声があったため、タイトルをサジェストする機能でお手伝いさせていただきます。
経験談を“聞く人”は、検索機能を使ってキーワード検索をしたり、タグから当てはまる経験談を見つけたりできます。話を聞きたい相手を見つけたら申し込みをします。引き受けられたら、個人間のトークルームへ移動してチャット上で日程や内容を調整。Web会議または対面で話を聞くことができます。
ーーユーザーが得られるメリットはなんですか?
人に自分のキャリア経験談を話すことはあまりありません。ですからCREEDOを通して自分の経験を他人に話すこと自体が、自分自身のキャリアの棚卸しになると考えています。話しながら、自分が当時考えていたことなどを振り返ることで今のキャリアでのモチベーションアップや新しい発見が次のキャリアに繋がるという好循環が生まれます。こうして話す側も聞く側もお互いにハッピーになることこそが、キャリアシェアの最大のメリットです。
また、CREEDOはパラレルワークの1つとしてもお使いいただけます。現時点では経験談を話すことの対価として、話す人が0円か500円を自分で設定できるようになっています。そしてこの金額は実際にマッチして話した回数が増えるごとに値段を高く設定可能。ですから収入を得られる副業の一つとしてこのサービスを使っていただくことができるんです。
聞く人にとって得られるメリットは、自分で企業や業種を絞ってピンポイントの経験談を聞けることです。また、Web会議や対面で、そのキャリアの現役の方からリアルな情報を直接、気軽に聞くことができます。
ーーCREEDOの強みを教えてください
CREEDOの強みは、ピンポイントな生の情報が聞ける点です。企業の口コミサイトなどはすでにありますが、投稿されてから時間が経っていてすでに古い情報になっていたり、自分が聞きたいピンポイントの情報が手に入らなかったりすることがあります。また、その企業を辞めようとしている人の口コミが多いこともあり、正確な情報を得ることも難しい。一方CREEDOは現役で働いている方から直接お話を聞くことが可能です。OB訪問の様な形で気軽に会いに行けたり、サイトには載っていないようなリアルな情報を聞いたりすることもできます。
ーー競合としているサービスはありますか?
CtoCのキャリア系としてサービス内容が類似しているのはMatcher、ビズリーチ・キャンパスなどがあります。しかし、学生向けなのでターゲットが異なるため競合ではないと考えています。
ーーキャリアシェアに目をつけたきっかけを教えてください
当社は「世界に100億の志を」というミッションを掲げています。
そのミッションの達成のために、どうやって志を持ってイキイキ働く人を増やせるかを考えた結果、人に志が宿るには自分に合うキャリア選択をして、納得してイキイキ働ける状態でないといけないと思ったんです。
とは言ってもキャリアはブラックボックスで、自分自身が求めている情報にピンポイントなものを見つけるのは非常に難しいという現状があります。
そこで考えました。日本には1億人の人がいて、つまり1億通りのキャリアがあります。1億人いればその中には自分がしたいことや進みたいキャリアをピンポイントで先にやっている人もいる。しかしそれらは個人の体験として専有されていて、共有しないとその価値を発揮することができません。より多くの人が自分が納得できるキャリア選択をできる社会にするためには、一人一人のキャリアの経験談を解放し、みんなの共有知にしていくことが必要なのではないかと考え、株式会社ブルーブレイズを立ち上げました。
ーーミッションを設定したきっかけはなんですか。
「世界に100億の志を」というミッションを設定するに至った原体験は2つあります。
私は学生の頃の4年間、国際学生団体のAIESECに所属していました。学生団体の活動を通じてさまざまな社会人や学生に出会い、志のある人って素敵だな、尊敬できるなと強く感じました。そして、もっとこういう人を増やしたい、一緒にいたいと思ったんです。これが一つ目の原体験です。
二つ目の体験としては、大学卒業前に1年間休学して行った世界一周の旅の最中の出来事が挙げられます。私は約30の国・地域を訪れたのですが、その中の一つ、パレスチナ自治区に行ったときのことです。
偶然道を歩いていたお父さんと小さい女の子に出会って仲良くなりました。たわいのない立ち話をしているときに何を思ったか私は女の子の将来の夢を聞いたんです。すると今まで愛想が良かったお父さんが突然ムッとして「夢なんかあるわけないだろ、ここは戦場だぞ」と言いました。
私は、深い意図はありませんでしたが不謹慎なことを聞いてしまったのかなと反省しました。と同時に「戦場では夢とか志を持っている場合じゃないのか」とショックを受けました。そして、環境や境遇によって志を持つ余裕がない人を底上げしていく必要性を強く感じたんです。
歴史を振り返ってみると、飢餓で亡くなる人、戦争で亡くなる人の数も減っていて、概ね世界は良くなってきていると思います。それは、いい世界を実現しようと思って頑張ってきた志の高い先人たちのおかげです。そのような志を持つ人が増えれば、彼らが頑張って挑戦し続けることによって世界が少しずつ良くなっていきます。そして間接的に明日食べるものにも困っている人や、志を持つことができない環境にいる人を底上げしていくことができます。世界中の人が志を持って生活できる未来を目指したい。これが、私たちの「世界に100億の志を」というミッションを設定したきっかけです。
都築辰弥氏と取締役の藤井蓮氏
ーーサービスの今後の展開を聞いた
私たちがまず目指しているのは、聞き手と話し手の二者をバランスよく集め、CREEDOをプラットフォームとして成り立たせることです。
そしてキャリアシェアという文化を定着させることが今後の目標です。
現在、スキルシェアやビジネス知見のシェアはさまざまなサービスによって定着してきています。しかしシェアできるスキルや知見を持っている人は限られています。一方でキャリアは誰しもが持っているものです。人は生きている限り、百人百様のキャリア選択があります。無職だって立派なキャリアです。百人百様のキャリア選択があれば、自分が興味のあるキャリア選択をすでにしている人もきっと見つかります。今までは個人の経験でとどまっていたものをキャリアシェアという形で解放することで、それぞれのキャリアから、これまでと違った新しい価値が生まれると考えています。
人生の先輩から経験談を聞いて、それを踏まえて納得いくキャリア選択をする。そして今度は自分のキャリア経験を人生の後輩に伝えていく。キャリアシェアはギブアンドテイクが成り立ちます。自分のキャリアという資産を人にシェアして、その経験が価値になるというキャリアシェアの枠組みをこれからもっと広めていきたいです。
キャリアシェア文化が定着すれば、今以上にもっと多様性に富んだ人生の選択肢が広がっていくのだろう。社会人のためのOB訪問プラットフォーム『CREEDO』に今後も注目していきたい。
取材担当阿久沢
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