友人から勧められた商品は、なんとなく気に入って長く使っている。そんな経験はないだろうか?
SNSが普及した現代では、多くの人が信頼する知人の紹介で商品の購入を検討するという。
株式会社レターズが提供するSaaSツール「Letters(レターズ)」を利用すれば、自社のネットショップで手軽に紹介プログラムを導入することができる。どんなサービスなのだろうか。詳しくみていこう。
COO 大迫 雄毅
1986年生まれ。関西学院大学経済学部卒。国内大手PRエージェンシーにて、営業・PRコンサルタントとして約10年間従事。2019年 独立後、複数企業のコミュニケーション領域におけるPR支援に携わる傍ら、D2Cブランドの健全な成長をサポートする株式会社レターズの創業に参画。COOに就任。
ーーLetters(レターズ)はどのようなサービスですか
一言で言うと、自社のネットショップに接続してリファラルマーケティングプログラムを簡易に導入できるサービスです。現在はECプラットフォームであるShopify(ショッピファイ)を用いた自社ショップに対応しています。
リファラルマーケティングとは、人による紹介により、商品購入やサービス利用を促すマーケティングの手法のことで、このアプリでは紹介が成立すると、紹介者と紹介された人の両方にクーポンなどのインセンティブが付与される仕組みをとっています。インセンティブをもらえることをメリットにユーザー間の紹介が広がり、カスタマーが増え、認知拡大並びに売上にまで寄与するという考えです。
ーーどのようなユーザー体験になりますか
対象のネットショップ上で商品を買うと、Lettersから「商品のアンバサダーになりませんか」という招待メールが届きます。このメール文章は一つ一つ利用企業側で自由に編集することができます。カスタマーが「アンバサダーになる」ことに同意したら、自分専用の招待リンクが生成され、そのリンクを友人や知人にシェアするだけでOKです。購入成立時に両者にインセンティブが付与されます。
ーーLettersの強みや他のサービスとの差別点を教えてください
通常、自社ショップでこのような紹介システムをオリジナルで開発するとそれなりの開発コストがかかってしまいます。一方、このアプリなら紹介プログラムを月々数千円という安価で気軽に導入できるんです。
他にも、同様のアプリは、米製ですでに存在するのですが国内開発の和製は現状Lettersのみのため、紹介プログラムに関心が高いオーナーに見つけていただき、問い合わせをもらっています。
ーーどのような事業会社からの利用を想定しているのですか
Shopify(ショッピファイ)を使っているD2C企業です。昔から美容院の紹介制度などオフライン店舗でのリファラルマーケティングは皆さんもご存知の通り、一般的に行われてきたものでした。しかし、国内でいうとECの領域においてデジタル上でのリファラルマーケティングは現状そこまで普及していません。アフィリエイトの市場規模を考えると、リファラル領域にはまだまだポテンシャルを感じています。また、SNSやオウンドメディアに軸足をおいたマーケティングに勝ち筋を見出しているD2C企業にとって、リファラルマーケティングを味方にして商品やサービスの体験者を増やすという手法は非常に費用対効果も高く、クチコミにも繋がりやすくメリットも大きいと考えています。
ーーベンチマークとしているサービスはありますか
競合サービスではないですが、アメリカのリファラルマーケティングの事例を見てみるとさまざまなアプローチがあり参考になります。代表的なものでいうとDropboxです。これは、紹介するとDropboxで使えるストレージ容量が増え、よりDropboxを使い込める状況を提供するというサービス還元型の仕組みをとっています。Letters上では、今はクーポンやギフト券といったインセンティブ設定がメインなので、それぞれのブランド毎に自由度の高いインセンティブ設定が可能になるように柔軟な開発を進めていきたいです。
ーーLettersの開発の経緯について聞かせてください
共同創業の当社代表は、実際にD2C事業社としてプロダクトを扱ってきました。様々な売りにつながる施策を実践する中で、ユーザー間の紹介によるCVの費用対効果の高さに気づきました。その経験から、リファラルマーケティングのソリューションが、まだ使いやすいように整っていないということにポテンシャルを感じたんです。
僕自身は、長年PR会社に勤めており、認知獲得を主眼とした実働がメインだったのですが、実際にどれだけそのPRが商品の購入に結びついたかの実態を知る機会が多くありませんでした。でもD2Cは、すごくシンプルですよね。メーカーの仕掛けがどれだけCVに繋がったか俯瞰して見ることができることに魅力を感じました。また、リファラルマーケティングは、これまでPRで動かそうとしてきたメディアを介さずに、個人がメディアの様な役割として機能することを上手く活用した手法じゃないかと思っています。なのでテクノロジーを通じて、この波を国内でもっと普及させたいと考えるようになりました。それがLetters開発のモチベーションになっています。
ーーリファラルマーケティングのポテンシャルについてもっと教えてください
スマートフォンやSNSの普及により、テレビや紙媒体が主流だった以前よりも個人が情報発信力を持つ時代になりましたよね。メディアのこの先10年を見据えると、D2Cのトレンドにあるように情報伝達手法もよりdirect to consumerになり、もっと個人的なものになっていくと考えています。様々なメディアが淘汰された究極の結果、“最良のメディアは親愛なる隣人”であり、個人間の情報伝達がこれまで以上に重要視されていくのではないでしょうか。そこに寄り添う普遍的な手法がリファラルマーケティングだと感じています。
また、ファクトベースでも、一般的に約8割の人が「友人・知人に商品を紹介したいと思った経験がある」というデータがあります。一方で、「実際に友人・知人に商品を勧めたことがある」と答えた人はわずか3割ほどに留まっています。その非対称性をテクノロジーの力で解消するためにLettersアプリが一役買ってくれるものと信じています。
ーー今後の展望を聞かせてください。
今後手がけていきたいことは3つあります。
まずは、CSR面で企業にサービスを使ってもらいやすくするように機能を拡充させることです。例えば、ある商品を購入すると売り上げの一部が慈善団体に寄付される、といったようなチャリティーの側面でも簡単に活用してもらえるようにアップデートしていきたいです。
次に、もっと人にシェアしてもらうきっかけや場所を作ることです。例えばロジスティクスと連携すれば、梱包時に箱を開けた時の驚きや感動の仕掛けを用意してリファラルさせるように工夫することも可能ですし、ブランドを応援してくれるカフェや宿泊施設などにアンバサダーになってもらって、そこを訪れたお客さんに商品との接点を持ってもらうような導線づくりをデザインしていければと考えています。
最後に、ネットショップに接続するアプリにとどまらず、オンライン・オフラインを横断したプラットフォームとして進化させていきたいです。紹介プログラムを実際のオフライン店舗で利用できるようにしたり、新しい購買に結びつきやすいアンバサダーを認知してマーケティングに活かせるような仕組み開発したりしていきたいと考えています。
ーー目指している世界観はなんですか
顧客ロイヤリティを高める情報伝達の仕組みをデザインすることでLTVの向上を目指し、売り手と買い手双方がWin-Winで豊かになれる世の中になればと考えています。これからは、プロダクトとしての価値だけではなく、ブランドが持つストーリーに共感してモノを買う時代です。それは購入者の満足度や幸福度に大きく関わってきます。そういう物語を持った商品が今後たくさん生まれてほしいと考える一方で、大切なことが中々伝わりにくいことも事実です。リファラルマーケティングは、友人・恋人・家族など信頼関係のある人からの紹介がベースとなるため、セッションハードルを下げ、さらに購入後もブランドに対する「信頼」や「愛着」につながるものと考えています。当社の仕組みがこれからの時代の生活者の消費行動に寄り添って、世の中の幸福度が少しでも向上すればいいなと思っています。
リファラルマーケティング市場を切り開くLettersに今後も注目していきたい。
取材担当阿久沢
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