AIが行動を分析し、人の手によって捜索・通報することなく不正ユーザーが発見できたらオンラインゲームはきっと今以上に安心して楽しめるようになる。株式会社ChillStackの提供するStena(ステナ)は、AIを使った不正検知プラットフォームだ。
しかもなんとゲームの中だけでなく、会社の経費申請の不正など他分野の不正も見抜くこともできるという優れものだ。
いったいどんな技術でそれらを可能にしているのか、開発者の伊東さんにお話を伺った。
代表取締役 伊東道明
ーーひとことでいうとどのようなサービスですか?
Stenaは一言でいうと、不正ユーザーや悪性ユーザーの検知を自動化する製品です。
例えばオンラインゲームで不正なプレイをしたり他のユーザーの迷惑になっていたりするユーザーを検知します。他にも社内の不正な経費申請をしている人も検知することができます。
ーーどのように導入して利用するのですか?
サービスのログデータをStenaにお送りいただくだけで、
不正を検知するAIがデータから不正なユーザを炙り出し、その検知結果を元に適切な対処を行うという流れになっています。
Stenaは、ユーザーの行動を一定の期間にわたって時系列で監視することによってユーザーが普段行っていないような行動や、他のユーザーと比べた際におかしな行動をしていることを検知します。
基本的には継続的に利用していただいていて、不正をしているユーザーがいないかを日々検査し対処していくことでサービスを健全化することができます。
ーー利用するメリットはなんですか?
不正なユーザーを見つけるという行為はセキュリティで言うと事後対策にあたります。今まではその事後対策は人の目で見て怪しいユーザーを見つけるか、他のユーザーからの通報を受けて対処するというように、人が関わることでどうしてもコストがかさんでしまうものでした。弊社のStenaを利用することで事後対策をほぼ完全に自動化することができるので、事後対策の課題であったコストを大幅に削減することができる点がメリットです。
Stenaはなぜそのユーザーが不正と判断したかの理由を提示することが可能で、Stenaを利用する会社様は判断理由を元に不正ユーザーの対処を行うことが可能です。
ーー不正とはどのような行動のことでしょうか?
例えばオンラインゲーム内でしたら、ゲームを改造しプレイヤーを不正に強化したり、アイテムを不正に利用することです。また、最近ではチャット内の暴言など他のプレイヤーに迷惑をかけたり不快な思いをさせたりする行為も問題視されていて、検知することができます。経費申請では、経費申請を複数回行っていたり、異常な金額が使われていたり、不自然に領収書が分割されていたりするのを不正行為として発見することができます。
ーーオンラインゲームと経費申請の不正を同じ人工知能の仕組みで検知することができるというのは面白いですね。
そうですね、実はゲームのプレイヤーの行動と、経費精算は、同じようなログデータとしてみなすことができます。ゲームの世界で、例えば「A地点にいたのが一瞬にしてB地点に移動していたらおかしい」と発見できるように、「東京でご飯を食べた30分後に福岡でご飯を食べていたらおかしい」というように、ゲーム世界で培った弊社のノウハウを現実世界の不正の検知に応用させることが可能で、一見全く異なる2つの分野の不正検知を可能にしています。
ーー競合はありますか?
不正検知を行うサービスというと、他にも様々なサービスが存在します。その中でもStenaの優位点は、時系列で複雑なデータや、答えのないデータ、つまり誰がどんな不正をしているのかはわからないがユーザーの中に不正をしている人がいる、というような例に対して強いという点です。複雑な時系列のデータというのは技術的に難しいテーマなので、特にボードメンバー全員がAIの研究者である弊社の強みになっています。
ーー創業の経緯を教えてください。
僕自身、大学時代からずっとAIセキュリティというテーマで研究活動をしており、不正検知をするAIの研究成果が国際学会で最優秀賞を受賞することができました。そこでいろいろな方から「AIでこんな課題を解決できないか」というようなお声がけをたくさんいただき、そういった方々に向けて幅広く自分の研究成果や技術を提供して、課題を解決できればいいなと思い起業しました。
ーーStenaのサービスを立ち上げた経緯を教えてください
よくセキュリティの中で課題として取り上げられるのですが、100%製品やサービスを不正行為から守るということは不可能と言われています。なので不正行為や迷惑行為を監視して取締る、事後対策が重要です。ただその事後対策がどうしても人力で行うとコストがかかってしまうというということが課題になっていて、ある程度の不正や迷惑行為は許容せざるを得ないという現状がありました。その状況を自分の研究成果を生かして改善できると感じたためサービスの立ち上げに至りました。
ーーサービスは今後どのように進化していきますか?
現在Stenaはオンラインゲームと経費申請という、ある意味遠い分野で提供させていただいているのですが、そこからさらにサービス提供できる業界を増やしていってお互いの知見を相互活用して全てのお客様により良い不正検知システムを提供するプラットフォームを目指しています。
ーー目指す世界観やビジョンはありますか?
弊社は現在不正検知AIでのノウハウを活かし、今後社会の中心を担って行くであろうAIサービス自信を守るセキュリティ技術の開発にも注力しています。
AI技術は現在、自動運転や医療など様々な場面で活用されていて、社会問題を解決する糸口になっています。しかし、AI自身がブラックボックスとして課題を抱えていて、AIが攻撃されてしまう危険性を孕んでいる状態です。ですから、AI自身を守る技術がないと、医療などの失敗が許されない分野でAIが活用される可能性がなくなり、国内でAIが発展しづらい状態になってしまいます。そこで、弊社のStenaを開発する知見を最大限活かして、AIを含めた新しく便利なサービスを安全に、安心して利用できる社会基盤を作っていきたいと考えています。
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