中小企業にとって銀行からの融資を受けるハードルが高いことは、中小企業の健全な経営や日本のサプライチェーンにも大きな影を落としている。株式会社RootAntは、中国を始めとするアジア諸国で定着し始めたサプライチェーンファイナンスのプラットフォームを日本で展開する唯一の会社だ。どんなサービスなのか、CEOのリンカーン・インさんとRootAnt日本担当の林さんにお話を伺った。
ーーRootAntは何をしている会社ですか?
一言でいうと日本でのサプライチェーンファイナンスの導入と普及を目指し、フィンテックの領域で事業を展開している会社です。RootAntは2013年に事業を開始し、現在シンガポールを拠点に東南アジア並びに中国で事業を展開しており、東京都のスタートアップ支援事業「Invest Tokyo」に採択されて2019年から日本にも注力をして事業展開をしています。
ーーサプライチェーンファイナンスとはどのような仕組みですか?
従来、物流や建設などの業界は大きな会社の発注先である下請けの中小企業にとっては大手の銀行にお金を借りることは難しいという現状がありました。サプライチェーンファイナンスとは銀行が取引している一番親元の大きな会社に与信を与え、それをもとに末端のサプライヤーもお金を借りられるになるという仕組みです。
銀行からすると大企業への融資の流れで確実にお金が払われるということがわかっているリスクが少ない状態で末端の中小企業に融資を実行することができ、このシステムを導入することによって今まで繋がっていなかった銀行と中小企業の部分をつなぐことができます。
ーーどんな人にとってメリットがあるのですか?
我々の第一のお客様は銀行や金融機関です。弊社のプラットフォームを使うことで、これまで銀行にとって信用判断が難しく融資をできていなかった中小企業を新たに取り込むことができる点でニーズがあります。
もう一つのお客様は銀行の取引先でありサプライチェーンの親元である大企業です。大企業が弊社のシステムをカスタマイズして使っていただくことで、取引先企業が融資を受けやすくなり、自社のサプライチェーンを強化することができます。更に、大企業にとっては既存の事業領域に加え金融サービスという新たなビジネスの軸ができます。
ーーRootAntの特徴はなんですか?
弊社のプロダクトには3つの特徴があります。
一つ目は、シナリオベース金融です。従来金融のサービスを受ける際には財務諸表を提出して銀行側が判断するというプロセスだったのですが、過去のステートメントに基づくのではなく、全てリアルタイムで起きている商取引の流れをデータ化することによって金融機関が今の会社のステータスを知ることができ今の現況つまりシナリオベースで判断をすることができるというものです。
二つ目はオープンバンキングです。これは、金融機関や企業が既に使っている既存システムを、新しいものに乗り換えることなくAPI連携させて通常の業務を行うだけで必要な情報が溜まっていくというものです。その会社からどれだけの発注を得たかなどの情報をリアルタイムでトラッキングすることができるように連携するというのが特徴になっています。
三つ目はこれら2つの技術を駆使して全ての手続きが直感的にオンラインで完結するデジタルバンキングです。対応できるサービスには多様な種類があり、マルチティア金融や在庫参考融資、そして貿易金融が代表的な例です。弊社の技術は様々な商取引の流れを全てトラックできるというのを強みにしており、それをもとに環境に配慮したクリーンファイナンスやイスラム金融など、流れを根本からトラックするニーズのある領域に金融のサービス・仕組みを提供することができます。
ーー競合はありますか?
中国では5年ほど前から政府主導でかなり展開されていますが、サプライチェーン全体のデータをもとに融資をする会社は日本では他にはまだありません。サプライチェーンファイナンスが日本のいろいろな中小企業、銀行、大企業全体にとってプラスになる仕組みだということをご説明して、私たちがリーディングプレイヤーとして日本の「サプライチェーンファイナンスの領域をアップデートしていくことに寄与できればと考えています。
ーーRootAntの立ち上げの経緯について教えてください
リンカーン:もともと中国の大学で金融を専攻しており、サプライチェーンとデジタルの接点であるFinTechがちょうど登場し始めたタイミングで興味を持ちました。調べれば調べるほどこれがまさに産業構造に影響を与える重大なトピックであると確信し、自分自身もその領域で何かをしたいと思い、とにかくまず学生時代に起業をしました。当初は純粋に技術の開発をしていたのですが、いろいろな関連する会社の聞き取りを行う中で、技術を作っているだけでは目指している世界は実現されないと気がつき、銀行のオペレーションをいかに改革していくか、それによってその企業がどれほど収益をあげられるか、その会社の事業モデルにどれほど影響を与えるのかといった社内のファシリテーションを弊社で担うようになっていきました。そしてそのニーズに合わせるように実際に現場の会社が求めている機能を弊社のプラットフォームに実装していくという中でビジネスがここまで進展していきました。
日本に来たきっかけは、もともと子供の頃から日本のことが好きだったことに加え、RootAntの事業を日本でもやってみないかとお声をかけていただいたことです。そして運よく東京都のInvest Tokyoに採択されて現在日本で何ができるかを探りはじめた段階です。日本での展開を加速していき日本の金融システムをアップデートしていきたいと考えています。
林:私はもともとVCにいてグローバルに特化したスタートアップの支援を行なっていました。今回もその繋がりでRootAntを日本に持っていきたいのだが一緒にできないかという相談をリンカーンから受け、チームにジョインしました。私自身、世界中でイノベーションが起きているものを日本に持ってくることに強い関心があって、それによって日本をもっと面白い国にしていきたいなと思っています。
ーー今後の展開について教えてください
今後は既に開発しているサプライチェーンファイナンスの仕組みを使っていただける企業を増やして行くと同時に、より幅広い業種の方に使っていただくべく金融システムの種類を増やしていきたいと考えています。私たちのミッションである、中小企業をはじめとする多くの企業がより健全に経営をすることができ、よりサステイナブルな経済を実現していきたいです。
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